2016年12月13日

●「国務長官の地位とクリントン財団」(EJ第4420号)

 クリントン財団──その本質は「慈善団体」です。それでいて
「財団」なのです。慈善財団として有名なのは、古くは、ロック
フェラー財団、カーネギー財団、フォード財団などがあります。
これらの慈善団体は、集めたお金を寄付しているのではなく、集
めたお金で営利事業を行い、その利益の一部を寄付しているので
す。したがって、非営利事業といっても営利事業なのです。
 仮に「トヨタ財団」は100兆円売り上げても、1000億円
程度を寄付すれば、非課税になるという仕組みです。したがって
ビル・ゲイツ氏やパフェット氏などの米国の富豪は、こぞって財
団を作って一種の節税をしているのです。ビル・クリントン元大
統領も当初はそういう目的で財団を設立したのです。
 クリントン財団は、当初「クリントン大統領記念図書館」の建
設資金を集めるために設立されています。その後、慈善事業を行
う非営利財団法人に模様替えしています。そして現在では、スタ
ッフが2000人を超えるグローバルな組織になっています。
 クリントン財団の理事長は別にいますが、事実上クリントン一
族がオーナーの財団です。ビル・クリントンと妻のヒラリー・ク
リントン、そして娘のチェルシー氏はいずれも理事会のメンバー
です。なお、ヒラリー氏は大統領選に出るため、2015年で理
事を退任しています。
 この財団について、米国在住の日本出身のジャーナリストであ
る高濱賛氏は、クリントン元大統領とのインタビューで、次のよ
うに述べています。
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 この財団はビル・クリントンとクリントン一族にとっての「リ
ビング・レガシー」(living legacy =生きつづける遺産)だっ
た。最初は自分の「大統領記念図書館」を作るつもりだったのが
その後、なにか「世のため、人のために活動を続けたい」と考え
るようになった。これだけ世界規模でチャリティ活動をやってい
る米大統領経験者はほかにいない。  http://nkbp.jp/2hjBfiY
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 しかし、クリントン財団のカネ集めは、クリントン国務長官の
地位を利用する悪質なものに変質していったのです。日本では昨
今、政治家の地位を利用して「口利き」をする行為は、「あっせ
ん利得処罰法」という法律に触れますが、クリントン国務長官は
クリントン財団を利用してこれに近いことをやっていたと考えら
れるのです。
 それは、国務長官時代のクリントン氏のメールがウィキリーク
スによって暴かれてわかったことですが、これに関するひとつの
例が「ニューズウィーク」のサイトに出ています。
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 2009年のメールで、クリントン財団幹部のダグラス・バン
ドは、財団に大口の寄付をしたレバノン系ナイジェリア人富豪を
国務省のレバノン専門家に紹介したいと依頼していた。クリント
ンの側近フーマ・アベディンが役に立てそうだと示唆すると、バ
ンドはすぐに駐レバノン米大使に電話してほしいと応じた。「非
常に重要な案件だ」と、バンドは付け加えた。
 AP通信は国務長官就任以来2年間のヒラリーの公式日程を分
析し、彼女が面会したアメリカや外国の政府関係者を除く民間人
の半数以上がクリントン財団か、財団の国際プログラムに寄付を
していたと結論付けた。85人の寄付者が総額1億5600万ド
ルを寄付している(ヒラリーは、財団に総額1億7000万ドル
を寄付した少なくとも16ヶ国の外国政府代表者とも会談してい
るが、この数字には含まれていない)。 http://bit.ly/2hjIIi6
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 つまり、簡単にいうと、クリントン国務長官と何らかのコンタ
クト──直接会うとか、頼みごとがある場合は、何はともあれ、
クリントン財団に自発的に寄付せよとのメッセージを出している
のです。米国では、寄付者と会って話したり、もてなしたりする
のは当たり前の行為になっているのです。
 また、米国では、大統領選において、その陣営に対して資金調
達を行い、およそ50万ドル(約5000万円)以上の資金協力
をして当選に一役買った人物を各国の大使に任命することはよく
あることです。つまり、お金で地位を買うということになります
が、そういうことは米国ではよく行われているのです。
 まして、クリントン氏は国務大臣ですから、大使の任命には強
い権限があるのです。第1次オバマ政権で日本駐在米大使に任命
されたジョン・ルース氏(2009年〜2013年)も、オバマ
氏への多額献金者の一人であったといいます。これについて、高
濱賛氏は、カリフォルニア大学バークレー校の政治学教授の一人
の言葉として、次のように述べています。
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 歴代の大統領は多かれ少なかれ、大口の献金者に便宜を供与し
てきた。巨額の選挙資金を出した支持者を主要国の駐在大使や政
府高官に任命するのは通例にすらなっている。誰も咎めたことが
ないが、大使のポストをカネで買うなどということが他の国で罷
り通るのだろうか。
 通常、大統領職を終えた政治家はおとなしく、悠々自適な隠居
生活を送る。だが、ビル氏の場合はちょっと違う。置かれた生活
環境が他の大統領経験者とは違っていた。何せ、奥さんが現役バ
リバリの政治家で国務長官になったり、大統領になろうとしたり
していること自体、前代未聞だよ。  http://nkbp.jp/2hnp5TH
─────────────────────────────
 もっともクリントン財団は、人権や保健事業で慈善団体として
高い業績を上げているのは確かです。だが、ヒラリー・クリント
ンが、大統領になった場合、寄付者はクリントン財団を彼女の影
響力を勝ち取る絶好のルートとみなすはずです。もちろん、ビル
・クリントン氏やヒラリー・クリントン氏が財団から離れたとし
ても、財団が存在している限り、そうなることは明らかにいえる
と思います。      ──[孤立主義化する米国/105]

≪画像および関連情報≫
 ●今さら言われても/クリントン財団の倫理問題けじめ
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   ビル・クリントン氏は、自身の財団がビルとヒラリーの同
  夫妻、あるいは米政府に倫理的な衝突ないし葛藤を一切もた
  らさないと長年にわたって主張してきた。だが、ここに来て
  彼は真実をようやく認めた。それも、少しだけだが。ビル氏
  は、ヒラリー氏が大統領になればクリントン財団(それは慈
  善団体を装った「スーパーPAC=特別政治行動委員会であ
  る)は、外国あるいは企業の献金を受け取らないと述べたの
  だ。ビル氏はまた、財団の理事を辞任し、財団の理事長的存
  在である娘のチェルシー氏は財団のための資金集めをやめる
  という。彼らに今さらそう言われても、という感がある。
   ヒラリー氏が大統領になると、この種の資金集めが問題に
  なるというのならば、彼女が国務長官だった時、あるいは大
  統領選に立候補している今、なぜ問題でなかったのか?答え
  は、それは問題であったし、問題であり続けている。そして
  彼らはそのことを知っている。しかし、この財団は彼らクリ
  ントン家の政治的な将来にとって余りにも大切なので、クリ
  ントン王朝のカップルが、ホワイトハウスの大統領執務室に
  戻って行く態勢になるまで、それを手放せなかった。今やヒ
  ラリー氏が、共和党候補のドナルド・トランプ氏を支持率で
  リードしている。このため、ビル氏は彼らのペイ・ツー・プ
  レイ(参加したいならカネを払え)式の政治に対する新たな
  制約をうやうやしく受け入れられるのだ。
                 http://on.wsj.com/2htQOW3
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ビル・クリントン氏の講演.jpg
ビル・クリントン氏の講演
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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