2016年11月02日

●「メール問題再捜査の選挙への影響」(EJ第4393号)

 今回は、米大統領選の状況にやや変化が生じているので、この
問題を取り上げます。やはり、「オクトーバー・サプライズ」と
いうべき事態が起こったようです。それは、FBI(米連邦捜査
局)がクリントン氏の私用メール問題に関する捜査を再開させた
ことです。
─────────────────────────────
 米連邦捜査局(FBI)は28日、民主党大統領候補のクリン
トン氏(69)が、国務長官時代に私用メールアドレスを使って
いた問題で、新たなメールが見つかったとして、捜査を再開した
ことを明らかにした。投票日が11日後に迫るなか、大統領選で
優勢のクリントン氏にとって、打撃となる可能性もある。
 FBIのコミー長官は同日、米議会あてに送った書簡で、捜査
チームが新たに「捜査に関連すると見られるメールを見つけた」
と報告。「FBIが適切な捜査を行うことに合意した」として、
捜査を再開したことを明らかにした。ただ、捜査にかかる時間や
致命的な内容が含まれている可能性があるのかなどについては現
段階で不明としている。    ──2016年10月29日付
       「朝日新聞デジタル」 http://huff.to/2epiBld
─────────────────────────────
 FBIのコミー長官は、現在は離党しているものの長く共和党
党員であり、それだけに大統領選挙直前になっての「捜査再開」
は賛否両論がありますが、いずれにしてもクリントン陣営に大打
撃を与えることは必至の情勢です。
 コミー長官は、このメール問題の公表に関し、次のような微妙
な表現をしています。
─────────────────────────────
 新たな捜査を公表した場合と、議会に知らせずに捜査を進め、
選挙後に重大な事実が見つかった場合の問題性を考慮して公表に
踏み切った。             ──FBIコミー長官
          2016年10月31日付、朝日新聞朝刊
─────────────────────────────
 この発言はいろいろ解釈できます。FBIを管轄する司法省内
では、選挙に影響を与えるとして「公表は避けるべき」という意
見が多かったのですが、コミー長官はあえて発表にこだわったと
いいます。長官の表現によると、捜索によって重大な事実が発見
される可能性を示唆しているようにもとれます。
 コミー長官の言葉には、もし公表しないで選挙が行われ、クリ
ントン氏が大統領になった後で、メール問題に重大な事実が出て
きた場合、FBIが公表しなかったことが問題になるというニュ
アンスがあるように感じます。
 問題は、このFBIの公表によって選挙の状況に影響が出てく
るかどうかです。30日に実施されたワシントンポスト、ABC
テレビの実施した世論調査によると、両者の支持率は次のように
1ポイント差になっています。23日の時点では、クリントン氏
が12ポイントリードしていたのですが、その差が1ポイントに
なったというのです。
─────────────────────────────
       ドナルド・トランプ ・・・ 45%
      ヒラリー・クリントン ・・・◎46%
─────────────────────────────
 しかし、大統領選の支持率調査は、メディアによって大きく異
なるので、「リアル・クリア・ポリティクス」(RCP)の総合
世論調査の20日時点と30日時点の調査を比較すると、次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
                 30日     20日
  ドナルド・トランプ ・・ 41.6%   42.1%
 ヒラリー・クリントン ・・◎45.0%  ◎48.5%
─────────────────────────────
 これによると、クリントン氏は支持を下げてはいますが、トラ
ンプ氏の方も下げています。これは、FBIのメール問題の捜査
再開によって、状況が一変したというわけではないようです。し
かし、次のニュース(ヤフー・ニュース)もあります。
─────────────────────────────
 トランプ氏が大統領選を制するには絶対に負けられない州であ
るフロリダ州では、米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学研
究所の共同世論調査でトランプ氏の支持率が46%と、クリント
ン氏の42%を上回った。前回はクリントン氏が1ポイントリー
ドしていた。 ──ヤフー・ニュース  http://bit.ly/2dTK7uQ
─────────────────────────────
 10月24日付のEJ第4386号に示したフロリダ州とオハ
イオ州の支持率を再現します。
─────────────────────────────
            トランプ   クリントン
     オハイオ ◎46.5%   46.0%
     フロリダ  43.8%  ◎47.4%
─────────────────────────────
 「オハイオ州とフロリダ州を制した者が大統領選を制す」とい
われていますが、10月21日の時点では、オハイオ州はトラン
プ氏がリードしているものの、フロリダ州では4ポイント差でク
リントン氏が優勢だったのです。それが上記ヤフー・ニュースで
はフロリダ州ではトランプ氏が逆転したと報道しています。
 そうであるとすると、オハイオ州とフロリダ州を制しつつある
トランプ氏が優勢ということになります。これに加えて今後メー
ル問題でさらに何かクリントン氏にとって不利な情報が出ると、
投票結果に致命的な打撃を与えることは確実です。
 いずれにしてもこの大統領選は最後まで「接戦」になることは
確実であり、クリントン氏の余裕ある勝利はとても望めない状況
です。トランプ氏にもクリントンシにも勝利の可能性がある状況
です。         ──[孤立主義化する米国/078]

≪画像および関連情報≫
 ●Eメール再捜査開始でもクリントン優勢は変わらず
  ───────────────────────────
   先週末の金曜日に突如、米連邦捜査局(FBI)が大統領
  選のヒラリー・クリントン候補の私用メール問題の捜査を再
  開すると発表した。これによりいわゆるリスク回避の円買い
  が強まり、上昇していたドル円はあっという間に105円半
  ばから104円半ばへと約1円も急落した(円高ドル安)。
  突然の発表に驚き、市場はトランプ大統領実現のリスクが再
  度高まったと受け止めたといえよう。
   ただ、FBIが議会に送った書簡をみると、「メールの重
  大性は判断できず、捜査にどれくらい時間がかかるか不明」
  という趣旨のことが述べられており、クリントン氏が不利益
  になる新たな証拠が発見されたというわけでもなさそうであ
  る。また、捜査には時間がかかるとみられ、大統領選まであ
  と10日ばかりしかないことから、これ以上選挙本番前に新
  たな材料が出る可能性は低い。
   一方、トランプ候補には女性へのセクハラ行動の証言者が
  さらに増えており、女性からの支持を大きく失っているため
  従来の支持率が回復する兆しはない。両者のスキャンダルや
  罵り合いで、史上最低の大統領選などと揶揄され、もはやど
  ちらがより最低ではないかを競う選挙になってきたといえよ
  う。               http://bit.ly/2flHvXC
  ───────────────────────────

コミー米FBI長官.jpg
コミー米FBI長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
RDF Site Summary