2017年01月20日

●「習近平主席には真の友達はいるか」(EJ第4442号)

 1月17日、中国の習近平国家主席は、世界経済フォーラム年
次総会(ダボス会議)に初めて出席し、基調講演を行い、次のよ
うに貿易の保護主義の批判を展開しています。
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 世界はテロや難民問題などに直面し、不確実性が増している。
しかし、金融危機も含め問題のすべてを経済のグローバル化がも
たらしたわけではない。われわれは明確に保護主義に反対する。
貿易戦争をすれば結局は双方が負けることになる。中国はグロー
バル経済の受益国であり、かつ貢献国である。
         ──2017年1月16日付、日本経済新聞
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 中国に保護貿易を批判されたくありませんが、この習主席の発
言は、明らかに、本日、アメリカ大統領に就任するトランプ氏が
主張する保護主義的な政策を意識したものであることは明らかで
す。それをいうために習主席はダボス会議に出席したのです。
 習近平主席が進める「反腐敗」キャンペーンは、情け容赦ない
もので、その対象は自身の親派とされる人物にも及んでいます。
それも必ずしも腐敗の排除をするだけではなく、今後自身の政敵
になると思われる人物についても、キャンペーンの名の下に排除
することが進められています。
 それは、恩人であろうと、年長者であろうと、盟友であろうと
相手を選ばないのです。習主席はひたすら権力の掌握を目指し、
強権を手にしようとしているように見えます。
 習主席がいかに非情であるかを示す軍の大物の排除劇がありま
す。それは、中国人民解放軍のナンバー2で、制服組のトップま
で上り詰めた当時71歳の退役上将で、軍長老の徐才厚の摘発事
件です。
 徐才厚は遼寧省の出身であり、江沢民元主席の抜擢によって出
世したいわば江沢民派の代理人です。軍内人事に絶大な影響力を
持っており、瀋陽軍区の出身者を優先して出世させ、遼寧閥を築
くなど、将校の地位を事実上売買するというようなこともしてい
たのです。いわば、軍内腐敗の元締め的存在であり、摘発されて
当然ではあったのですが、2012年11月の党大会で、すべて
の役職から退いており、末期がんを患っていたので、まさか摘発
されるとは本人はもとより誰も予想していなかったのです。
 しかし、習主席は国家主席になると、2014年6月、中央軍
事委規律委員会は、北京の301軍病院に入院していた徐才厚を
連行し、党籍を剥奪し、逮捕したのです。まさに「ハエもトラも
叩け!」を文字通り実行したことになります。これによって、徐
才厚は2015年3月15日、起訴を待たず、がん悪化による多
臓器不全で死亡しています。
 だが、もともと習主席と徐才厚は親密であり、彼は習主席の後
ろ盾的存在でもあったのです。
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 徐才厚と習近平はけっして赤の他人ではない。徐才厚は習近平
に対し、同じ上海閥の期待のエースとして、江沢民の頼みを受け
て将来的に軍内の後見人役となる約束をしていた。解放軍に所属
する歌姫、習近平夫人の彭麗媛に対しては父娘といってもいいよ
うな深い親交があった。習家のホームパーティでは、徐才厚はた
びたび主賓格で招かれ、習近平も心を込めて接待する姿がしばし
ば見かけられていた。つまり地位が高いだけでなく、恩人であり
身内といってもいいような人間関係の老い先短い重病の老人を病
床からひったてて訊問し、刑事罰を科す、というのは従来の共産
党的秩序や中国的長幼の序からは考えられなかった。
        ──福島香織著/『赤い帝国・中国が滅びる日
  /経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発』/KKベストセラーズ
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 このように味方まで敵に回してしまう習近平政権ですが、真の
味方はいないのでしょうか。
 その習近平氏の唯一の盟友といわれているのが、王岐山党中央
規律検査委員会書記です。いわゆる習政権の反腐敗キャンペーン
はここが担っており、習政権への権力集中に大きく貢献している
のです。王岐山氏は1948年生まれで、習近平氏よりも5歳年
上で、習近平氏と同じ太子党の出身です。
 王岐山氏は胡錦濤政権時代には、商務、金融、市場管理、観光
などを担当し、大きな成果を上げているのです。とくに、リーマ
ンショックのさい、王岐山氏は大規模財政出動を主導し、中国経
済を劇的に回復させるなどの手腕を発揮しています。
 しかし、2016年になってから、習近平主席と王岐山書記の
関係は微妙なものになりつつあるのです。それは、王岐山書記が
反腐敗キャンペーンによって政敵を倒し、権力が習近平主席に集
中すればするほど、習主席は友達の王岐山書記と距離を取ろうと
するからです。
 「習近平に真の友達はいるのか」──このテーマについてのメ
ディアや知識人は次のように結論しています。
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  1.習近平は権力さえあれば、友達は不要と考えている
  2.習近平には部下はいるが、信頼できる友達はいない
  3.習近平と王岐山の関係は、皇帝と臣下のそれである
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 確かに、習政権スタート当初は、習近平氏と王岐山氏は、お互
いに信頼できる真のパートナー同士だったのです。もともと王岐
山氏は高い能力の持ち主であり、反腐敗キャンペーンは大きな成
果を上げたのです。
 しかし、反腐敗キャンペーンの実行によって政敵がいなくなり
習政権に権力が集中するにつれ、習主席は皇帝化していったので
す。そして現在では、習近平氏と王岐山氏の関係は、まさに皇帝
と臣下の関係と同じになっています。つまり、習近平氏には臣下
はいるが、友達は一人もいなくなってしまったのです。
             ──[米中戦争の可能性/012]

≪画像および関連情報≫
 ●中国有識者層に募る習近平主席への不信感
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   2016年4月下旬に北京と上海に出張した。目的は定例
  の中国経済情勢に関する現地での情報収集である。習近平政
  権が掲げる「新常態」の方針の下、的確なマクロ経済政策運
  営と積極的な構造改革の組み合わせによって、経済の安定が
  保持されており、安心して見ていられる状況である。
   この点については、今回の出張中に面談した政府内および
  民間の経済専門家の全員がほぼ一致した見方をしていた。し
  かし、その面談相手と話しているうちに、「経済は安定して
  いるが、最近政治情勢が不透明になってきていて心配だ」と
  の懸念を耳にすることが少なからずあった。
   これまで習近平政権が行ってきた政策について、政治面で
  は反腐敗キャンペーンの断行が国民的支持を得ている。経済
  面でも雇用と物価の安定を確保し続け、過剰設備の削減や過
  剰不動産在庫の処理への取り組みも一定の成果を上げるなど
  こちらも高い評価を得てきた。最近は政治リスクの高い軍組
  織の抜本的改革まで実現し、着々と政策の結果を積み上げて
  きている。こうした政策面の大きな成果もあって、多くの国
  民から「習おじさん」(中国語では「習大大」シーターター
  と発音)と親しみを込めた愛称で呼ばれるなど、政権基盤も
  安定度を増していた。ただし、有識者の間では学者やメディ
  アに対してイデオロギーや政府批判に関わる活動の取り締ま
  りがますます強化されてきていることに対する疑念がしばし
  ば指摘されていた。        http://bit.ly/2jvYNCq
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ダボス会議での習主席の演説.jpg
ダボス会議での習主席の演説
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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