2017年03月21日

●「問題児/北朝鮮にどう対応するか」(EJ第4483号)

 ピーター・ナヴァロ氏は、北朝鮮についての問題も読者に出し
ています。
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【問題】次の想定される事態のうち、米中戦争の引き金になる可
    能性が最も高いものを選べ。

 「1」飢餓、国内の権力争い、社会不安によって北朝鮮が内部
    崩壊する
 「2」韓国領の島を砲撃する、船舶を沈没させるなど、北朝鮮
    が韓国に挑発行為をおこなう
 「3」北朝鮮の核開発を阻止するため、アメリカが北朝鮮の核
    関連施設を先制攻撃する
 「4」アメリカとアジアの同盟諸国が北朝鮮のミサイル攻撃を
    想定した最先端の弾道ミサイル防衛網を配備する
 「5」北朝鮮軍が韓国に大規模な侵攻を仕掛ける
 「6」北朝鮮が、日本、韓国、アメリカに核ミサイル攻撃を仕
    掛ける 
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
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 この問題の正解はどれだろうか。
 常識的に考えれば、「1」の内部崩壊か、「2」の挑発の可能
性が高いと考えられます。しかし、内部崩壊については、中国の
支援がある限り、起こり得ないでしょう。中国は北朝鮮にエネル
ギーの90%、食料の45%を供給しているからです。文字通り
中国は北朝鮮の命綱を握っているのです。
 しかし、中国は北朝鮮がどんなに無法に振る舞っても、米国に
どれほど圧力をかけられても、北朝鮮への支援をやめないと思わ
れます。その理由について、ピーター・ナヴァロ氏は次のように
述べています。
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 なぜ中国は、中国自身を戦争の、それもおそらくは核戦争の渦
に巻き込む恐れのある政権にテコ入れし続けるのだろうか。同じ
疑問を抱いている中国の指導者も少なくとも数人はいるのだが、
その一方で中国が明らかに恐れているのは、北朝鮮が崩壊した場
合、あるいは、西ドイツが事実上東ドイツを吸収したのと同じよ
うな形で北朝鮮が韓国と和解した場合でも、統一された朝鮮半島
は中国ではなく、民主的な米韓同盟の側につくだろうということ
である。       ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、北朝鮮が経済的に崩壊し、その影響が北朝鮮全土に及ぶ
場合、またはクーデターなど軍事的に現政権が倒された場合、大
変なことが起きるのです。まず、何百万人にも及ぶ難民が発生し
韓国や中国に怒涛のように難民が流れ込むはずです。船で日本に
押し寄せる難民も少なくないと思われます。
 クーデター軍が北朝鮮全土を制圧した場合は別として、制圧し
切れずに北朝鮮軍が大混乱を起こし、無法状態に陥った場合、米
韓合同軍は直ちに北朝鮮に攻め入り、核兵器を確保しようとする
はずです。問題は、その事態を中国は座視しないと思われること
です。北朝鮮での主導権を取るため、中国も人民解放軍を北朝鮮
に派遣するはずです。この場合、米韓合同軍、北朝鮮軍、中国人
民解放軍が北朝鮮で衝突する可能性は十分あります。それが米中
戦争に発展することはあり得ることです。
 「2」の北朝鮮による韓国への挑発は、これまでもあったこと
であり、当然あると考えられます。しかし、5月9日の大統領選
で、親北反日の革新系政権ができると、挑発はなくなると思われ
ます。こういう政権の樹立は、中国にとっても都合のよいことで
あることは確かです。
 「3」の米軍による北朝鮮の核関連施設の先制攻撃は、EJ第
4482号(3月10日付)で述べているように十分あり得るこ
とです。とくに、米韓合同軍事演習が終了する4月末までに北朝
鮮が何かコトを起こせばそのリスクは確実に高まります。
 「5」の北朝鮮軍による韓国への大規模な侵攻と、「7」の日
米韓の軍事基地への核ミサイル攻撃については、まず起こり得な
いと考えられます。北朝鮮の核兵器は、どこかの国を攻撃するた
めのものではなく、他国が攻め入るのを抑止するためのものであ
るからです。
 もっとも起こり得ると思われるのが「4」の米国とアジア同盟
国による北朝鮮のミサイル攻撃を想定した最先端の弾道ミサイル
防衛網の配備です。既に韓国では「THAAD」(最新鋭ミサイ
ル防衛システム)の配備が始められています。これに中国は猛反
対をしていますが、韓国の新政権が果して反対できるかどうか疑
問です。ピーター・ナヴァロ氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 アメリカ側から見れば、「全面核戦争も辞さない」という度重
なる北朝鮮の脅しに対して、アメリカが従来よりも遥かに強力な
ミサイル防衛システムをアジアの戦域に配備するのは至極道理に
かなったことに思われる。だが中国は、そのようなミサイル防衛
網は北朝鮮だけではなく中国自身にも向けられていると主張し、
こうしたミサイル防衛網に強く反対してきた。
 中国側の主張のレトリックをはぎ取ってみれば、これはまさに
エスカレーションを招く要因としてすでに述べた「安全保障のジ
レンマ」の一バリエーションである。中国が恐れているのは、ア
メリカがアジアに最新鋭ミサイル防衛システムを配備すれば、中
国の「報復攻撃」能力をも封じることができるようになるだろう
ということである。この懸念は実際かなり筋がとおっている。そ
うなれば、中国はアメリカの先制攻撃を心配しなければならなく
なるからである。   ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/053]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮崩壊三つのシナリオ『北朝鮮の核心』
  ───────────────────────────
   北朝鮮には市民運動も組織立った抵抗も存在しない。そん
  な国に訪れる体制崩壊とは、いったいどんな形をとるのだろ
  う。重大な危機が生じて安定が終焉を迎える。そうしたシナ
  リオとして、以下の3つをあげることができる。
   1.指導層の内部対立をきっかけとするもの。
   2.民衆の側による蜂起。
   3.中国で発生した何らかの社会変動が北朝鮮に拡散する
     というシナリオ
   もちろん、このすべてが組み合わさることも考えられるし
  予想外の展開になることもありうる。──『北朝鮮の核心―
  そのロジックと国際社会の課題』より。
   この中で最も都合が良いのと、都合が悪いのはどのシナリ
  オでしょうか?もっとも都合が良いのは、1と2の複合版で
  しょう。ルーマニアのチャウシェスク政権が崩壊したときと
  同じことをすればいいだけです。
   北で、「金正恩は倒れるぞ!怖くないぞ!!」というデモ
  が平壌や各都市で勃発するようにするために、連座制・強制
  収容所・秘密警察を外部の圧力で無力化し、人民を弾圧でき
  ないようにするのが大事です。平和的な体制変更には、「市
  民運動も組織だった抵抗もない」、という前提を崩す必要が
  あります。            http://bit.ly/2n5Mmyr
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金正恩委員長と軍幹部.jpg
金正恩委員長と軍幹部
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
5月9日、「親中・親北・反米・反日」の文在演が韓国大統領に当選します。 そして、文在演は、10月に期限がくる中韓スワップを延長するため、米国とのTHAAD配備の約束を反故にします。 在韓米軍は、「計画」通り、朝鮮半島から完全撤退します。 すると、文在演は、北朝鮮との対等併合を北朝鮮側に提案し、比較的に平和裏に朝鮮統一国家が樹立されます。 この朝鮮統一国家は、中国と軍事同盟を締結します。 こういう流れになるでしょう。 この後、既に勝敗の決まっている「東アジア戦争」が始まり、中国と朝鮮は、壊滅し、他国と多民族の奴隷となります。 従って、「ああだ、こうだ」と分析して複雑に考える研究レベルでは、国際情勢の趨勢と歴史トレンドを正しく予測できません。
Posted by 朝鮮半島は、今後数年間は多国間戦争にならない at 2017年03月21日 09:52
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