護衛艦に対してレーダーを照射するというとんでもない事件が起
きたのを覚えていますか。2013年2月5日付のAFPニュー
スは、その事件を次のように伝えています。
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【2月6日AFP】小野寺五典防衛相は5日夜、中国海軍のフ
リゲート艦が1月30日に東シナ海で、海上自衛隊の護衛艦に射
撃用の火器管制レーダーを照射したと発表した。
日本と中国の艦艇間でレーダー照射が明らかになったのは初め
て。両国関係は尖閣諸島の領有権問題で緊張が高まっており、武
力衝突が起きる恐れもあると懸念する声も聞かれている。
小野寺防衛相によると、1月19日にも自衛隊ヘリコプターが
似たレーダー照射を受けた。関係者によれば、19日と30日の
レーダー照射はともに数分間続いた。小野寺防衛相は「大変、特
異な事例」で「一歩間違えれば大変危険な状態に発展していた」
と述べ、中国にこのような行為の自制を求める意向を表明した。
http://bit.ly/2jH4ASz
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どこかの国の船舶、まして軍艦に対してレーダーを照射すれば
それは砲撃目的以外はあり得ないので、砲撃戦になることは確実
です。それがきっかけで戦争になっても不思議はないほど重大な
ことです。米国の軍艦に、もしレーダーを照射したら、たちまち
ミサイルが飛んできます。
同じレーダー照射といっても戦闘機の場合と軍艦の場合は異な
るのです。戦闘機の火器管制レーダーの照射は「ロックオン」と
いいますが、必ずしも攻撃の照準を合わせるという目的ではなく
相手機がどこにいるかを把握し、そのスピードを測定するために
行うのです。スクランブルでは必ずやることです。
したがって、ロックオンという行為それ自体は、攻撃の意思表
示ではないのです。しかし、戦闘機の位置によっては攻撃のサイ
ンになります。その攻撃のポジションが「ドッグファイト」、す
なわち、バックを取ることです。つまり、航空機のバックに回っ
てロックオンをすれば、それは攻撃のための照準合わせを意味す
ることになります。
したがって、スクランブルをかけるときは、ロックオンはしま
すが、バックには回らないのです。相手機の斜めのポジションを
キープし、相手機に対し「ここは日本の領空である」と伝えるの
です。これは戦闘機の操縦技術としては非常に難しいのです。
しかし、中国の戦闘機の操縦技術のレベルは今一つで、しかも
攻撃的ですぐバックを取ろうとします。日本のスクランブル機は
そうはさせないように操縦しますが、ときにはバックをとられる
ときもあります。そういうときは、フレアを発射して離脱するこ
とになります。そんなことは毎日のように起きています。
しかし、軍艦が火器管制レーダーを照射するときは、砲撃以外
あり得ないのです。当然日本政府は中国に対して厳重抗議しまし
たが、その後は海軍のルールを知らないはねっ返りの暴走事件と
して、ことを収めてしまっています。
これに関して福島香織氏は、「中国は空でも海でも、最初から
軍事衝突を起こす気で尖閣諸島にやってきている」として、次の
ように述べています。
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習近平政権としては日本が挑発に乗って軍事行動を起こせば、
それを理由に局地的衝突に持ち込む気であったとみられる。この
ころは、米国は中国よりも日本の軍国主義化の方を警戒している
と、少なくとも中国は考えていた。続いて2013年2月に中国
が一方的に東シナ海上空にADIZ(防空識別圏)発表したのも
こうした日本挑発のシナリオに従ったものだろう。だが習近平に
大きな誤算があった。一つは、日本政府がこの手の挑発に非常に
忍耐強く、日本人は良くも悪くもこうした危機に鈍感であったと
いうこと。そして中国のこうした危険な挑発はむしろオバマ政権
にいっそうの警戒感を与える結果となった。
──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
/経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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習近平主席はこう考えているのです。彼の総書記就任前に作成
したレポートにもあるように、尖閣諸島は力づくでも手に入れる
が、重要なことがある。それは、そのさい米軍が出動しないよう
にすることだ。そのためには、アクシデントを装って、偶発的軍
事衝突を起こし、漁民を装った軍隊によって、尖閣諸島を奪うと
いうシナリオです。
そうであるとすると、空でも海でも中国軍は本気で尖閣諸島を
奪う気でやってきているということになります。しかし、海警と
いう事実上の戦艦に近い公船を何回送り込んでも、日本の海上保
安庁の巡視艇は、いつても辛抱強く待機しており、領海に侵入し
ようとすると、非戦闘的に公船と並走しながら、やがて領海外へ
中国の公船を追い出してしまうのです。
中国海軍は、そういう日本の巡視艇の高度な操船技術を肌で感
じているのです。巡視艇レベルでもこれほど高い技術を持ってい
るのですから、海上自衛隊はもっと高度であることを認めざるを
得ないのです。つまり、海でも空でも、戦争をするのではなく、
戦争をしないように対応する技術レベルが非常に高いのです。
それに加えて日本の海自の潜水艦はまったく音がせず、どこに
潜んでいるかわからない恐怖が中国側にあります。したがって、
中国としては、たとえ米軍抜きでも、尖閣諸島を攻めあぐんでい
るというのが現在の状況です。
このように、習近平政権は日本にとって非常に危険な政権であ
るといえます。米中戦争が起きる前に、尖閣諸島周辺海域におい
て、日中の軍事衝突が起きる確率はきわめて高いといえます。日
本は今まで以上にそれに備えることが必要です。
──[米中戦争の可能性/019]
≪画像および関連情報≫
●トランプが中国・習近平政権に仕掛ける、3つの最終戦争
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選挙後初となる記者会見で本領を発揮したトランプ氏の様
子が日夜報道されていますが、彼が大統領に就任することを
世界中で最も恐れているのは、意外にもあの習近平氏かもし
れません。無料メルマガ『石平のチャイナウォッチ』の著者
で、中国情勢に精通する石平さんは、トランプ氏は大統領就
任後、間髪おかず中国に「3つの戦い」を仕掛けるだろうと
予測。これに対抗し得る力は今の中国にはない、と断言して
います。
中国の習近平政権にとって2017年は文字通り、内憂外
患の年となりそうだ。まずその「外患」について論じたい。
中国政府に降りかかってくる最大の外患はやはり、今月誕生
する米トランプ政権の対中攻勢であろう。大統領選で中国の
ことを、「敵」だと明言してはばからないトランプ氏だが、
昨年11月の当選以来の一連の外交行動と人事布陣は、中国
という敵との全面対決に備えるものであろうと解釈できる。
トランプ氏は日本の安倍晋三首相と親しく会談して同盟関
係を固めた一方、ロシアのプーチン大統領や、フィリピンの
ドゥテルテ大統領とも電話会談し、オバマ政権下で悪化した
両国との関係の改善に乗り出した。見方によっては、それら
の挙動はすべて、来るべき「中国との対決」のための布石と
理解できよう。 http://bit.ly/2kE9P5B
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中国海軍軍艦による海自護衛艦へのレーダー照射