2017年03月06日

●「3分の1だが中国の軍事費は巨額」(EJ第4473号)

 トランプ大統領は、米国時間の2月28日夜、上下両院合同会
議で、「アメリカ精神の復活」と題する演説を行い、強いアメリ
カを再建するため、史上最大規模の国防支出増額を求めると次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 米国を安全に保つためには、戦争を防ぎ、また絶対に必要な場
合には戦い、勝利するための手段を米兵に提供しなくてはならな
い。米軍を再建し、国防費の強制削減措置を撤廃し、史上最大規
模の国防支出増額を求める予算を議会に送る。
                http://s.nikkei.com/2m6HicJ
─────────────────────────────
 オバマ前政権では、国防費は強制削減措置によって、削減の方
向であっただけに、市場最大規模の540億ドル(約6兆円)の
拡大は、日本にとっては心強いものがあります。
 また、演説では米国での雇用拡大協力企業のひとつとして日本
のソフトバンクの名前を出したほか、名前は出していないものの
日本への言及もあったのです。これはどう考えても日本のことで
あると思います。
─────────────────────────────
 もっとも緊密なある同盟国は数十年前、かの大戦で戦った相手
だった。こうした歴史はわれわれに、より良い世界を作り出せる
のだという可能性への信念を抱かせる。 ──トランプ米大統領
                http://s.nikkei.com/2m6HicJ
─────────────────────────────
 軍事の専門家の予測では、2030年までには米中戦争は十分
起こり得るとしており、米国がいま軍事費を削減させるのはリス
クがあります。この軍事費に関して、ピーター・ナヴァロ氏は読
者に次の問題を出しています。
─────────────────────────────
【問題】軍事費が多いほうを選べ。

  「1」中国
  「2」アメリカ
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
 この答えは「2」です。添付ファイルに主要国の軍事費のグラ
フを付けていますが、米国の国防予算は約6000億ドル、これ
に対して中国の軍事費は約2000億ドルで、米国の3分の1に
過ぎないのです。数字的には圧倒的な差です。
 トランプ政権のこの軍事費の拡大について、前嶋和弘上智大学
教授は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 米国の国防予算の拡大は、トランプ氏が選挙の時から主張して
いた世界での米軍優位を保つ「強い米国」を実現する内容だ。従
来に比べて多く予算が国防に回ることで、軍事産業の雇用の拡大
にもつながる。トランプ氏は「米国第一」と雇用拡大につながる
強いメッセージを狙っている。(中略)
 米国の国防費が増加することで、東アジアの安全保障に貢献す
る面はある。一方で、ロシアや中国を刺激することになり、軍事
費の拡大につながる可能性もある。
         ──2017年3月1日付、日本経済新聞社
─────────────────────────────
 トランプ米大統領は、強いアメリカを取り戻すために、既に中
国の3倍以上になっている軍事費を、さらに540億ドル(約6
兆円)も増やすというのです。それは増やし過ぎではないかとい
う反対意見もあります。
 しかし、ピーター・ナヴァロ氏は、トランプ大統領の考え方は
間違っていないとして、次の2つのことを指摘しています。
─────────────────────────────
 1.米軍が世界規模で戦力投射しなければならないのに対し
   中国軍はアジア地域での戦力投射に絞っている。
 2.中国における軍事費1ドルは、米国における軍事費1ド
   ルよりも、はるかに多くの価値を生み出すこと。
          ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
 そもそも軍事費の総額比較は意味がないのです。兵器について
考えると、米国の納税者は、空母10隻の費用を負担しなければ
なりませんが、アジア地域のパトロールに派遣されている空母は
そのうちの2隻に過ぎないのです。
 これに対して中国は、空母3隻を製造中であり、それを主とし
てアジア太平洋地域での戦力の強化のために運用しようと考えて
います。この場合、質の戦力差を無視すれば、アジア地域に関し
ては、中国軍が米軍を圧倒することになります。
 米国の1ドルと中国の1ドルの差ですが、まず、中国軍兵士の
人件費は、米軍兵士のそれよりはるかに安い。それに加えて、兵
器の製造コストも中国の方がはるかに安いのです。ナヴァロ氏は
それは単に労働力が安価だからという理由だけでなく、次のよう
な不愉快な事情もあるとしています。
─────────────────────────────
 中国は、軍事研究や新兵器システム開発にほとんど費用をかけ
る必要がないのである。その重要な理由の一つは、最新兵器の設
計をペンタゴンや民間防衛企業から盗み出す中国人ハッカーのス
キルの高さである。もう一つの理由としては、中国が外国から購
入したテクノロジーの多くを、不法にリバースエンジニアリング
(製品を分解したり動作を観察することによって技術を模倣する
こと)していることが上げられる。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/043]

≪画像および関連情報≫
 ●増え続ける中国の軍事費/児玉克哉氏
  ───────────────────────────
   中国の全国人民代表大会で発表された2016年の「国防
  予算」(軍事予算)は、前年実績比7・6%増の9543億
  元(約16・2兆円)で、過去最高を更新したことが報道さ
  れています。伸び率はやや低くなり、1桁といっても、まだ
  7.6%の伸びです。絶対額の比較としては、日本の防衛関
  係費(16年度防衛予算案)の約3・2倍に達し、世界でも
  有数の軍事大国になっています。
   日本の軍事力が、中国よりも明らかに優れていた時代は終
  わっています。今では、質、量ともに、日本を軍事力では、
  優っているといえます。兵器の質や隊員の質などでは、微妙
  なところがあるにしても、やはりここまで中国が軍事費を注
  ぎ込むと、中国の軍事力の優位はあります。
   ただ、ここで考えなければならないことは、軍事力だけが
  国力ではないということです。経済力や国際社会における地
  位なども総合的に考えなければなりません。経済力において
  も、中国は高度成長を遂げ、GDPの世界2位となり、日本
  を抜いています。その経済力を持っての軍事力強化の側面が
  ありました。では軍事力強化は経済発展にプラスなのでしょ
  うか。この議論はかなりクラシックなもので、長年、延々と
  されてきたものです。軍事費を高めると確かに軍需産業は育
  ちますし、明らかに潤う分野があります。戦後はむしろ軍事
  費は経済発展にプラスというイメージが先行し、軍事費を抑
  えても経済成長は可能か、という議論があったくらいです。
                   http://bit.ly/2m7zs2F
  ───────────────────────────

主要国の軍事費/2014〜2015.jpg
主要国の軍事費/2014〜2015
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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