2016年10月07日

●「中国と北朝鮮の本当の関係を探る」(EJ第4376号)

 「唇亡歯寒」(くちびるほころびてはさむし)という中国の言
葉があります。互いに助け合うべき関係にあるものは一体であっ
て、一方がなくなってしまうともう一方も危くなることを例えた
言葉です。これは中国と北朝鮮の関係を指してもいえるのです。
 現在、北朝鮮の対中国貿易依存度は80%以上であり、北朝鮮
市場で中国製品が占める割合は90%を超えています。中国の電
話帳には北朝鮮の電話番号も載っているし、北朝鮮国内では人民
元が大量に流通しています。
 このように考えると、少なくとも経済に関しては、中国と北朝
鮮は一体であるといえます。このような状況では、国連で北朝鮮
にいくら制裁をかけても、中国としては、自国の国益上、北朝鮮
の息の根を止めることなどできないと考えられます。
 中国の立場に立って考えると、日本と米国との関係が悪化する
ような局面においては、北朝鮮という国はおろそかにできない存
在なのです。とくに政治・軍事面において北朝鮮は中国にとって
戦略的価値の高い国といえます。
 あくまで推測ではありますが、北朝鮮は事実上中国が完全に支
配しており、ミサイルの発射にしても、核実験にしても、中国の
意思を北朝鮮が担っているのではないかと考えられます。つまり
中国としては表立ってはできないことでも悪役の北朝鮮が代わっ
てやっているのではないかという疑いです。こういう構図であれ
ば、国連の制裁が効くはずがないのです。
 もし、中国と北朝鮮が国家として一体化していると仮定すると
当然ミサイル技術も、核技術も中国の技術供与が行われているも
のと思われます。それなら、北朝鮮の核・ミサイル技術が意外に
高度なのも納得ができます。とくに潜水艦からのミサイル発射技
術などは、北朝鮮が単独でマスターするのは困難です。
 おそらく現状はそこまでいっていないと思われますが、そうで
あっても、北朝鮮の命運が中国によって完全に握られている以上
いずれそれに近いかたちになることは容易に想像できます。
 もし、本当にそうなった場合、北朝鮮は中国に取って、戦略的
にきわめて使い勝手の良い国になる可能性があります。国際社会
としては、そうならないように、北朝鮮の暴走を止める有効な手
を打っていく必要があります。
 しかし、金正日総書記の時代から金正恩委員長の時代に代わっ
てからは、中国のコントロールがいささか効かなくなりつつある
のではないかと思われます。
 何しろ、父である金正日総書記の在任中は、16発のミサイル
発射実験と2回の核実験を実施しただけなのに対して、金正恩委
員長は、この4年間で既に、35発のミサイル発射実験と3回の
核実験を行っています。しかし、これらがすべて中国の容認の下
に行われたかについては疑問があります。
 しかも今年に入って行われた2回の核実験と3発のミサイルの
同時発射については中国は相当怒っているはずです。なぜなら、
9月5日の3発のミサイル発射は、中国がホストを務める杭州G
20サミットの開催中に行われていますし、9月9日の核実験は
大統領選が行われている米国に対して、「北朝鮮は既に核保有国
である」ことを誇示したものと思われます。
 とくにG20開催中のミサイルの発射は、中国のメンツを完全
に潰しており、許し難いものであったはずです。1月の第4回の
核実験、そして9月9日の核実験もその実施を直前に知らされて
いたとはいえ、中国は強い危機感を感じたといわれます。
 そういうわけで、9月20日開催の国連総会における中国の李
克強首相とケリー米国務長官との会談で、中国は米韓の5015
作戦実施を条件付きで受け入れたのでしょう。ここで条件という
のは、北朝鮮という国を潰し、韓国による併合をさせないという
ものであると思われます。中国としては、北朝鮮がなくなること
は絶対に反対だからです。
 そこで、予測不能で不都合な行動をとる金正恩委員長のクビは
取り、トップを代えて、北朝鮮自体は存続させるという考え方で
合意したのでしょう。それでは、金正恩委員長の後継者は誰なの
でしょうか。これについて、次のサイトでは、具体的な後継者に
ついて次のように予測しています。
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 あるいはこのまま米国に口実を与えないため、中国が先に動く
ことも選択肢の一つとして考えられる。
 「中国は亡命中の“金正男カード”を持っている。北朝鮮国内
で暗殺やクーデターが起きればいつでも正恩の首などすげ替えら
れるのです。そうすれば在韓米軍の緩衝地帯としての北朝鮮を温
存できます。
 しかし、正男の賞味期限は過ぎている。そこで担ぎ出されるの
が金漢率(キム・ハンソル)。正男の長男です。儒教文化圏では
長男が家督を継ぐことが当然という認識ですから、中国から見て
も最も正統的な後継者といえます。米国も漢率なら乗りやすい。
 '13年8月にパリ政治学院に進学しているし、'12年10月
にフィンランド国営放送が行ったインタビューでは、北朝鮮の福
祉の向上に寄与すること、人権改善のために努力し世界の平和を
構築したい、という抱負を明らかにしていますから、米国にとっ
ても“適任者”といえます。      http://bit.ly/2dWYzBO
─────────────────────────────
 中国としては、米韓両国による5015作戦によって、北朝鮮
の政権が終わるのは望ましくないはずです。そうであるならば、
中国が先に動いて、北朝鮮の政権交代を実施する方が、次の体制
を中国主導で構築できるので、そのように動く可能性はゼロでは
ないと思います。
 いずれにしても、北朝鮮の金正恩体制は、今後の動き方しだい
では、その命運は風前の灯になろうとしています。しかし、金正
恩委員長の方も、そういうことに対しては相当慎重になっている
はずです。簡単にクビを取られるわけにはいかないからです。
            ──[孤立主義化する米国/061]

≪画像および関連情報≫
 ●北朝鮮と世界大戦の危機/田中宇/2013年4月11日
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   北朝鮮がミサイルを発射しそうな状況になっている。北朝
  鮮で最も尊敬されている国父の金日成(今の権力者である金
  正恩の祖父)の誕生日が4月15日で、北朝鮮の最大の年中
  行事である金日成生誕記念日(太陽節)の祭典の一環として
  歌舞音曲公演のたぐいと並び、国威発揚の意味を込めて、4
  月11日から15日ごろまでの間に、ミサイルが発射される
  と、日米などで予測されている。
   北朝鮮はこれまで毎年のように、太陽節やその他の国家的
  な節目の時期に、短距離や中距離、長距離のミサイルを発射
  してきた。北朝鮮政府は以前、発射するものを「ミサイル」
  でなく「人工衛星を打ち上げるロケット」と説明し、ロケッ
  トの先端に入れる人工衛星の実物を海外の記者たちに公開し
  て平和利用であることを強調した。昨年の打ち上げ後には、
  米国のNASAが北の打ち上げた人工衛星が衛星軌道に乗っ
  たことを認めた。だが北朝鮮政府は、昨年末に核実験を挙行
  し、核兵器保有国であることを宣言した後、打ち上げたもの
  が核弾頭を搭載可能なミサイルであり「米韓などが北を潰す
  と威嚇する限り、北朝鮮は、抑止力として核ミサイルを持つ
  権利がある」という説明に転換した。
                   http://bit.ly/2cOHBWk
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ケリー米国務長官/李克強首相.jpg
ケリー米国務長官/李克強首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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