でしょうか。米国の北朝鮮への攻撃は、当然のことながら、韓国
の同意がなければできないからです。韓国の事情について考えて
みることにします。
朴槿恵大統領は、金正恩委員長に対しては、相当怒りを持って
いることは確かです。どうしてかというと、朴氏が大統領になる
直前に金正恩委員長が彼にとってはじめての、北朝鮮にとっては
3回目の核実験をやったからです。明らかに朴槿恵大統領の就任
を牽制するための核実験と考えられます。
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3回目の核実験を実施 ・・・ 2013年2月12日
朴槿恵大統領の就任日 ・・・ 2013年2月25日
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このとき朴大統領は、自分の任期中に北朝鮮問題を解決するこ
とを心に誓ったのだと思います。しかし、これまでのように、日
米韓の枠組みでは解決しないと考えて、親中政策を取ることにし
たのです。彼女は、北朝鮮問題の解決には中国の力が不可欠であ
ると考えていたからです。反日離米親中姿勢です。
最初の何年かはよかったのです。中国に歩調を合わせて、安倍
首相との首脳会談を頑なに拒否し、執拗に慰安婦問題の解決を強
く日本に迫ったのです。中国の求めに応じ、AIIBへも進んで
参加し、副総裁の地位につこうとしたのです。
そして、米国から強く求められていたTHAAD配備から逃げ
回り、2015年9月3日に朴大統領は、習近平主席、プーチン
大統領らとともに、中国・天安門の壇上にいたのです。米国の反
対を押し切り、抗日戦争70周年記念式典に出席したからです。
それほどまでして、北朝鮮問題解決のために米国から離れて、中
国に擦り寄ったのです。習主席とのホットラインも設置し、いつ
でも連絡がとれるようにしたのです。
しかし、2016年1月6日、北朝鮮は4回目の核実験を強行
します。朴槿恵大統領は、ホットラインを使って習主席と連絡を
取ろうとしたのですが、肝心なときに、習主席とは連絡がとれな
かったのです。習主席は意図的に電話に出なかったからです。
このとき韓国大手3紙は、2016年1月12日付で、一斉に
朴大統領の親中離米政策の批判を掲載したのです。以下に、最大
手の「朝鮮日報」の記事の要約を示します。
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・核実験の直後、中国と共同対応を取るため、韓国は国防相によ
る電話会談を要請したが、1月11日になっても何の回答もな
い。昨年末に開通し、決定的瞬間に効果を発揮するはずのホッ
トラインが、いざ必要な時に無用の長物になっていたのだ。
・首脳同士の電話会談もまだ行われていない。中国の態度は、外
交関係の常識に大きく反すると言わざるを得ない。
・昨年9月、朴大統領は欧米諸国から冷たい視線を浴びながらも
中国で行われた抗日戦勝70周年記念式典に出席、韓中関係は
大きく好転し、関係も深まるかと思われた。しかし今回、それ
は完全に無に帰した。
・尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は昨年7月、韓中関係は「史上
最高」と語り「米国と中国の双方からラブコールを受けるのは
祝福だ」とも発言した。ところが危機的状況に直面すると、韓
中間には越えられない大きな壁があることが判明した。外交の
責任者が自慢げに語った言葉が数ヶ月後には虚しい戯言になっ
てしまった。
・朴槿恵政権が取り続けてきた中国重視政策の影響で、同盟国で
ある米国からも韓国の中国傾斜を懸念する声が出始めている。
北朝鮮による核実験という決定的瞬間に中国がその本心をさら
け出した今、我々は対日外交に続き、対中戦略についても方針
の見直しを迫られている。
・このままでは国としての誇りを持ち続けることも、国民に「政
府は外交によって国益をもたらしている」という信頼を持たせ
ることもできない。
・外交政策担当者の失敗によるものであるなら、今すぐ担当者を
交代させ、新たな戦略と方針を定めねばならない。大統領の間
違った指針が今の状況を招いたのなら、大統領自らすぐにでも
国民に説明すべきだ。 http://nkbp.jp/2dkvxda
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北朝鮮が本格的に核兵器の開発に取り組んだのは、朝鮮戦争終
戦後のことです。当初はソ連の支援を受け、寧辺に核施設を建設
し、開発を進めたがうまく行かず、ソ連も原子力の協力は、平和
利用に限定されるべきとの立場を崩さなかったのです。
それでも核兵器の開発にこだわる北朝鮮は1964年に原子爆
弾を保有した中国に懇願し、核兵器開発の支援を要請したのです
が、断られてしまいます。しかし、それでも北朝鮮はあくまで核
兵器を持つことに執着し、国際原子力機構(IAEA)を脱退し
核兵器の独自開発を目指そうとしたのです。
これに対して危機感を抱いたのは、当時の米国のクリントン大
統領です。彼は中国に続いて北朝鮮まで核保有国を増やしたくな
かったからです。そこで、北朝鮮の寧辺の核施設に先制攻撃をす
ることを韓国に提案したのです。ところが、当時の金泳三韓国大
統領はこれを拒否し、先制攻撃プランは中止されたのです。
いま考えると、あのとき北朝鮮を攻撃し、金政権を倒しておけ
ば、北朝鮮による核危機で、世界中が振り回されることはなかっ
たといえます。そして、再びめぐってきた北朝鮮への先制攻撃プ
ランの5015作戦計画。今度は朴槿恵大統領はハラをくくって
いるので、いつ行われても不思議はない状況です。
朴槿恵大統領の任期は来年の12月までであり、任期中に北朝
鮮を屈服させることに強い意欲を持っています。むしろ問題は退
任が迫っているオバマ大統領の方です。またしてもシリアへの攻
撃のように腰砕けになる可能性もあるからです。
──[孤立主義化する米国/058]
≪画像および関連情報≫
●金泳三元大統領、米国の北朝鮮爆撃計画阻止を後悔
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「私がビル・クリントン米大統領の(1994年)北朝鮮寧
辺(ニョンビョン)核施設爆撃計画を阻止していなければ、
今ごろ韓半島は非核化されていたはずだが・・・」。
金泳三(キム・ヨンサム)元大統領が08年に当時のバー
シュボウ駐韓米国大使に会い、このように打ち明けたという
米国務省の外交公電が内務告発サイト「ウィキリークス」を
通して公開された。
94年の第1次北核危機当時、米国の北朝鮮爆撃計画を金
前大統領が引き止めたことは知られているが、本人がこれを
後悔しているということは初めて公開された事実だ。ウィキ
リークスが公開した米外交公電25万1287件のうち、こ
うした北朝鮮関連文書は数千件にのぼる。北朝鮮に関する些
細な情報も逃さず収集する米国の執拗さが分かる。
在韓米国大使館が09年2月10日に国務省に報告した公
電は、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記に対する
警護について記述している。金正日が特別列車で地方を巡回
したり、中国・ロシアを訪問する際、列車が移動する線路に
は50メートル間隔で私服を着た秘密要員が配置される。少
しでも異常があれば線路に設置された非常ベルを響かせる。
また列車移動経路の周辺の村には私服警察が多数投入され、
徹底した検問が実施される。この公電は、金委員長の列車旅
行の度に警護を担当した北朝鮮保衛部出身の幹部との面談に
基づいて作成された。 http://bit.ly/2df93uu
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金泳三元韓国大統領