2016年10月17日

●「米独立戦争前後の3種類の人たち」(EJ第4381号)

 既出の冷泉彰彦氏の本によると、米国の独立戦争が勃発する前
後には、米国には次の3種類の人たちがいたのです。
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          1.ロイヤリスト
          2.厭戦ノンポリ
          3.パトリオット
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 「ロイヤリスト」とは、米国に移っても、あくまで英国王を支
持する人たちです。彼らは本国の英国からいくら重税をかけられ
ても、仕方がないとし甘んじて受け入れる層です。もちろん彼ら
は、本国の英国との戦争には絶対に反対です。
 「厭戦ノンポリ」とは、もともと政治には関心がなく、戦争に
は反対する層です。つまり、厭戦派です。彼らは農園などを経営
して生活水準も安定しており、重税は困るが、戦争に訴えてまで
英国から独立しようとする気はない層です。
 「パトリオット」は、英国からの増税は不当であり、あくまで
米国は独立を目指すべきであるとして独立を推進しようとする人
たちです。それも単に独立するだけでなく、世界初の共和制民主
主義国家アメリカを建設しようとしていたのです。パトリオット
とは「愛国者」を意味しています。
 パトリオットといえば、映画『パトリオット』という次の映画
があります。この映画は、1775年の米国独立戦争を描く米国
建国の歴史ドラマです。
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        映画『パトリオット』/2000年製作
   ローランド・エメリッヒ監督/メル・ギブソン主演
           予告編/ http://bit.ly/1F1xDm6
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 映画の内容を明かすのは問題ですが、概要を知っていただく必
要があります。この映画の概要を紹介しているサイトはいくつも
ありますが、一番わかりやすいと思われるサイトを以下にご紹介
します。まずは読んでいただきたいと思います。
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 1776年のイギリス植民地時代のアメリカ、サウスキャロラ
イナにおいて。かつてはフレンチ・インディアン戦争の英雄とし
て名を馳せたベンジャミン(メル・ギブソン)だったが、妻には
先立たれ、7人の子供達と一緒に農夫として暮らしている。
 イギリス本国の植民地アメリカに対する重税政策はアメリカの
13州の反発を呼び、今やサウスキャロライナの議会でもイギリ
スに対して、戦争を挑むか否かの決断が迫られていた。戦争を経
験して己の過去を悔いているベンジャミンはイギリスとの開戦に
は反対していたのだが、息子のガブリエル(ヒース・レジャー)
は、そんな父親に反発しアメリカ大陸軍に入隊する。
 そんなある日のこと、戦火はベンジャミンの家のすぐ近くまで
迫ってきていた時に、ガブリエルが負傷して帰ってくる。そこへ
イギリス軍のダビントン大佐(ジェイソン・アイザックス)一行
が現われ、ガブリエルをスパイ容疑で連れ去ろうとし、それを止
めようとした弟のトーマスが撃ち殺されてしまう。
 目の前で息子が殺され、家を焼き討ちされたベンジャミンは怒
りから、かつての戦闘本能が呼び起され、三男、四男坊を連れて
イギリス軍の一行に奇襲攻撃を喰らわせて、ガブリエルを救出。
このままではイギリスの横暴が続いてしまうことを悟ったベンジ
ャミンは荒れくれ男達等を集めて民兵団を結成し、イギリス帝国
軍団に戦いを挑むのだ・・・!     http://bit.ly/2dm4dfm
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 ここで重要なのは、メル・ギブソン扮するベンジャミンが独立
戦争に反対していることです。彼はインディアンとの戦いで戦功
があり、英雄といわれる勇壮な人物ですが、本人は戦争には反対
だったのです。しかし、息子のガブリエルはそんな父親に反対し
て、アメリカ大陸軍に入隊するのです。
 冒頭の3分類によると、父親のベンジャミンはノンポリ、つま
り厭戦派であり、息子のガブリエルはパトリオットということに
なります。この映画では、父親と息子の葛藤を描き、ノンポリと
パトリオットとの対立軸があったことを表現しています。映画の
製作者は、この対立軸をドラマの中心テーマにしているのです。
 それにベンジャミンは戦争の経験があるだけに、戦争はするべ
きではないと考えたのです。まして相手はインディアンなどでは
なく、当時世界最強の英国軍です。寄せ集めの米軍が勝つのは容
易なことではないという事情もあります。
 しかし、英国軍に息子のカブリエルを連行され、それを阻止し
ようとした次男を射殺されたベンジャミンは怒りを持って立ち上
がるのです。このように、独立戦争前後には冒頭の3種類の人た
ちがおり、ロイヤリストを含む厭戦ノンポリとパトリオットの明
確な対立軸が存在したのです。
 このように、米国の独立戦争にいたる経緯を調べると、通常の
他の国の独立戦争のそれとは違うものが見えてきます。独立とい
うことで米全国民が一本化されたのではないのです。冷泉氏はこ
れについて次のように書いています。
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 いずれにしても、独立戦争の前後には心情的な対立軸、つまり
「戦争に訴え、外国の力を借りてでも世界初の共和制民主国家を
作る」という心情と、「生活が保障されているのなら、植民地で
あっても構わないし、戦争や外国との同盟には反対」という心情
の対立が生まれていた。そして、これがアメリカの歴史を貫く対
立軸の原型になっていった。この対立は、やがて独立を果たした
新国家において連邦政府を置くべきかという論争に発展する。
             ──冷泉彰彦著/日本経済新聞社刊
          『民主党のアメリカ/共和党のアメリカ』
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            ──[孤立主義化する米国/066]

≪画像および関連情報≫
 ●映画「パトリオット」感想
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   メル・ギブソン主演の映画「パトリオット」を見てみた。
  アメリカ独立戦争を舞台にした戦争映画である。評判にたが
  わず、すばらしい映画だったので、感想を皆さんに披露する
  次第である。
   いやあ、イギリス軍のかっこいいこと。ぴっちり組んだ歩
  兵の隊列、号令とともに一糸乱れず構え―狙い―撃ち―装填
  する、そろった動きの美しさ。歩兵戦列の前進とともに着弾
  点をずらしていく砲兵の正確さ(おそらく散兵線を制圧する
  ためだろう)。あれこそが軍隊ですな。
   それに対して民兵ども、ありゃ明らかに反則だ。戦争じゃ
  ない。戦闘時でもないのに、輸送隊が次々に賊に襲われて殺
  されていく。将校もお構いなしに皆殺しだ。その将校たちの
  同僚の気持ちを考えれば、タピントン大佐みたいなのが出て
  くる気持ちもわからないではない。
   ところでタピントン大佐、やはり育ちの悪さが出ている。
  まあ、当時の騎兵サーベルは斬る剣なのかもしれないが、あ
  の剣の振り回し方は将校というよりならず者だ。いろいろ苦
  労してはるんですね。しかし、どうしてあの状態からイギリ
  ス軍が負けたのかいまいち納得しかねる。反斜面陣地で第一
  線が壊滅しはしたが、コーンウォリス閣下はちゃんと予備の
  戦列を後ろに配置して、味方の退却を支援収容している。
                   http://bit.ly/2d92RGj
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映画『パトリオット』.jpg
映画『パトリオット』
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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