2017年02月10日

●「ニカラグア運河は果してできるか」(EJ第4457号)

 昨日のEJで取り上げた中国海軍戦略の方程式を再現します。
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  中国海軍の戦略=
  革命の完成+海の長城+海洋管轄権の擁護+局部戦争+
  「海上交通路の保護」+非戦闘軍事行動
                 http://bit.ly/2kAVwlH
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 このなかで「海上交通路の保護」については、昨日のEJでは
取り上げていないので、今回考えます。海上交通路については、
その多くが米軍の支配下にあるので、中国としては沿岸に複数の
寄港地(真珠)を確保し、それをつなぐ「真珠の首飾り」戦略を
実施していることは、既に説明しています。これが「海上交通路
の保護」になっているわけです。
 中国は、世界中の重要な海峡や運河にも抜かりなく手を打って
います。そのひとつである「ニカラグア運河」について、東京財
団研究員で、元駐中国防衛駐在官の小原凡司氏の興味ある論文を
中心に紹介することにします。
 2016年6月26日のことです。その日はパナマ運河の拡張
工事完成式典が実施され、各国首脳が式典に集まったのです。し
かし、パナマ政府から招待されたにもかかわらず、中国の習近平
国家主席は姿を見せなかったのです。なぜ、出席しなかったので
しょうか。
 実はパナマは中国と国交がないのですが、台湾とは国交を結ん
でいます。したがって、この式典には台湾の蔡英文総統が出席し
ているのです。中国にいわせれば、そのような席に中国の国家主
席を招くのは失礼であるというわけです。中国は「一つの中国」
を認めない国とは国交を結ばない方針だからです。
 ニカラグア運河について述べる前に、バナマ運河の前提知識と
して、パナマ運河の歴史について「世界史の窓」から、次にメモ
してておきます。
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 大西洋と太平洋を結ぶ、パナマ地峡に設けられた運河。19世
紀のフランス外交官で、スエズ運河を完成させたフランス人のレ
セップスが建設に着手したが失敗。アメリカがパナマを強引に独
立させ、運河地帯の支配権を獲得し、1904年に着手し、19
14年に完成させた。アメリカは1977年の新パナマ条約で返
還を約束したが、89年にパナマ侵攻を実行、運河の支配維持を
図った。しかし、国際世論の反発が強く、99年に約束通り返還
された。     ──「世界史の窓」 http://bit.ly/2laXvL8
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 さて、パナマ運河は拡張工事が終わりましたが、ニカラグア運
河は着手されたものの、まだ完成していません。ニカラグア政府
と中国系企業HKNDが運河建設で合意し、2014年に着工し
2019年完成だったのですが、予定通りいっていないのです。
 一応中国系企業との契約になっていますが、運河の建設には巨
額の資金がかかり、一企業が担える金額ではないので、バックに
中国政府がいることは確実です。それにしても米国の喉元にあた
るニカラグアに、中国政府が関与して運河を建設することに米国
はよく黙っていたものです。
 中国は意識してそういう行動をとる国なのです。トランプ大統
領とオーストラリアのターンブル首相は、1月28日に電話で会
談しましたが、移民の問題をめぐって意見が衝突し、トランプ氏
に電話をガチャ切りされるということが起きています。
 そうすると、中国の王毅外相はこのタイミングをとらえてオー
ストラリアを急遽訪問し、全面的な戦略パートナーシップを充実
させると宣言し、3月の李克強首相のオーストラリア訪問を決め
ています。きわめて計算高い国であるといえます。
 ニカラグアもかつて運河建設をめぐって米国にさんざん翻弄さ
れ、結局パナマに運河を作られてしまった歴史があります。中国
はそのスキを衝いて、ニカラグア運河の建設を持ちかけたものと
思われます。
 米国は、運河建設に対してパナマとニカラグアを天秤にかけ、
両国に対して相当強引なことをやってきています。パナマ運河を
作るとき、当時パナマが属していたコロンビア政府が反対したの
で、パナマを強引にコロンビアから独立させています。
 また、ニカラグアで起きた暴動に便乗して海兵隊を派遣し、当
時の大統領を辞任させています。運河建設の権利を潜在敵国のド
イツに売ろうとしたという疑いをかけたのです。しかし、ニカラ
グア運河には、モモトンボ火山の噴火の危険が指摘されたので、
米国は1914年にパナマ運河を開通させています。
 ニカラグアの地理的ポジションについて知る必要があります。
ニカラグアは、メキシコの南、中米コスタリカの北に位置し、米
国の影響下にあります。そのコスタリカの南にパナマ運河がある
のです。パナマは、パナマ運河のおかげで経済が発展し、街には
高いビルが林立しています。コスタリカとしても、運河を建設す
れば経済も活性化するので、建設したいところですが、何しろ経
費が500億ドル(6兆円)もかかるので、大国の援助なくして
は建設不可能です。500億ドルはニカラグアのGDPの5倍近
い巨額な数字だからです。
 ニカラグア運河をどうしても建設したいニカラグアのオルテガ
政権は、2013年6月に香港系企業HKNDに新運河の計画・
建設・運営を認めることを決定し、その翌年から工事に着手して
います。HKNDは、北京に本社を置く信威通信産業集団の会長
の王靖氏が2012年に香港に設立した企業です。明らかにニカ
ラグア運河を建設することを目的とする企業と思われます。
 運河建設の条件は、運河完成後50年間、その後さらに50年
間更新可能となっており、運河の経営権はHKNDにあります。
つまり、ニカラグア運河は完全に中国の管理下に置かれることを
意味します。しかし、運河建設は簡単ではなかったのです。
             ──[米中戦争の可能性/027]

≪画像および関連情報≫
 ●中国主導「ニカラグア運河」/宮崎正広
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   中国の「無謀」というより「発狂的な」海外投資の典型は
  対ベネズエラに行われた。反米政治家だったチャベス大統領
  の中国べた褒め路線にのっかって、中国は450億ドルをベ
  ネズエラ一国だけに投資した。担保はベネズエラが生産する
  石油であり、昨今は一日60万バーレルを輸入する。基本的
  ルールとは、幕末維新の日本が英米独露から押しつけられた
  不平等条約の中味を思い出すと良い。つまりカネを貸す見返
  りが関税だったように中国は猛烈に石油を確保して、その前
  払いを利息先取りを含めて行っているのである。
   将来のディスカウントを貸し付け利息に算定して計算して
  いるわけだから、原油代金はおもいのほか安くなっている筈
  である。パナマ運河をこえて、ベネズエラ石油は中国へ運ば
  れる。後述するようにニカラグア運河とパナマ運河拡張プロ
  ジェクトは、このベネズエラへののめり込み路線と直結する
  のである。ともかくベネズエラは歳入の過半が石油輸出(輸
  出の96%)によるものである。ベネズエラ原油価格は、1
  バーレル99ドル(13年)から、2015年四月現在、な
  んと1バーレル=38ドルに墜落したため、2015年は、
  2013年の三分の一の歳入に落ち込むことは必定である。
  ベネズエラはOPEC(石油輸出国機構)のメンバーでもあ
  り、勝手な行動も許されずチャベルを引き継いだニコラス・
  マドゥロ大統領は悲鳴を上げて中国に助けを求める。しかし
  中国はベネズエラ鉱区を買収し、投資しているが、石油市場
  の悪化により、これ以上の投資が出来ない。
                   http://bit.ly/2ktIYf5
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オルテガ大統領と王靖HKND会長.jpg
オルテガ大統領と王靖HKND会長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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