2017年02月03日

●「中国のマラッカジレンマとは何か」(EJ第4452号)

 習近平主席が悩んでいるとされる「マラッカ・ジレンマ」とは
何でしょうか。ピーター・ナヴァロ氏の本に、これに関係のある
次の問題が出ています。
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【問題】中国がアメリカやその同盟諸国による石油禁輸措置を恐
れる必要は本当にあるか?
  「1」ある
  「2」ない    ──ピーター・ナヴァロ著/赤根洋子訳
        『米中もし戦わば/戦争の地政学』/文藝春秋
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 この問題の正解は「1」の「ある」なのです。「マラッカ・ジ
レンマ」はこれに密接に関係するのです。中国が覇権を求めて世
界に乗り出そうとするとき、一番恐れるのは米国によるこの石油
禁輸措置(経済制裁)なのです。
 それは、米国や関連産油国からの輸出を禁止するだけでなく、
石油や関連物資を自国に輸送してくるシーレーンを海上封鎖する
ことを意味しています。世界でこれができる国は、米国しかない
のです。
 歴史的にみると、この米国による石油禁輸措置を一番最初に受
けたのは実は日本──当時の大日本帝国です。1941年のこと
です。石油、ガソリン及びその他の重要な資源の対日禁輸措置は
石油需要の80%を米国に依存していた日本にとっては大打撃で
これが日本によるあの真珠湾攻撃につながるのです。ちなみに米
国は、このとき、日本の船舶に対するパナマ運河の閉鎖及び、米
国における日本の資産の凍結も実施しています。
 実は、米国による石油禁輸措置を次に受けたのは、中華人民共
和国、現在の中国です。1950年の朝鮮戦争のときです。朝鮮
戦争について歴史をメモしておきます。
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 1950年6月、南北に分断された朝鮮半島で勃発した戦争。
北朝鮮の南下から始まり、アメリカが南を支援して盛り返し、後
半は中国軍が北を支援して参戦、53年に北緯38度線で休戦協
定が成立した。冷戦下のアジアにおける実際の戦争となり、日本
にも大きな影響を与えた。          ──世界史の窓
                   http://bit.ly/2jFuYLA
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 この中国軍の朝鮮戦争への参戦に激怒したハリー・トルーマン
米大統領は、中国に対して経済制裁を行っています。この制裁は
実に20年にわたって続き、ニクソン大統領の突然の中国訪問に
よってやっと解除されたのです。トランプ大統領が口にして問題
化している「一つの中国」も、このとき米国は中国に対して約束
しています。中国の要求をほとんど受け入れているのです。
 このようにいうと、ニクソン大統領は、いかにも大局的立場に
立って中国と和解したように見えますが、実は違うのです。この
とき、ニクソン政権は公約のベトナム戦争を終わらせることがう
まく行かず、苦境に陥っていたのです。この問題を解決するには
どうしても中国の協力が必要だったのです。
 そのシナリオを描いたのは、あのキッシンジャー博士です。彼
は水面下で中国と交渉を進め、劇的な米中国交正常化を成し遂げ
るのです。キッシンジャー博士としては、今後は米ソの二極対立
の時代は終わり、ソ連・欧州・日本・中国・米国の5大勢力が相
互に均衡を保つことによって、世界の安定を図るという構想をニ
クソン大統領に提案し、その線で交渉は成立したのです。
 実は、中国は現在でも米国から兵器技術輸出禁止措置を課され
ています。それだけに、中国が何らかの軍事行動を起こすと、米
国が石油の禁輸措置を含む厳しい経済制裁をかけてくることはわ
かっているので、それを恐れているのです。
 それは、米国の石油禁輸措置がどれほど、中国について厳しく
恐ろしいものかについて知ると、わかってきます。ピーター・ナ
ヴァロ氏は、これについて詳しく書いているので、以下、それを
参考にして述べることにします。
 中国が輸入している石油の大半は、ペルシャ湾から運び出され
ています。このペルシャ湾とホルムズ海峡は、米国の第5艦隊が
警備を担っています。第5艦隊の司令部はマナマ(バーレーンの
首都)にあり、遥か南のケニア沖まで出向いてパトロールを行っ
ています。まさに世界の警察官です。
 そして米第6艦隊は、地中海を管轄しており、スエズ運河の北
端から太平洋への玄関口のジブラルタル海峡までをパトロールし
ています。地中海を横断するこの航路は、中国にとってヨーロッ
パ、英国、スカンジナビア向けの製品を輸出するために重要であ
り、原料や農産物を輸入するためにも大切な通商路です。
 インド洋に出ると、その中央部にディエゴガルシア島がありま
すが、ここは米軍の最も重要な戦略拠点のひとつです。長距離爆
撃機の発着場であり、この基地からB─2ステルス爆撃機が出撃
すれば、中国の主要都市をすべて攻撃できるのです。
 そして、アジアに入るためにマラッカ海峡を通ることになりま
す。この海峡も完全に米軍とシンガポールの管理下にあります。
したがって、何かコトが起きると、いつでも海峡を封鎖できるの
です。海峡は狭いので封鎖しやすいのです。
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 マレー半島とインドネシアのスマトラ島の間に位置するマラッ
カ海峡は、インド洋と南シナ海を結ぶ全長800キロの海峡であ
る。幅は非常に狭く、水深は比較的浅い。アジアへのこの狭くて
危険な入り口を、年間6万隻以上もの船舶が中国向け(及び日本
韓国向け)の石油だけでなく、世界貿易で流通するおよそ3分の
1の物質を積んで通過している。通航量はパナマ運河の3倍近く
スエズ運河の2倍以上にのぼる。
           ──ピーター・ナヴァロ著の前掲書より
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             ──[米中戦争の可能性/022]

≪画像および関連情報≫
 ●アジアで中国をもっとも敵視している国は?
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   中国メディアの網易はこのほど、アジアの国々のなかで中
  国をもっとも敵視しているのは「日本ではない」と主張する
  記事を掲載。その国は「シンガポール」だと記事は説明して
  いるが、何を以ってシンガポールが日本以上に中国を敵視す
  る国だと主張しているのだろうか。
   記事が注目しているのは「マラッカ海峡」だ。シンガポー
  ルの発展はまさにこの天然の海峡がもたらしたものであると
  指摘、積み替え港としてのシンガポールの役割がこの国に発
  展をもたらした。
   しかし、もし中国がマレー半島のクラ地峡に「クラ運河」
  を建設し、各国の船がシンガポールを経由せずにクラ運河を
  航路にとり、上海を積み替え港として利用するなら状況は変
  わるだろう。中国は莫大な利益を得ることができる一方で、
  シンガポールを利用する船は「80%減少する」と記事は指
  摘。シンガポールにとってはまさに致命的な打撃になること
  は容易に想像ができる。
  また記事は「中国の石油備蓄は7日分に過ぎない」と指摘、
  もしシンガポールがマラッカ海峡を封鎖し、中国の原油輸入
  を阻止した場合、中国にとって致命的な打撃になる。いざと
  いう時、この措置を「米国が支持、また指示するだろう」と
  指摘する。            http://bit.ly/1sYa0Nj
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マラッカ海峡の重要性.jpg
マラッカ海峡の重要性
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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