2017年01月26日

●「陸軍の兵力削減30万人への不満」(EJ第4446号)

 中国の軍制改革の4つの骨子を再現します。「1」と「2」に
ついては説明済みです。
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   1.軍区制を廃止して、戦区制(戦略区制)にする[済]
   2.軍令と軍政を分離し、軍の司法機構を一新する[済]
 → 3.30万人の兵力を削減し、200万兵力にする
 → 4.軍の「民間向け商業活動」を全面的に廃止する
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 「3」について考えます。
 習近平国家主席は、軍制改革によって兵力を30万人削減する
と発表しています。これは、2015年9月3日に中国で行われ
た抗日戦勝利70周年記念式典での習近平国家主席の演説のなか
で出てきたのです。演説のなかのその発言部分を抜き出して、以
下に示します。
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 平和のために、中国は終始平和発展の道を堅持していきます。
中華民族は従来、平和を愛しています。どこまで発展を遂げても
中国は永遠に覇を唱えず、永遠に拡張を行わず、自分自身がかつ
て経験した悲惨な遭遇を、ほかの民族に押しつけるようなことは
決してしません。中国人民は世界各国人民と友好的につきあい、
中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利の成果を固とし
て守り、人類のために新たに、より大きな貢献をしていくよう努
めていきます。
 中国人民解放軍は、人民からなる軍隊で、全軍の将士は全身全
霊人民に奉仕するという根本的な主旨を心に刻み、祖国の安全と
人民の平和な生活を守るという神聖なる職責を忠実に全うし、世
界平和を守るという神聖なる使命を忠実に遂行しなければなりま
せん。ここで中国は、軍兵士30万人を削減することをここに宣
言します。              http://bit.ly/1KKEbNr
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 この演説で習主席は誠に殊勝なことをいっています。「中国は
覇権を唱えず、拡張を行わない」といい、他の国を攻めて領土を
拡張するようなことは永遠に行わないと断言しています。しかし
その一方で、南シナ海諸島や尖閣諸島のように、かつて歴史上、
中国の領土であった島々は中国のものであり、それは中国の譲れ
ない核心的利益であって、中国のものにするのは当然であるとい
う奇妙な論理を展開するのです。
 そのうえで習主席は、兵力を30万人減らすといっているので
す。一見すると、軍縮であると思うはずです。しかし、これは軍
縮ではなく、軍のスリム化であり、強軍化なのです。それと同時
に習主席にとって邪魔になる人材を切って、風通しをよくすると
いう裏目的もあるのです。この30万人のリストラについて福島
香織氏は、次のように述べています。
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 (軍制改革によって)兵力30万人削減という大リストラを開
始している。これは軍縮ではない。軍のスリム化による強軍化で
あると同時に、軍の徐才厚、郭伯雄(ともに習近平の政敵として
粛清された)の残党の粛清発表と受け止められている。この30
万人の内訳の多くが「非戦閣員」といわれている。汚職の温床化
している装備部の圧縮が真っ先に挙げられている。また、30万
人中17万人は、陸軍の江沢民系、徐才厚系、郭伯雄系ら将校ク
ラスのようだ。この軍のスリム化は2017年までに完了させる
という。    ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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 習近平主席は、この軍制改革と並行して着々とあることを実行
しています。それは軍内の要職に自分の息のかかった者を配置し
ようとしているのです。南京軍区出身、とくに第31集団軍出身
者が多いのです。習主席が、福建、浙江省勤務であったときの人
脈が中心です。
 具体的にいうと、趙克石(後勤保障部長)、李暁峰(政治委員
会書記)、王安竜(中央軍事委弁公庁副主任)、苗華(海軍政治
委員)、蔡英廷(解放軍軍事科学学院)といった習主席の腹心が
続々と出世しています。彼らのなかには実力不足の者も多く、軍
内に大きな不満が渦巻いています。まさしく、「お友達人事」そ
のものです。
 「4」について考えます。
 軍の「民間向け商業活動」とは何でしょうか。
 実はこれこそ人民解放軍を腐敗させる原因になったのです。ケ
小平は、経済成長を重視し、国防費を大幅にカットしたことがあ
ります。その国防費の不足を補うためにケ小平は、中国軍の独自
ビジネスを認めたのです。これについて、ハーバード大学アジア
センター・シニアフェローの渡部悦和氏は、自著で次のように述
べています。
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 腐敗した中国軍の改革は困難を極める。軍所有の土地や施設の
賃貸、新聞の発行、ホテルやレストランの経営、軍の病院を民間
人にも開放することによる診療収入の確保などのビジネスを展開
してきた。このビジネスが軍腐敗の原因であり、習主席は今回の
軍改革の一環として軍のビジネスの大半を禁止した。今後、習近
平政権と陸軍を筆頭とする軍の抵抗勢力との関係がどう推移する
かが重要な指標となる。いずれにせよ、中国軍の改革を通じた権
力基盤の強化にはまだまだ時間がかかると予想する。
        ──渡部悦和著「米中戦争/そのとき日本は」
                  講談社現代新書2400
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 それでも人民解放軍の腐敗はなくならないと思われます。腐敗
のある軍隊は絶対に強軍化できないものです。それでも習主席は
軍制改革を早期に完成させるといっています。
             ──[米中戦争の可能性/016]

≪画像および関連情報≫
 ●「戦争ができ、戦争に勝つ」軍隊の誕生
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  2016年2月8日から13日まで、中国は春節(旧正月)
  の大型連休だった。習近平主席にとって、中国共産党のトッ
  プに立って迎える4回目の春節だった。北朝鮮がこのところ
  「大暴れ」しているので、習近平政権も大揺れの正月だった
  かと言えば、そうではない。
   思うに習近平主席にとって今年が最も安らかに迎えた春節
  ではなかったか。それは習近平主席が最も重要視する200
  万人民解放軍を、「自分の軍隊」に改造することに成功した
  からである。
   春節を一週間後に控えた2月1日午前10時、新調した人
  民服を着た習近平主席が、満足げな表情を浮かべて、「八一
  大楼」の大ホールの壇上に立った。「八一大楼」は、8月1
  日の人民解放軍創建記念日の名を冠した国防部の施設で、長
  安街沿いの軍事博物館東側に位置する。建築面積9万255
  平方メートル、地上12階、地下2階建てで、1997年に
  人民解放軍を統轄する中央軍事委員会のオフィスとして建て
  られた。習近平主席は、1979年、26歳の時に、元人民
  解放軍幹部だった父・習仲勲の命令で、中央軍事委員会のオ
  フィスで働くことからキャリアをスタートさせた。以後、中
  央軍事委員会主席に収まった現在に至るまで、そのキャリア
  の大半で、軍務を兼務してきた。  http://bit.ly/2kdjZug
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30万人の兵力削減の演説.jpg
30万人の兵力削減の演説
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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