2017年01月27日

●「尖閣諸島国有化が招いた日中関係」(EJ第4447号)

 中国の支配者、習近平主席の正体を知るために、胡錦濤前主席
との違いを知る必要があります。胡錦濤政権は、中国が今後発展
していくためには、国際協調は欠かせないと考えており、そのた
めには、党の私軍である人民解放軍を党から切り離し、国軍とす
る軍制改革を行うべきであるとして、改革に着手したのです。そ
して、共産党執政の正当性の根拠を経済成長に求めたのです。
 社会主義国のトップとしては正しい判断であり、旧ソ連のゴル
バチョフ総書記のやったことに似ています。しかし、胡主席の軍
制改革は抵抗勢力の妨害によって潰されています。
 これに対して胡錦濤政権を受け継いだ習近平政権は、党が軍を
より掌握し、これによって共産党一党支配の正当性を担保しよう
としたのです。まさに中国の北朝化そのものです。世のなかの動
きに逆らう先祖返りを図ったといえます。
 ところで、習近平氏は、胡錦濤政権の国家副主席を務めていた
ときから、胡政権の進めようとする軍制改革に疑問を持ち、先祖
返りのための布石を打っていたといわれます。
 ところで、『習近平内部講話』(広度書局)という本がありま
す。この本には習近平氏の主張が詳しく書かれているのですが、
次のような習近平氏のレポートも載っています。
─────────────────────────────
          2012年9月13日付/習近平記
   「第18回党大会前の時局においての個人的見解」
─────────────────────────────
 このレポートは、当時の政権の胡錦濤、温家宝および江沢民、
李鵬、朱鎔基などに宛てたものになっています。この文書が書か
れた時点では、習近平副主席が次の総書記/国家主席になること
は確定していたのです。したがって、そのレポートの内容は、自
分が総書記になったら、このようにやりたいという政策の方向性
について書かれているのです。
 ところで、このレポートの日付に注目して欲しいのです。20
12年9月13日というのは、日本が尖閣諸島を国有化してから
2日後です。したがって、このレポートは、日本を意識した内容
にになっていることは確かです。
 それに、2012年9月1日〜14日までの2週間、習近平副
主席の動静は不明だったのです。その期間内の公式スケジュール
には、中国を訪問していたヒラリー・クリントン氏らの要人と面
接する予定があったのですが、それは突然キャンセルされていま
す。多くの中国メディアは、習近平氏は水泳中、プールサイドで
転んで背中を痛め、入院していると報道したので、暗殺説まで出
たほどです。
 実際は、習副主席はけがを理由に2週間の休暇を取り、ブレー
ン一人とこのレポートを作成していたのです。そのなかには当時
の習近平氏の日本観を窺うことができます。その部分を福島香織
氏の著書から引用します。
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 日本は長期の経済低迷に、天災人災が相次ぎ、社会存亡の危機
に見舞われている。右翼勢力の台頭、戦後の国際秩序への挑戦、
日本政府が釣魚島を「国有化」するなど、これは愚かな行動の一
例だ。われわれは、アジア太平洋と世界の平和環境、秩序維持、
国内の発展のために、かなり我慢して譲歩してきたが、最近の事
態は我慢の限界だ。釣魚島は東海の中国大陸棚の資源に関係する
だけでなく、国家の長期的戦略的経済利益に関係する。また、中
華民族の近代から現代に至る屈辱的な歴史と民族の痛みにも関係
する。(釣魚島防衛は)わが国民衆の民族の自尊、国家の尊厳、
国家領土主権の防衛という正当な要求のほか、社会の各種矛盾、
積怨、不満の爆発のはけ口も見つけることができる。・・・われ
われは一定の民意に従い、同時に正確に誘導し、日本が運んでき
たこの重い石を、自分の足の上に落とさせるようにしよう。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
─────────────────────────────
 このレポートには、胡錦濤政権は日本に対してあまりにも弱腰
であり、そのために尖閣諸島が国有化されたとの思いが強く込め
られています。実際にこの件に関して胡主席は、党長老、軍幹部
たちから、非難されていたのです。
 さらに、このレポートでは、次の具体的な7つの提案をしてい
ます。それらのほとんどは既に実行されています。
─────────────────────────────
 1.反日デモは抑制せず、もし日本製品(日貨)の打ち壊し
   が起きても恐れない。
 2.米国とも協調して、日本の軍国主義復活・拡張主義の復
   活に警戒を喚起する。
 3.両岸三地(台湾/香港/中国)で、漁民の非暴力形式で
   中国主権を主張する。
 4.国連などに働きかけ、釣魚島の主権を訴え、米国に肩入
   れさせてはならない。
 5.日本に対して強硬な外交姿勢を強め、経済貿易制裁など
   有形無形で発動する。
 6.上記に加えて、中国として軍事的に釣魚島を完全防衛す
   る準備を新調させる。
 7.国内で、釣魚島問題に関する民衆の言論を大きく解放さ
   せ、世論を形成する。
               ──福島香織著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを見ると、現在の中国の習政権が日本にとっていかにリス
クの多い政権であるかがわかります。実際に中国は、日本が少し
でもスキを見せれば、局地的軍事衝突に持ち込むハラであること
は確かです。現在でも、尖閣諸島周辺では中国の挑発は続けられ
ており、日中の火種になっているのです。
             ──[米中戦争の可能性/017]

≪画像および関連情報≫
 ●習近平は尖閣諸島を奪うつもりだった/福島香織氏
  ───────────────────────────
   2012年9月の第18回党大会前に、習近平が、米国と
  ともに戦後国際秩序の守り手として、軍国主義復活を企てる
  日本を追い詰めていく戦略を頭に描いて、こんな手紙を書い
  ていたとしたなら、やはり彼はたいそう国際社会の現実を知
  らない外交音痴の人であったかと思う。結果から言えば、中
  国は「戦後国際秩序の守り手として米国と協調する路線」か
  ら、「米国に対抗する中華秩序圏のアジアにおける樹立」に
  方針変更したし、日米の離反を狙った外交・宣伝工作は失敗
  し、米国のアジア・リバランス政策を引き起こし、尖閣諸島
  (釣魚島)で作戦を仕掛ける前に南シナ海問題で米中の対立
  を先鋭化させた。"両岸三地共同の釣魚島防衛"など、ひまわ
  り、雨傘運動で消し飛んでしまった。
   そして2014年秋からは180度方針を転換し、むしろ
  日本に積極的にアプローチしてきている。春節には日本での
  「爆買ブーム」を比較的肯定的に報道し、フェニックステレ
  ビでは6月、安倍晋三の単独インタビューを比較的好意的な
  編集で流し、「安倍は中国に好意的」といったシグナルを発
  信した。最近では、安倍の密使として訪中した谷内正太郎に
  は、首相の李克強が35分の時間を割いて会談すると言う厚
  遇ぶりを見せた。        http://nkbp.jp/2jzKc5R
  ───────────────────────────

冷たい二国関係/日本と中国.jpg
冷たい二国関係/日本と中国


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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