2017年02月01日

●「人民解放軍内の不満の3つの原因」(EJ第4450号)

 習近平国家主席の軍制改革に対して、現在陸軍を中心として軍
内に不満が渦巻いています。その不満の原因は、大別すると、次
の3つになります。
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        1.陸軍軽視と大量リストラ
        2.側近の要職への大量起用
        3.国家主席に実戦経験なし
─────────────────────────────
 上記「1」と「2」については、すべて述べていますが、とく
に「2」については、現在、人民解放軍内部で強い不満が高まっ
ています。習主席が、軍制改革と同時に、自分の腹心を相当露骨
に主要ポストに次々と就任させているからです。
 ひとつ例を上げることにします。2015年7月に海軍上将に
昇進した苗華(びょうか)という軍人がいます。彼はもともと陸
軍畑の軍人ですが、いきなり海軍上将に昇進したのです。海軍上
将とは、海軍上級大将の意味であり、大将より上のランクになり
ます。ちなみにその上のランクは、元帥、大元帥です。
 しかし、陸軍畑で出世を重ねてきた軍人が、海軍に移籍して上
将になる──こういうことは通常は起こり得ない人事ですが、典
型的な習近平人事の一環なのです。
 人民解放軍に第31集団軍というのがあります。中国人民解放
軍第31集団軍の前身は1947年に編成され、国共内戦でも活
躍しています。49年には、第3野戦軍所属の第31集団軍に組
織が改編され、福建省のアモイ市に本拠を置くようになったので
す。そのため「アモイ軍」と呼ばれています。
 習近平主席は、福建省や浙江省勤務だったことがあり、そのと
きにアモイ軍で人脈を築いていたのです。苗華氏の簡単な経歴を
上げておきます。
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 ≪苗華氏の軍歴≫
 1969年12月:人民解放軍第31集団入隊(15歳)
 1999年08月:第31集団軍政治部主任→少将
 2010年12月:蘭州軍区政治部主任
 2012年07月:蘭州軍区副政治部員兼規律検査委員会
          書記→中将
 2014年06月:蘭州軍区政治委員
 2014年12月:海軍政治委員
 2015年07月:海軍上将
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 苗華氏の2012年7月までの昇進は順当です。蘭州軍区副政
治部員に就任し、陸軍の中将に昇進しています。それに兼務とし
て規律検査委員会書記になり、軍部のなかでの権力もきわめて高
くなっています。
 しかし、2012年11月に習近平氏が総書記、そして、20
13年3月に国家主席になると、苗華氏は、2014年12月に
急遽海軍の政治委員になるのです。そして、2015年7月に陸
軍中将から、将官の最高位である海軍上将に昇進します。これは
きわめて異例のことです。明らかに軍制改革に合わせて、習近平
主席が主導した人事です。
 こういう人事をやられると、生え抜きの海軍将校からすると、
きわめて不満であるし、モラールが下がります。まして、政治委
員ですから、人事権も握っているのです。こういう人事が苗華氏
のケースだけではなく、他でも幅広く行われているのです。軍部
内に不満がくすぶるのは当然のことです。これが冒頭に上げた軍
部の不満の原因「2」の内容です。
 それでは不満の原因の「3」とは何でしょうか。
 ケ小平最高指導者に続く江沢民、胡錦濤、習近平の中国の政権
において、真の意味で軍部を掌握していたのはケ小平だけである
といってよいと思います。それ以後の3政権は、本当の意味で軍
部を掌握していたとはいえないのです。それは、これら3政権の
トップは、戦争で実戦の指揮を執り、銃を持って、死線を潜り抜
けていないからです。
 しかし、ケ小平は違うのです。その違いについて、福島香織氏
は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 振り返れば、ケ小平は文化大革命後、文革で総崩れになってい
た解放軍の立て直しを行いつつ軍権を掌握するために、軍制改革
と大リストラ、そして戦争を行った。1979年の中越戦争は、
ケ小平が軍権を掌握するプロセスのうえで非常に大きな意味を持
つ。国外的にはこの戦争は実践で鍛えられたベトナム兵によって
返り討ちにされ、解放軍の事実上の負けであったが、国内では勝
利宣言を行い、ケ小平はさらなる軍の近代化改革を進める。そし
て1984年の中越国境紛争で、その雪辱を晴らした。ケ小平は
この2回のベトナムとの戦争を通じて、軍の近代化と軍権の掌握
を確かなものにしたのだった。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 これは、どこの軍隊でもそうでしょうが、とくに中国では、戦
争での実戦の指揮を執ったことがなく、国防大学で軍事戦略や戦
術を極めたこともない文民政治家は、表面的にはともかく、基本
的には尊敬されないのです。
 要するに「実戦の指揮を執る」──これしかないのです。しか
し、米国が相手ではまず勝ち目はない。そうなると、格好の相手
は日本です。しかも、間違っても米国が出てこないかたちで、尖
閣諸島周辺海域で日本と局地的な軍事衝突を起こし、中国国民に
明確に勝ちと認められる勝利を収める──このことに現在の習近
平政権は狙いを定めています。だからこそ、中国は尖閣諸島周辺
の海と空に何回も繰り返し、制圧を目的として、本気でアタック
してきているのです。   ──[米中戦争の可能性/020]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平氏 対日強硬論火消し役として側近起用/2016年
  ───────────────────────────
   中国軍の動向に詳しい香港の日中関係筋によると、今年は
  中国の尖閣諸島への攻勢が本格化するという。すでに、海上
  保安庁は昨年末、機関砲4基を備えた改造フリゲート艦が日
  本領海に侵入したことを確認した。尖閣諸島をめぐって砲弾
  が飛び交う事態も懸念される。ジャーナリスト・相馬勝氏が
  指摘する。
   日本の排他的経済水域(EEZ)内で日中両国間の取り決
  めに反した中国海洋調査船による調査活動が、昨年すでに、
  22回あり、一昨年の2倍を超えたことが挙げられる。20
  11年には8回、2012年は3回、2013年7回、20
  14年は9回と推移し、昨年は初めて2桁台に乗り、前年比
  で2倍を超えた。その活動区域の多くは東シナ海となってい
  る。これらは科学調査とみなされているが、その一方で軍事
  的な動機が背景にあるとみられる動きも出ている。それが中
  国のIT企業大手「騰訊(テンセント)」が作成した中国人
  民解放軍による尖閣諸島奪還作戦の3Dアニメ動画だ。これ
  はユーチューブで公開され、昨年9月の時点で100万回も
  再生されている。この動画は「3D模擬奇島戦役」とのタイ
  トルで、「20××年、某軍事同盟が国際法を無視して海洋
  での紛争を引き起こし、綿密に計画された奇襲作戦によって
  いくつかの人民解放軍基地が攻撃された」場面から始まる。
   中国軍はこの報復として、沖縄の米軍基地とみられる軍事
  基地に中国の弾道ミサイルを撃ち込み、中国軍戦闘機が攻撃
  を加えたあと、中国軍の揚陸部隊が上陸を開始し、敵軍隊を
  壊滅し、敵の軍事基地に五星紅旗が翻るという単純なストー
  リーだ。一見たわいもない内容だが、実はこのような中国軍
  による短期集中攻撃作戦は米軍などの戦略家らの間でまこと
  しやかに想定されており、単なる夢物語でない。
                   http://bit.ly/2ju9sJG
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習国家主席/苗華海軍上将.jpg
習国家主席/苗華海軍上将
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
福島香織と相馬勝は産経出身。ポストセブンは高須院長が連載w 記事の内容は典型的な中国脅威論。
まともな分析記事が書きたいのなら、もっと視野を広くして、バランスよく情報収集することをお勧めします。
というか、妄想による中国脅威論ほど国益を害するものはないので、はっきり言って迷惑です。
中途半端なことするなと言いたい。
Posted by べく at 2017年02月02日 09:03
> べく
今回の連載記事は、「妄想による中国脅威論」ではない。むしろ、中国に買収されたように思われる親中派のベタ記事が多すぎるので、そっちの方が日本の国益を害する。

さて、あなたは、伊藤忠商事の方? こういう親中反日商社は、中国内で反日暴動が起きても目をつむる愚かさが際立っているから、今まで中国市場に設備投資などの肩入れした、その無能な判断力のツケを支払って下さい。 親中反日商社が倒産することを希望します。

Posted by 伊藤忠商事の愚行糾弾者 at 2017年02月03日 08:05
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