2017年03月22日

●「中国は台湾を本当に取り戻せるか」(EJ第4484号)

 昨日のEJ第4483号で述べたように、北朝鮮という国が経
済的ないし、クーデターなどで崩壊した場合、それが韓国を巻き
込む米中戦争の引き金になる確率はかなり高いのです。したがっ
て、しかるべき後継者を立ててこの国を残すことが米中韓3ヶ国
にとって現状ではベストな選択といえるのです。
 そういう意味で、北朝鮮の正当な後継者である金正男氏が暗殺
されたのは、米中韓にとってきわめて痛いのです。そうであるか
らこそ、金正恩委員長は、金正男氏を暗殺したのです。金正恩氏
が一番不安に思っていたのは、どこかの国が金正男氏を擁立し、
北朝鮮の政権交代を仕掛けてくることであったからです。
 しかし、どうしてもわからないことがあります。それは、北朝
鮮が、核・ミサイル技術をどこから手に入れたのかです。とくに
部品の入手先がどこかです。
 中国かロシアと考える人は多いですが、実際には、国連の決議
や制裁において、核兵器転用の部品などの検査義務があるので、
技術供与や部品提供は簡単なことではないのです。これについて
ネットでは次の記述があります。
─────────────────────────────
 事情をしらない人には意外かもしれませんが、台湾からが多い
んです。どうして国連決議などで北朝鮮の制裁が行われているの
に北朝鮮は核兵器開発ができるのか・・・
 専門家が調査した結果ですが、国連決議に調和しなくていい台
湾などがその供給源になっていることは、北朝鮮問題に興味もっ
ている人であれば、だれもが知っていることなんです。そして、
北朝鮮の原子力開発に従事した脱北者の証言で、一番の武器調達
ルートや兵器転用の部品の調達先は日本だという証言が多いし、
90%は日本製という証言をする人もいます。
     ──「ヤフー!知恵袋」   http://bit.ly/2nxxcDa
─────────────────────────────
 台湾とは意外ですが、中国は台湾を中国の一部(台湾省)とみ
なしていて、台湾は国連に入れないのです。現在台湾は、23の
国と国交がありますが、ほとんどの人が世界地図でその位置を指
させないような小国ばかりです。それらの国でさえ、中国は経済
援助などと条件に台湾との国交を断絶させているのです。
 ピーター・ナヴァロ氏は、米中戦争の引き金を引く筆頭として
台湾を指摘し、次の問題を読者に出しています。
─────────────────────────────
【問題】台湾をめぐって米中戦争が起きるとしたら、その際に最
    も重要な役割を果たすと思われるファクターを選べ。

 「1」ナショナリズム
 「2」戦略地政学
 「3」イデオロギー
 「4」道徳観
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この問いに対する4つの選択肢において、「4」の道徳観は外
すことができると思います。正解は1つに絞ることは困難であり
「2」「3」「4」のすべてが正解です。
 「2」のナショナリズムについては、台湾は紛れもなく中国固
有の領土であり、中国にとって台湾を取り戻すのは中国の強い意
思のあらわれです。台湾は、1885年に清朝が新設した台湾省
に属した地域のことであり、具体的には台湾本島、付属島嶼およ
び澎湖諸島から構成されています。
 1895年には日清戦争の結果、下関条約によって日本に割譲
され、1945年まで日本統治時代が続いたのです。つまり、台
湾は中国にとっては日本に奪われた島であり、屈辱の100年の
間でまだ取り戻すことができていない領土なのです。したがって
台湾を祖国に再び受け入れることは、中国人のプライドとナショ
ナリズム的情熱がかかっているのです。
 これに加えて、中国にとって台湾は、地政学的にも、イデオロ
ギー的にも絶対に取り戻さなければならない理由があるのです。
それが「2」と「3」です。
 台湾は、第1列島線のほぼ中央に位置しており、戦略的に重要
なポジションにあるのです。台湾の戦略地政学的な意味について
人民解放軍の彭光謙少将は次のように述べています。
─────────────────────────────
 仮に台湾が本土から切り離されるようなことになれば、中国は
永久に、西太平洋の第一列島線以西に閉じ込められてしまう。そ
うなれば、中国復活のために戦略上欠くべからざる空間が失われ
てしまう。    ────ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 第2次世界大戦において、フィリピンを防衛していたダグラス
・マッカーサーが屈辱的な撤退をした原因は、台湾から次々と発
進し間断なく攻撃してくる日本軍の飛行中隊だったのです。その
とき、マッカーサーは「台湾は日本の不沈空母である」といった
といわれています。
 「3」のイデオロギーとは何でしょうか。
 台湾は、中国から見れば「離反した省」ですが、民主主義国家
として成功しています。中国とはイデオロギーが違うのです。ピ
ーター・ナヴァロ氏は、台湾の民主主義は1949年に中華民国
総統の蒋介石と国民党支持者らが台湾入りし、その数十年の統治
のときにもたらされたものではないと強調しています。そのとき
は毛沢東率いる大陸中国と変わるものではなかったのです。
 しかし、台湾はその後民主主義国家として生まれ変わったので
す。1996年の初めての民主的な総統選挙が行われた結果、活
発な民主主義が正しく機能しているのです。中国的なものから離
れてはじめて国力が増したのです。まさにイデオロギーの差であ
るといえます。      ──[米中戦争の可能性/054]

≪画像および関連情報≫
 ●台湾は中国とどう付き合っていくのか/2016.1.30
  ───────────────────────────
   8年にわたる雌伏の時を経ての圧勝だった。1月16日に
  実施された台湾の総統選挙において、最大野党・民主進歩党
  (民進党)の蔡英文主席が、対立する与党・中国国民党(国
  民党)の朱立倫主席に、300万票の大差をつけて勝利。8
  年ぶりの政権交代へとこぎ着けた。
   同日に実施された定数113の立法院(国会)選挙でも、
  民進党が68議席と過半数を獲得した一方、国民党は35議
  席とほぼ半減。民進党が立法院で過半数を制するのは初めて
  のことだ。蔡氏は、就任する5月20日に、安定政権として
  出発できる。
   今回の選挙ではっきりしたのは、「“一つの中国”には反
  対だという民意」(民進党関係者)だ。中国との関係を強化
  し、経済浮揚につなげようとした現在の馬英九政権に、台湾
  人民は「ノー」を突き付けた。とはいえ、蔡氏が馬総統を超
  えるほどの有効な経済政策を打ち出せるかは、現段階では、
  はっきりしない。
   台湾にとって中国は最大の貿易相手国。特に輸出依存度は
  30%程度にも達している。実は、民進党の陳水扁政権時代
  から、対中輸出は増加傾向にあった。そして、馬政権時代の
  2010年、中国とのFTA(自由貿易協定)となる「EC
  FA」(両岸経済協力枠組み協定)を締結、中台はさらに結
  び付きを強めた。         http://bit.ly/2mdFmk9
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蔡英文台湾総統.jpg
蔡英文台湾総統
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
{安倍首相が日本維新の会の2トップ、大阪府の松井府知事と橋下前知事に対して激怒。2人が森友問題に対して「国の圧力があった」と口を揃えているからである。} と考えた方がいますが、間違っています。つまり、「国の圧力があった」の「国」とは、安倍晋三首相を指しているのではなく、森友学園と交渉した枝廣直幹近畿財務局長を指しているからです。 なお、「安倍首相が激怒した」っていうのも、ウソです。 ちなみに、こういうフェイク・ニュースを流している人々は、安倍政権に悪意敵意をもつ「親中派の左翼人」ばかりです。
Posted by ウソを垂れ流している親中派左翼人 at 2017年03月22日 02:23
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