2016年12月14日

●「トランプ言及/一つの中国に疑問」(EJ第4421号)

 今回の米国の大統領選がはじまったとき、日本にとっては次の
米国の大統領が、クリントン氏でもトランプ氏でもかまわないが
中国に対して毅然とした態度を取る大統領が望ましいと多くの日
本人は考えていたと思います。
 結果は次期米大統領はドナルド・トランプ氏に決定したのです
が、本当のところはまだわからないものの、閣僚人事やトランプ
氏の台湾の蔡英文総統との電話会談などを見ている限り、次期政
権の対中国強硬姿勢が読み取れます。
 トランプ氏の蔡英文総統との電話会談には、12月12日には
米中の間で第2ラウンドがあり、トランプ氏と中国との関係は一
段と厳しくなりそうな雰囲気です。何が起きたのか整理しておく
ことにします。
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◎蔡英文総統からの電話について
 ・「聞かされたのは1、2時間前だ。会話は短時間で、お祝
  いを受けた。電話を取らないのは失礼ではないか」。
◎「1つの中国」の政策について
 ・「『一つの中国』政策については十分に理解しているが、
  中国と貿易などについて合意でもしない限り、なぜ堅持す
  る必要があるのかわからない」。
◎電話会談の中国の反論について
 ・「中国が人民元の価値引き下げについて(米企業が競争上
  厳しくなる)、あるいは中国に輸出される米製品に高率の
  税を課すこと(米国は中国製品に課税していない)、南シ
  ナ海の真ん中に大規模な軍事施設を建設することに、われ
  われに許可を求めただろうか。私はそうは思わない」。
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 この発言に中国政府は衝撃を受けたのです。米国の新政権とは
絶対にモメたくはないが、中国が核心的利益として位置付けてい
る問題を真正面から批判され、外交上後に引けなくなりつつあり
ます。しかし、この件で沈黙を続けていると、国民の批判が強ま
るのは必至で、中国は、12日に次の反論をAFP通信に展開し
たのです。しかし、少し言葉が過ぎたようです。
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【12月12日AFP】(更新)中国の国営メディアは12日、
中国本土と台湾は不可分の領土だとする「一つの中国」の原則は
「交渉の余地がない」として、この原則を維持しなければ中国が
米国の敵対勢力を支援する可能性があるとドナルド・トランプ次
期米大統領に警告した。
 これに先立ちトランプ氏は、11日放送された米FOXニュー
スのインタビューで、「中国と貿易などで合意していない限り、
なぜ『一つの中国』政策に縛られないといけないのか」と疑問を
呈し、中国が貿易や外交政策などで譲歩しなければ、米国は、こ
の原則を維持しない可能性があると示唆していた。「『一つの中
国』の原則は、取引材料にはならない」。中国の国営英字紙・環
球時報は、12日にインターネットに掲載した無記名の解説記事
でこのように述べ、トランプ氏を「外交に無知な子ども」とこき
下ろした。              http://bit.ly/2hDkgon
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 中国の対応は最悪である──実に上から目線で、次期米大統領
のトランプ氏を「外交に無知な子ども」と決め付け、「一つの中
国の原則を認めないなら、中国は米国の敵対勢力を支援する可能
性がある」とまで言及したからです。これでは、米中両国の間に
は簡単には修復できない亀裂が生じてしまいます。
 ところで、中国の発言で興味があるのは、「米国の敵対勢力」
とはどこを指しているのでしょうか。
 今まで米国と敵対しているのは、北朝鮮、イラン、シリア、そ
してロシア、その他、911などのテロを仕掛けてくるテロ組織
ということになります。しかし、テロ組織は別として、米国新政
権の出方によっては、イランやロシアは、必ずしも敵対勢力には
ならないと思います。
 注目すべきなのは「支援」という言葉です。これは、小さい国
ではあるが、中国が支援すれば、米国にとっては手ごわい相手に
なるぞといっているのです。
 それに該当する国はひとつあります。それは北朝鮮です。北朝
鮮はもともと中国が相当に肩入れしており、ミサイルの発射や核
実験など、中国は国連の度重なる制裁決議に賛成しながら、ウラ
で支援を続けてきたのは北朝鮮です。したがって、中国としては
ウラでやってきたことを今度は堂々と支援するぞという脅しでは
ないでしょうか。しかし、それをすると、中国は国際社会を敵に
回してしまうことになります。
 このニュースについて、新聞休刊日明けの12日の日本経済新
聞の夕刊は、このニュースを「一つの中国に縛られず/トランプ
氏が言及」というタイトルでトップ記事に掲げ、次のように報道
しています。トランプ氏は「私は完全に『一つの中国』の政策を
理解している」と力説したうえで、表記の発言をしています。こ
れに対する中国外務省の反応です。
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 中国は台湾問題を譲歩できない「核心的利益」と位置づけてい
る。2日の蔡総統との電話協議についてトランプ陣営に抗議した
ばかり。台湾問題を適切に扱うよう求めていただけに衝撃は大き
い。中国外務省はトランプ氏の出方を見極めるため、正式就任前
の言動は抑制的に反応する方針を示している。
 ただ、外交関係者の中にはトランプ氏の外交政策への不信感が
徐々に高まっている。共産党機関紙の人民日報系の「環境時報」
(電子版)は「トランプ氏は外交経験がないため、強硬派の影響
を受けやすい」と警戒心を示した。2016年12月12日付、
                   日本経済新聞夕刊より
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            ──[孤立主義化する米国/106]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏、「一つの中国」政策終わりを示唆
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   ドナルド・トランプ次期米大統領は11日、米政府が19
  79年以来堅持してきた「一つの中国」政策を続けるべきか
  疑問視する発言をした。米フォックス・ニュースとのインタ
  ビューで述べた。
   トランプ氏は、「通商を含めて色々なことについて中国と
  取り引きして合意しない限り、どうして『一つの中国』政策
  に縛られなきゃならないのか分からない」と述べた。米国は
  1979年に台湾と断交して以来、台湾を分離した省とみな
  す中国の「一国二制度」方針を尊重し、台湾を独立国家とし
  て扱うことは避けてきた。これに対してトランプ氏は2日、
  米大統領や次期大統領としての37年来の慣例を破り、台湾
  の蔡英文総統と電話で会談。中国はこれに正式抗議したが、
  トランプ氏はさらに中国の為替政策や南シナ海での活動を批
  判するツィートを連発した。
   トランプ氏はフォックス・ニュースに対して、自分が台湾
  総統からの電話に出るか出ないか決めるのは、中国政府では
  ないと強調。「中国に命令されたくないし、これは、僕にか
  かってきた電話だった。とても素敵な電話だった。短くて。
  それに、いったいなんでどこかの国が僕に、その電話は受け
  るなとか言えるんだ?正直いえば、あの電話をとらないのは
  とても失礼なことだったと思う」とトランプ氏は述べた。
                   http://bbc.in/2hkJlIf
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トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統.jpg
トランプ次期米大統領/蔡英文台湾総統
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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