2017年01月12日

●「C形包囲とは何か/空母の必要性」(EJ第4436号)

 昨日のEJでご紹介した中国でよく読まれている2つの本を再
現します。「1」については、既に昨日述べています。
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       1. 劉明福著  『中国夢』
     ⇒ 2. 戴 旭著 『C形包囲』
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 「2」の『C形包囲』について述べます。
 この本は、中国の現役空軍大佐であり、著名な軍事学者でもあ
る戴旭(ダイシェイ)氏によって2010年1月に発刊され、中
国本土で30万部のベストセラーになっている本です。
 ところで、「C形包囲」とは何でしょうか。
 「C形包囲」というのは、中国が包囲しているのではなく、中
国が包囲されているという意味です。それは海上だけでなく、陸
上でも包囲網が敷かれているといっています。書籍自体が入手で
きないので、この本を取り上げている沖縄対策本部公式サイトか
ら引用します。記述が分かりやすいからです。
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 ≪海上包囲網≫
 中国海軍は、次のような海上包囲網で閉じ込められています。
 ・東シナ海で合同軍事演習を行う日米同盟
 ・台湾の中にいる独立派
 ・海洋基本法案を可決し、中国の領土を自国の領土に編入し、
  6隻の潜水艦を発注しているフィリピン
 ・米軍と軍事連携を固めることを決めたベトナム
 ・14隻の潜水艦の建造と購入を決めたインドネシア
 ・27隻のヘリコプター搭載の巡視艇建造を決めたマレーシア
 ・総計780億ドルをかけて軍拡をすすめるオーストラリア
 ・2隻の航空母艦の建造を始めたインド
 ≪陸上包囲網≫
 ・アメリカのアフガニスタンを狙う本当の理由は、中央アジア
  からのエネルギー資源の道を裁ち切り、中国の国力を弱らせ
  るためである。
 そして、モンゴルも日米政府寄りなので、中国は東北のロシア
との国境をのぞいては、全てアメリカに包囲されていると述べて
います。自国の軍拡を棚にあげて、中国が攻撃をしているわけで
はなく、アメリカが緊張を高めているのだと言い放っています。
 つまり、「中国の周りは米国の手先となった国に包囲され、危
機的な状態にある。だから中国は戦争を避けられない」との理論
を細かく展開している書籍です。
 これから、中国が戦争を始める正当性を論じた書籍といえると
思います。人民解放軍は国民にも戦争を始める準備を訴え始めた
ということではないかと思います。そして、最後は「中国人民よ
平和を望むなら戦争に備えよ!」という言葉で結んでいます。
                   http://bit.ly/2j9Q6d5
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 『C形包囲』を沖縄対策本部公式サイトがなぜ取り上げたのか
については、あくまで推測ですが、この本に、沖縄(琉球)は中
国の領土であると記述されているからです。これについては巻末
の「画像と関連情報」を参照してください。
 気になることは、著者は10〜20年以内に、C型包囲を敷く
国々との間で戦争が起きると予言していることです。そのために
複数隻の空母が必要になるとも書いています。実際に中国は、不
完全空母とはいえ「遼寧」を既に有していますし、現在2隻の空
母を建設中といわれます。
 昨年12月25日、中国は初めて空母「遼寧」を、第一列島線
(九州─沖縄─台湾─フィリピン)の宮古海峡を越えて西太平洋
に進出させ、バシー海峡を通過して海南島の海軍基地を経て、南
シナ海に入っています。中国の空母船団はここを守るためのもの
であり、初めてそれを実現させたのです。
 確かにこの本も『中国の夢』と同様に「米国主導の複数の国々
によって中国は包囲されている」という被害妄想による強迫観念
に貫かれていますが、一方において、現在中国が置かれている立
場についても、次のように意外に謙虚に分析しています。
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 中国は世界の覇権を狙ってはいない。アジアの覇権も狙ってい
ない」と言い、同時に「自国の領域が平穏なことを望むだけであ
る。中国は他人の土地や海など寸歩たりともいらない。だが主権
は決して譲らない」と書いている。
 さらに中国は超大国などではないと言い、「現在、中国が経済
成長をしていると言っても、貿易黒字の85%以上は外国企業が
中国を拠点にして生産した製品を逆輸出しているに過ぎない。中
国が生産している製品の大半は特許費を払っており、加えて、中
国が汗水垂らして稼いだ金はアメリカの有毒な債券の購入に当て
られ、しかも債券価格はまたもや大幅に下落する。
 アメリカは、スペース・シャトル、ボーイングの旅客機と航空
母艦を持ち、日本は自動車、電気機器、コンピューター産業を持
ち、ロシアは巨大なエネルギー産業を持っている。では、中国に
は何があるのだろうか。
 中国の支柱産業は不動産、紡績、酒・タバコである。8億本の
ズボンを生産して、ようやく1機の旅客機に交換している現状で
ある。西側の諸国は何を根拠に中国が急速に“世界の超大国にな
る”などと決めつけるのか。私には皆目見当がつかない」と、中
国の現状を正しくつかんでいる。さらに、「現在の中国は巨大に
見えるが、ただの肥満体で力はない」と言い切っている。
                   http://bit.ly/2hYJkcE
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 これら2冊の本は中国で幅広く読まれており、習近平国家主席
の思想もこれらの本によって影響を受けています。慎重に米国と
の戦争は避けながらも、南シナ海や東シナ海での領土主張は断固
貫く構えといえます。   ──[米中戦争の可能性/006]

≪画像および関連情報≫
 ●『C形包囲』について/小島一郎氏のページ
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   日本は、百数十年前に中国の領土であった琉球(沖縄)を
  併合したが、中国は第二次世界大戦の勝利にかこつけて失地
  回復を図ろうとせず、世界の利益を尊重した。しかし日本の
  態度はさらにひどくなり、琉球から始まり、中国の大陸棚を
  山分けしようとしたのである。つけあがるにもほどがある。
   双方は現状を維持したままで、両国関係と世界平和という
  大局から出発し、東シナ海を「友好の海、協力の海、和平の
  海」にするとの立場に基づいて、東アジアの近代史を振り返
  り、東シナ海問題だけを見るのではなく、それと密接な関係
  にある釣魚島問題、琉球問題も見てみようではないか。中国
  は長さ1・8万キロの海岸線、1万以上の島々、300万平
  方キロにもわたる海洋国土を有している。このようなこの上
  なく恵まれた地理条件を持つ大国は、世界海洋制覇に挑む使
  命があるにもかかわらず、中国歴代の支配者とくに明と清の
  政府は、統治が崩壊するまでそれに気が付いていなかった。
  今の中国海洋国土の2分の1は、領有権をめぐって周辺諸国
  と紛争中であり、多くの島は隣国の支配下に置かれているよ
  うな状況である。
   大国の中で空母を持っていないのは中国だけである。中国
  は永遠に空母を持たないわけにはいかない。いまから向こう
  50年の間は、中国海軍の発展目標は南シナ海以外の海域に
  定めてはいけない。私たちはこの50年の間、まず国力を総
  動員し、台湾問題を解決し、不法占拠された島々を取り戻さ
  ねばならない。          http://bit.ly/2hZ1rPn
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中国海軍空母「遼寧」.jpg
中国海軍空母「遼寧」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 米中戦争の可能性 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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