2001年07月04日

●構造改革しても景気は回復せず(EJ第651号)

 現在、最新のEJでは「日本経済回復の謎」を連載中です。そ
こで、休日データも関連する経済問題−−「円の支配者日銀」を
取り上げます。このテーマは、2001年7月4日から27日ま
で、17回にわたって連載されたものです。
 「構造改革なくして景気回復なし」――いわずと知れた小泉内
閣のスローガンです。これが参議院選挙用のスローガンであるな
ら問題はないのです。しかし、小泉首相が本気でこれを考えてい
るとしたら困ったことになります。
 このスローガンの意味は、ちょっと考えると、「構造改革をす
れば景気が回復する」というように解釈できますが、そういう意
味でないと思います。「構造改革をしなければ日本経済がだめに
なる」ことは確かですが、そうしたからといって別に景気が回復
するわけではないのです。
「ニュースステーション」のコメンテータとして著名な森永卓
郎氏はこういっています。
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 『「構造改革なくして景気回復なし」という議論には致命的な
論理矛盾がある。構造改革というのは、生産性を上げて供給力
 を増やす政策だ。しかしいまの不況は、供給力が少ないから成
 長できないのではなく、需要が少ないから成長できないのであ
 る。だから、構造改革をいくら進めても、景気回復はできない
 のだ』。(森永卓郎著、『日銀不況』より)
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 小泉首相とブッシュ大統領による日米首脳会談でブッシュ大統
領は、「日本の不良債権問題を憂慮している。小泉首相の積極的
な取り組みを期待したい。米国としてもこの問題を解決するため
にあらゆるサポートをしていきたい」と表明しましたが、それは
米国にとって当然のことといえます。
 というのは、日本の金融機関がバタバタ潰れると、それらの金
融機関がかかえている膨大な米国債が投げ売りされることになり
ます。そうすると、米国債は暴落し、米国の金融機関は深刻な影
響を受けることになるのです。そのため、米国としては不良債権
の早期処理を強く日本に求めるわけです。
 日本経済の問題を考えるとき、このあたりの理解がとても大切
なのです。「失われた10年」といわれる1990年代の日本経
済の低成長の原因は、構造改革ではなく需要の不足が引き起こし
たものなのです。したがって、この問題を解決しないで景気が回
復するはずがないのです。
 日本の現在直面している課題は、デフレ、それも資産デフレで
あり、倒産であり、失業なのです。これは、景気の悪化によって
引き起こされる現象です。それは、基本的には日本経済に大きな
デフレ・ギャップが存在していることを意味しているのです。ど
ういうことかというと、経済全体の総需要が総供給より小さいこ
とを意味しているのです。
 ですから、とにもかくにも総需要を増やす政策を実行すること
が急務なのです。ところが日本は構造改革をやろうとし、米国も
それを求めているのですが、先に述べたように、構造改革は経済
のムダをなくし、総供給を拡大する政策なのです。
 総需要の拡大が求められているのに、総供給を拡大する政策を
実施したら、一体どうなるでしょうか。デフレギャップがさらに
広がってしまうことは明らかではありませんか。
それでは、なぜ総需要が増えないのでしょうか。
 その原因はデフレにあります。それでは、なぜ、デフレになっ
てしまったのでしょうか。それは、金融政策に原因があります。
金融当局が政策に失敗してデフレになってしまったのか、それと
も誰かが意識してそういう政策をとったのかです。
 「意識してデフレ政策をとるはずがない」という反論もあると
思いますが、あながち否定はできないのです。どのように考えて
も日本の金融当局はあまりにも愚かな金融政策を長い間にわたっ
て取り続けているからです。
 リチャード・A・ウェルナーという人が書いて、このほど邦訳
の出た『円の支配者/誰が日本経済を崩壊させたのか』(吉田利
子訳、草思社刊)という382ページにおよぶ大著があります。
これによると、日銀はあえて明確な意図をもってそういう政策を
とり続けたと書かれています。
 そういうわけで、これらの資料を駆使してEJでは、断続的に
その真相に迫ってみたいと思います。
 2000年4月、森前政権が発足した当時、株価は2万円を超
えていました。それからというもの株価は下落する一方で、20
01年3月には一時1万143円まで売り込まれたのです。1万
円割れ寸前まで行ったのです。
 そして、3月19日、日銀の量的緩和策の発表、小泉政権の誕
生などで一時小康状態を保っていましたが、ここにきて再び株価
は下げています。
 12チャンルのWBSに登場するエコノミストの一人であるモ
ルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券のロバート・フ
ェルドマン氏は、かなり早い時期から2000年8月が景気の山
であることを指摘していました。
 フェルドマン氏は、例のエコノミストベスト10の第7位にラ
ンクされる優秀なエコノミストです。そうであるとすると、日本
経済は去年の8月から景気後退局面に入り、それから1年近くに
なろうとしていることになります。
 問題は日銀の発表です。日銀の発表はその間次のようになって
いるのです。
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 2001年2月  「景気は緩やかな回復を続けている」
 2001年3月  「景気は足踏み状態」
 2001年4月  「景気は調整局面」
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 現在、日本経済は企業部門を中心に調整局面に入っていますが
なぜ日銀は8ヶ月も不況を認めようとしなかったのでしょうか。
               −−[円の支配者日銀/01]

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posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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