2017年02月08日

●「尖閣奪取は中国の既定路線である」(EJ第4455号)

 2月3日のことです。米国トランプ政権の閣僚であるマティス
国防長官が来日し、安倍首相や稲田防衛相との会談が行われてい
ます。会談で日本の最大の懸念事項である尖閣諸島の安保適用の
有無について安倍首相からマティス国防長官に確認が行われ、マ
ティス長官から次の発言を引き出しています。
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 尖閣諸島は日本の施政の下にある領域であり、安保条約5条
 の適用範囲である。米国は、尖閣に対する日本の施政を損な
 おうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
                 ──マティス米国防長官
─────────────────────────────
 1月11日、米上院外交委員会の指名承認公聴会において、国
務長官候補のレックス・ティラーソン氏に対して、共和党のルビ
オ上院議員から尖閣諸島について問われ、ティラーソン氏は次の
ように答えています。
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 R:中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)に侵攻した場合、米国
   はどのように対応するか。
 T:米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約を適用す
   る。米国は条約に従って対応する。これまでも日本防衛
   を確約してきた。   R=ルビオ T=ティラーソン
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 まだ、国務長官になる前の発言ですが、ティラーソン氏はもし
中国が尖閣諸島に侵攻した場合、日米安保条約を適用すると明言
しています。既にオバマ前大統領も尖閣諸島が安保条約の適用範
囲内であると発言しており、関係者全員が「日米安保適用内」を
明言したことになります。
 しかし、肝心のトランプ大統領はどうでしょうか。トランプ氏
は、選挙中の2016年3月のことですが、ワシントンポスト紙
とのインタビューで次のように発言しています。
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 ポスト記者:中国が尖閣諸島を攻撃した場合、安保条約を適
       用するか。
 トランプ氏:私がどうするか、話したくない。
─────────────────────────────
 通常であれば、現職の国防長官が約束したことを大統領が翻す
ことはあり得ないことです。閣内不一致になるからです。しかし
懸念されることは、トランプ氏が選挙中に発言した米軍の日本駐
留経費負担増額の話です。マティス国防長官との会談ではその話
は一切出ていませんが、今後も要求がないとは限らないのです。
こうした懸念について、2017年2月4日付の朝日新聞は、次
のように書いています。
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 マティス氏から尖閣防衛に関与するとの言質を引き出したにも
かかわらず、安倍政権内の懸念が、完全に払拭されたわけではな
い。トランプ政権は大統領と閣僚の発言が食い違う、「閣内不一
致」が常態化している。マティス氏とトランプ氏がどこまで事前
にすりあわせたか定かではない。予測不能が枕詞のトランプ氏が
ちゃぶ台返しをしない保証はない。(中略)
 日本側にはトランプ氏の「ディール(取引)外交」への警戒心
も根強い。尖閣への安保条約適用など安全保障分野での対日政策
継続をうたう一方、駐留経費や防衛費増額、さらには通商分野で
の取引を迫ってくる可能性は否定できない。
          ──2017年2月4日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 米国対中国──この2大大国は、このままではいずれ激突する
運命にあります。中国は非常に長いスパンで米国に追いつき、米
国を凌駕することを考えています。それには計画があり、中国は
その計画に基づき、ことを進めてきています。その計画によると
尖閣諸島を中国のものにすることは、既定路線なのです。
 その計画を描いたのは劉華清という軍人です。劉華清は中国国
外ではほとんど知られていませんが、ケ小平の右腕として、中国
海軍を率い、「中国海軍の父」といわれている人物です。劉華清
は海軍司令のとき、「中国の経済・科学技術が発展すれば、海軍
力はさらに大きなものになる」と中国海軍の近代化を主張し、次
のような計画を打ち出しています。
─────────────────────────────
 2010年までに第1列島線内部の制海権を握って、東シナ海
南シナ海を中国の内海とし、2020年までに第2列島線の西太
平洋の制海権を確保、2040年までには太平洋、インド洋にお
いて、米海軍と制海権を競い合う。そして、2050年までには
全世界規模の海上権力を握る。     http://bit.ly/2l31Y5O
─────────────────────────────
 誠に身勝手な計画であり、現在のところ、何一つ達成されてい
ませんが、中国がこの計画にしたがって海軍力を強化してきてい
るのは間違いのない事実です。ピーター・ナヴァロ氏は、劉華清
について、次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 劉華清の名は、ベトナムでは、1974年に中国が西沙諸島を
奪取した際にべトナム兵の虐殺を命じた司令官として知られてい
る。中国の反体制派が劉華清と聞いてまず思い浮かべるのも、彼
が天安門事件(1989年)の虐殺に関わった部隊の司令官だっ
たことである。こうした暗いイメージもあるものの、最もよく知
られているのは「中国海軍の父」としての劉華晴である。自分の
目の黒いうちに中国が自前の空母を持てなかったら、「目を見開
いたまま死ぬ」と言ったというエピソードが有名である。
           ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
─────────────────────────────
             ──[米中戦争の可能性/025]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ大統領の誕生と中国海軍の行動の活発化
  ───────────────────────────
   2016年12月25日、中国海軍の訓練空母「遼寧」が
  宮古海峡を抜けて、西太平洋に入った。中国海軍のこの行動
  は、明らかにトランプ氏をけん制したものだ。中国は、自ら
  の懸念が現実のものになるのを恐れているのである。
   空母「遼寧」は、3隻の駆逐艦及び3隻のフリゲート、1
  隻の補給艦を伴っていた。「遼寧」は、訓練空母であって実
  戦に用いる能力がないにもかかわらず、空母戦闘群の編成を
  とって行動したのだ。ファイティング・ポーズを見せている
  ということである。その相手は、もちろん米海軍だ。
   現在、米海軍では、一般的に空母打撃群という呼称が用い
  られているが、中国メディアでは空母戦闘群と呼称されるこ
  とが多い。米海軍でも、2006年までは空母戦闘群という
  呼称を用いていた。呼称を変えたということは、作戦概念を
  変えたということである。米海軍の空母の運用構想は、すで
  に2000年代半ばには変わっていたということでもある。
  一方の中国は未だ、空母戦闘群を米海軍との海上戦闘の主役
  と考えているようだ。中国海軍は、現在でも、台湾東方海域
  が米海軍との主戦場になると考えている。中国は、海軍の行
  動範囲の拡大は戦略的縦深性を確保するためだとする。中国
  が太平洋側に戦略的縦深性を確保したいと考えるのは、沿岸
  部に集中する主要都市を攻撃から守るためであるが、敵が太
  平洋から攻めてくると考えているということでもある。太平
  洋から中国を攻撃する国、それは米国以外にはない。米国が
  中国に対して軍事攻撃を行う可能性を懸念しているのだ。
                   http://bit.ly/2htgdj0
  ───────────────────────────

中国海軍の父/劉華清上将.jpg
中国海軍の父/劉華清上将
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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