2017年02月28日

●「潜水艦の隠密性に欠陥を持つ中国」(EJ第4469号)

 「強化」「分散」「再編」の3戦略は、日本と米国が中国に対
して「戦わずして勝つ」戦略であるといえます。このうち、「分
散」に関して、アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラ教授は次の
ように述べています。
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 基地や艦船といった高価値資産を日本列島全体に再配置すれば
中国にとってはターゲットを絞り込むことが遥かに困難になるだ
ろう。たとえば、およそ1000キロにわたって伸びている琉球
諸島には、アメリカやその同盟諸国の空軍及び海軍が使用するこ
とのできる港湾施設や飛行場が数多く存在する。琉球諸島の南西
の島々にまで軍を分散して配置することができれば、中国にとっ
てターゲットを絞り込むことは非常に困難になるだろう。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
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 このトシ・ヨシハラ教授は、中国の海洋戦略を分析した『太平
洋の赤い星』の自著で有名です。この本は、米海軍のトップであ
る米海軍作戦部長が認定した指定図書の一つにもなっています。
ヨシハラ教授は米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院で博士
号を取得したアジア太平洋地域の安全保障問題の専門家です。
 しかし、この基地分散化戦略の実現は、容易なことで実現はし
ないと思います。基地受け入れ国の日本では、それこそ草の根レ
ベルの反対に遭うことが確実です。しかし、自衛以外の戦争を放
棄した日本の場合、そうでもしいない限り、中国の侵略を許して
しまうことになります。
 多くの日本人は「中国が日本に攻めてくるはずがない」と考え
ています。しかし、中国の「A2/AD」戦略で、米国がアジア
から撤退するようなことになれば、日本の安全保障は風前の灯に
なってしまいます。そうなれば、中国は尖閣諸島だけでなく、沖
縄へも攻勢をかけてくることは確実です。中国はその目標を20
30年に置いています。そうなる前に日本人は、もっと国の安全
保障について敏感になる必要があります。
 「再編」、すなわち「軍備再編」戦略の中核となるのは潜水艦
戦力です。その中国の潜水艦について中国関連の記事を日本語で
報道する2016年5月17日付の「レコード・チャイナ」にお
いて、環境時報が「2030年、中国の潜水艦保有数は米国の倍
になるが、一方で大きな問題も存在を抱えている」と前置きして
次のように述べています。
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 中国の潜水艦に関して、米戦略国際問題研究所(CSIS)は
「中国の094型原子力潜水艦はソナーから逃れることはできな
い。ロシアが1970年代に造った667BDR型戦略原潜(デ
ルタ型原子力潜水艦)を上回る騒音があるためすぐに見つかる」
と問題を指摘し、南シナ海北部の海南島にある潜水艦基地が手薄
で、米国とその同盟国にとって攻略は難しくないと述べた。米国
の専門家は中国の潜水艦部隊の弱点を指摘したうえで、中国がこ
うした弱点を克服するために基地建設や兵力増強を行っていると
語った。(翻訳・編集/内山)      http://bit.ly/1U4uyJA
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 潜水艦戦力は数ではないのです。潜水艦の生命線はその「隠密
性」にありますが、それが日米海軍に対して著しく劣っており、
潜航地点が容易に捕捉されてしまうのです。上記の報道は、中国
海軍の本音であるといえます。
 何しろ通常動力型潜水艦か、原子力潜水艦かまで正確に判別さ
れてしまうので、中国は日米の探知方法を探るために、数年前に
総参謀部から多数のスパイを派遣したのですが、ことごとく失敗
に終わっています。
 日本は原子力潜水艦を持っていません。しかし、日本の「そう
りゅう」型潜水艦は、原子力潜水艦を上回っており、バッテリー
なので、まったく音がしないのです。その性能は世界一であり、
日本の海上自衛隊は質的には米国に次いで世界2位の海軍といわ
れています。したがって、日米が非対称兵器でアジアの海を守っ
たら、それこそ鉄壁の守りになるのです。空母でも戦艦でも「音
のしない潜水艦」には勝てないのです。
 日本はその「そうりゅう」型潜水艦の技術をオーストラリアに
輸出しようとしたことがあります。しかし、フランスが割り込ん
できて、この話はなくなったのです。フランスは原子力潜水艦を
バッテリー型に改造しようとしたのですが、うまくいかず、日本
にアドバイスを求めてくる始末です。
 オーストラリアへの輸出の失敗に海上自衛隊の幹部はホッとし
たそうです。オーストラリアに技術を輸出すれば、確実に技術は
中国に渡ってしまうからです。
 この「そうりゅう」型潜水艦について、元公安調査庁調査第2
部長の菅沼光弘氏は、自著で次のように述べています。
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 中国の原子力潜水艦もそうですが、原子炉から必然的に泡が出
るものだから、この抱の音を消すことができない。これはしよう
がないのです。原子力でエンジンを動かすわけで、原子力発電と
いうのは、今度の原発事故以来の報道でもよく知られるようにな
りましたが、いったん動かしたらすぐには止められない。という
ことは中国の原潜は常に泡を海中に出しているということです。
だから、ソナーで見つけられやすいのです。原子力潜水艦にはそ
ういう欠点がある。「そうりゆう」は、バッテリーだから、まっ
たく音がしない。潜水艦というのは秘匿性が最大の武器です。ど
こにいるかわからないというのが武器で、どこにいるかわかった
のでは、開戦と同時にバーンとやられて終わりです。
 ──菅沼光弘著『アメノカが今も恐れる軍事大国ニッポン/緊
         迫する核ミサイル防衛の真実』/成甲書房刊
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/039]

≪画像および関連情報≫
 ●中国潜水艦の隠密性悪く「最新鋭艦」も鉄くず/勝又壽良氏
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   「張り子の虎」という言葉がある。見かけ倒しで、実際に
  は強くも偉くもないものの喩えだ。中国海軍の誇る最新鋭潜
  水艦が、生命線である「隠密性」で著しく劣っており、日米
  海軍に簡単に潜行地点を補足される、というのだ。この問題
  は、4月20日のブログでも取り上げたがその後、中国海軍
  当局がそれを認める発言をしていることが確認できた。
   改めて、基礎技術の未熟な中国の軍拡がいかに無謀である
  か、財源の無駄遣いであるかを論じたい。強がりを止めて周
  辺国と協調したほうが、どれだけ中国国民の福祉向上になる
  のか。それを真面目に考えるべきである。このまま、中国は
  「軍拡路線」を続けて、保守派と人民解放軍が結託した「産
  軍複合体」だけが潤っても、国民は疲弊するだけなのだ。
   中国海軍当局者の「悩める声」を先ず紹介したい。『大紀
  元』(5月17日付け)は次のように伝えている。近年、海
  軍力の増強に取り組んできた中国は深い悩みがあるようだ。
  中国海軍は現在、約200隻の近代的潜水艦を有し、原子力
  空母の建設も予定している。しかし、中国人民解放軍総参謀
  部の情報筋によると、潜水艦の命である隠密性の低さに軍幹
  部は悩まされているという。同情報筋が『大紀元』に伝えた
  ことによると、軍上層部は潜水艦が内海を離れると、すぐに
  日米の対潜センサーに捕捉されてしまうため、公海に進入で
  きないことに頭を抱えているという。
                  http://amba.to/2lPnEBL
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日本が誇る「そうりゅう」型潜水艦.jpg
日本が誇る「そうりゅう」型潜水艦
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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