2017年03月23日

●「アジア太平洋の戦略的拠点/台湾」(EJ第4485号)

 ティラーソン米国務長官のアジア歴訪──日本には2日滞在し
岸田外相や安倍首相と会談するなど時間をかけたのに対し、韓国
ではユン・ビョンセ外相との会談と外相主催の夕食会には出席し
たものの、他の閣僚とは会わずに部屋にこもっています。
 次の日、ティラーソン国務長官は中国を訪問し、王毅外相と会
談、その場で王毅外相にトランプ政権の北朝鮮政策をぶつけてい
ます。米中の安保の溝は鮮明です。ティラーソン国務長官の発言
のポイントは3つです。
─────────────────────────────
 1.歴代米政権の対北朝鮮政策を変更し、米軍が北朝鮮の核
   関連施設を先制攻撃する軍事手段を否定しない。
 2.北朝鮮の後ろ楯である中国は、食糧や燃料を輸出するな
   ど、実質的に北朝鮮をここまで支えてきている。
 3.そのため中国主導のこれまでの6者協議は「何の成果を
   出していない」ので一層の中国の貢献を求める。
─────────────────────────────
 もし、4月末までの米韓合同軍事演習中にもし北朝鮮が何かの
アクションを起こすと、米軍が動く可能性は本当にあり、緊張が
高まっています。
 トランプ大統領は、電話会談では「ひとつの中国」は認めたも
のの、本音は「そんなもの認めない」という姿勢です。台湾につ
いての米国の立場は「現状維持」です。なぜなら、台湾は米国に
とっても地政学上重要なポジションを占めているからです。
 ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、これについて次のよ
うに述べています。
─────────────────────────────
 台湾は、日本本土と沖縄以外では、第一列島線上で第二の非常
に発展した部分である。だから、台湾から立ち去ることはある意
味、中国海軍に、他の障害物にほとんど邪魔されることなく太平
洋に出て行ける門を開いてやることと同じだ。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 アジア太平洋地域における米国の軍事体制の確立には次の3つ
の条件が必要です。米国はこれらの3つの条件を現状一応クリア
しています。
─────────────────────────────
    1.第1列島線に位置する国々との同盟強化
    2.第1列島線上の島々に米軍事基地を設置
    3.第1列島線の最重要部分である台湾防衛
─────────────────────────────
 このように考えると、台湾は米国にとって「一つの中国」の原
則はあるものの、戦略地政学上、絶対に中国に帰属させてはなら
ないアジアの最重要拠点であるといえます。その重要性について
アメリカ海軍大学校教授のトシ・ヨシハラ氏は次のように述べて
います。
─────────────────────────────
 平和的な方法によってにせよ、武カによってにせよ、中国が台
湾を併合するようなことになれば、中国は第1列島線を半分に切
断できることになる。これは、本質的に、アジア太平洋地域にお
けるアメリカ軍の最前線を分断することと同じである。これは、
第二次大戦終結以来の、アジア太平洋地域におけるアメリカの軍
事態勢史上、前代未聞の事態である。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 今まで、米国は中国と台湾について3回話し合っています。ニ
クソン政権の1972年、カーター政権の1979年、そしてレ
ーガン政権の1982年です。そして、1979年4月10日に
米国の国内法として台湾関係法が制定されています。これは事実
上の米国と台湾の軍事同盟ということができます。その結果、次
の2つのことが確認されているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.中国は1つであり、台湾は別の国ではない
    2.台湾に対する中国の主権はこれを認めない
―――――――――――――――――――――――――――――
 わかったようなわからない確認事項です。つまり、台湾はきわ
めて中途半端なポジションに置かれているのです。しかし、これ
ら2つの取り決めのウラには、米国の次の強い意思が働いていま
す。つまり、米国は台湾と次の約束をしているのです。これが米
国の台湾に対する基本政策です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、中国が台湾に対して武力行使をすれば、米国は軍事力を
もって台湾を防衛する。
 1979年以前の(かつて中華民国として認識していた)台湾
とアメリカ合衆国との間のすべての条約、外交上の協定を維持す
る。             ──「台湾関係法」(根拠法)
─────────────────────────────
 その後現代まで米国と台湾との関係は、表面上は変わっていな
いものの、2000年以降のジョージ・W・ブッシュ(子)大統
領とオバマ大統領の16年間で米国と台湾の関係はかなり後退し
たといえます。
 それはこの間に中国の経済が大きく成長し、軍事的脅威も増大
したことです。そのため、「米国経済は中国との貿易に大きく依
存しており、中国と事を荒立てたくない」という政治的事情が介
在しています。それに米国の軍事費の削減によって、アジアでの
米国のプレゼンスが相対的に弱くなっていることが原因です。
 しかし、2016年に8年ぶりに台湾では、中国と距離を置く
民進党政権が誕生し、トランプ米大統領の「ひとつの中国にこだ
わらない」という発言が飛び出したことで、米中間に緊張が走っ
ています。        ──[米中戦争の可能性/055]

≪画像および関連情報≫
 ●日本版「台湾関係法」の制定を/あるネット評論
  ───────────────────────────
   日本人以上に、日本人の心を持った方(金美鈴氏)でもあ
  りますが、櫻井よしこさんとの対談は、見ごたえのあるもの
  でした。今、中国に操られた翁長沖縄知事のお蔭で、大揺れ
  の沖縄ですが、その沖縄のすぐ南が「台湾」です。
   台湾は、日本のすぐ傍にありながら、隣国の韓国や中国に
  比べて、あまり日本人は関心を持っていないように思うので
  すが、人口が約2,300万人の台湾から「東日本大震災」
  のときに、莫大な寄付金が寄せられたことで、その存在が見
  直されるようになりました。
   僕も、学校教育では台湾は中国共産党に敗れた中国国民党
  が逃げてきた場所くらいしか習わなかったように思います。
  それ以前の、日本統治時代のことや、戦後の台湾の歩みなど
  殆ど教えられた記憶もありません。ただ、現在の中華人民共
  和国が、国として認められ、日本もアメリカも韓国も中共と
  国交を樹立した際に、台湾と断交したと言うことは、中学時
  代に、うっすらと習った記憶があります。
   しかし、韓国や中国の実態を知り始めてから、僕の台湾に
  対する見方も、かなり変わってきました。そう言えば、僕が
  いつも買っているDVD−R、DVD−RWなどは台湾製が
  多いよなあ、横目で机上にある電卓を見てみたら、これも台
  湾製だ。知らないうちに、台湾のものを買っているんだなあ
  と、不思議な感じもしました。  http://amba.to/2nRlY8R
  ───────────────────────────

第1列島線.jpg
第1列島線
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。