補佐官が就任する模様です。
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プリーバス大統領首席補佐官
バノン首席戦略官・上級顧問
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首席補佐官というのは閣僚級ポストで、大統領への面会や文書
の管理などのほか、ホワイトハウスの職員を監督・統括する官房
機能も担う役職で、日本の官房長官に匹敵します。共和党本部は
首相補佐官に誰が選ばれるのかについて、緊張感を持って見守っ
ていたのです。候補者として、プリーバス氏とバノン氏の2人が
候補に上がっていたからです。
というのは、共和党で公職の最高位にあるライアン下院議長は
バノン氏との仲は最悪であるのに対し、プリーバス氏とは、同じ
ウィスコンシン州出身で、気心は通じている人物だからです。し
たがって、もし首席補佐官にバノン氏が就くと、共和党本部との
関係は最悪になり兼ねなかったからです。
結果として首席補佐官にラインス・プリーバス氏が就き、参謀
役としてスティーブン・バノン氏が政権をサポートするという人
事配置になったのです。この人事について、ライアン議長と反ト
ランプの急先鋒であるグラハム上院議員は次のような歓迎のコメ
ントを出しています。
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◎ライアン下院議長
わが友を誇りに思い、興奮している。
◎グラハム上院議員
プリーバス氏を首席補佐官にした選択はすばらしい。統治に
ついて真剣に考えていることを示すものだ。
──2016年11月15日付、朝日新聞朝刊
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しかし、トランプ氏は明らかにバノン氏に重点を置いているよ
うに見えます。トランプ氏は11月13日に発表した声明におい
て、バノン氏の名前を先に上げ、首席戦略官・大統領上級顧問に
指名しています。
バノン氏は、トランプ氏がイラクで戦死したイスラム教徒の米
兵の遺族を中傷したことで支持率が急下落したときに、トランプ
陣営の最高責任者に就任した人物で、以後体制を立て直し、トラ
ンプ陣営を勝利に導いた立役者であり、トランプ氏から厚い信頼
を得ています。
トランプ氏は、プリーバス氏に首席補佐官として、共和党本部
との橋渡しをする役割をさせ、バノン氏に大きな権限を与えると
思われるので、トランプ政権の政策にはバノン氏の意向が強く反
映される可能性があります。
それでは、バノン氏とはどういう人物なのでしょうか。朝日新
聞は次のように紹介しています。
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バノン氏は、以前は最右派系ニュースサイト「プライバート・
ニュース」の会長だった。このサイトは「反エスタブリッシュメ
ント(既得権層)」が特徴で、2007年設立以来、既存の政治
やメディアを批判的に扱うことで存在感を伸ばしてきた。しばし
ば信頼性の低い、陰謀史観的な「ニュース」を掲載。白人至上主
義や反イスラム、反ユダヤなど人種差別的論調を牽引してきたこ
とでも知られる。
サイトでは、トランプ不支持を打ち出した保守派の論客ビル・
クリストル氏を「裏切り者のユダヤ人」などと人種差別的な表現
で批判。共和党主流派を敵視することでも有名で、以前はティー
パーティー(茶会)を支持。最近も「我々に必要なのは、共和党
に平手打ちを食らわせてやることだ」などと、発言し、主流派内
にも懸念が広がっていた。
──2016年11月15日付、朝日新聞朝刊
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これによると、選挙中のトランプ氏の言動の源泉がこのバノン
氏であることがよくわかります。バノン氏は、米海軍やゴールド
マン・サックス勤務の経験もあり、さまざまなルートから、多く
の情報を収集しています。クリントン氏の私的メールの内容につ
いても、そのルートから多くの情報を収集し、選挙戦に有利にな
るよう展開してきています。そういう意味で、バノン氏は「米国
の最も危険な政治職人」と呼ばれているのです。
選挙中にトランプ氏が発言したいわゆる「暴言」といわれるも
のは多いですが、なかでも「イスラム国(IS)はオバマ大統領
とクリントンが創設者である」というのは、まさに決定打という
べき発言といえます。しかし、これは必ずしも暴言とはいえない
のです。イスラム国が組織として結成された経緯を考えると、も
ともとシリア政府に対抗する反政府軍のひとつなのです。
米国はイスラム国に対して空爆を行っていますが、その戦い方
は非常に不可解です。米軍のイスラム国への空爆は、その多くが
爆撃しないで戻ってきているからです。2015年1月〜3月で
米爆撃機は7319回出撃していますが、空爆を実行したのは、
1859回しかないのです。とても米国が本気でイスラム国の制
圧をしようと努力しているとは思えないのです。やはり、米国は
イスラム国の創設に関わっているのでしょうか。
これについては、EJの前回のテーマ「現在は陰謀論の時代」
の次の部分を参照していただきたいと思います。
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2016年 6月 1日/EJ第4288号〜
http://bit.ly/1P2nbRA
2016年 6月21日/EJ第4302号
http://bit.ly/28K3Qcg
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──[孤立主義化する米国/088]
≪画像および関連情報≫
●わざとイスラム国に負ける米軍/MAG2 NEWS
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数的優位な有志連合軍が「イスラム国」(ISIS)にイラ
クの戦略的要衝ラマディを奪われるなど、不可解とも取れる
戦況が続く中東情勢。しかし国際情勢解説者の田中宇さんの
無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』はこの状況につ
いて、決して不可解ではなく、米軍がわざとISISに負け
ているだけだと断言します。
2015年5月17日、米軍が指導するイラク政府軍の約
1万人の部隊が、イラク中部のスンニ派の都市ラマディで、
自分らの10分の1しかいない1000人程度の過激派テロ
組織「イスラム国」(ISIS)と戦って敗北、敗走し、ラマ
ディはISISの手に落ちた。米国とイラクにとって、昨年
6月のモスル陥落以来の大敗北だ。イラク軍は装甲車大砲な
ど大量の兵器を置いて敗走し、それらの兵器はすべてISI
Sのものになった。ラマディは、首都バグダッドから130
キロしか離れていない。東進を続けるISISは、イラクを
危機に陥れている。敗北時、イラク軍には世界最強の米軍が
ついていた。米軍は制空権を握り、戦闘機でいくらでもIS
ISを空爆できた。しかし、地上で激戦のさなかの空爆は4
回しか行われず、それも市街の周辺部を小規模に空爆しただ
けだった。 http://bit.ly/1U7zLGF
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スティーブン・バノン氏