2016年09月28日

●「北朝鮮は核小型化に成功している」(EJ第4369号)

 さらに北朝鮮の核技術のレベルを検証していきます。これまで
の5回の核実験の「地震規模」と「爆発規模」についてのデータ
を以下に示します。
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  ≪北朝鮮の核実験≫
   ◎金正日          地震規模   爆発規模
    第1回:2006年10月  3・9      1
    第2回:2009年05月  4・5    3〜4
   ◎金正恩
    第3回:2013年02月  4・9    6〜7
    第4回:2016年01月  4・8      6
    第5回:2016年09月  5・0  10〜12
    註:地震規模/マグニチュード 爆発規模/キロトン
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 今年の9月9日に北朝鮮によって実施された核実験の爆発規模
については、ソースによって数値が異なります。韓国国防省によ
ると、その威力は「10キロトン程度」であるとしているのに対
し、元米国家安全保障会議アジア上級部長のマイケル・グリーン
氏によると、「その威力は20キロトンに及ぶ」と述べているの
です。数字が大きく異なります。
 しかし、他の情報を総合すると、「10〜12キロトン」が妥
当な数値であり、今回の爆発規模は相当大きなものであったこと
がわかります。ちなみに、広島型の威力は13キロトン、長崎型
は23キロトンです。この爆発規模を得るには、ウラン13キロ
グラム、プルトニウム4キログラム以上が必要といわれます。
 軍事ジャーナリスト田岡俊次氏の「北朝鮮の核は実戦配備レベ
ル/有効な対抗手段はあるか」という「ダイヤモンド・オンライ
ン」上のレポートには興味ある事実が述べられています。
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 北朝鮮は2006年10月9日の第1回核実験の前に中国に対
し、「威力4キロトンで実験する」と通知していた。これは核物
質全体に連鎖反応が及ぶ前に一部を吹き飛ばし、威力を小さくす
る「威力制御」の技術をすでに持っていたことを物語る。ただ初
回だけに制御が効きすぎたのか、威力は1キロトン以下だったよ
うだ。北朝鮮はその後3回の核実験でも制御を効かして、4キロ
トンないし6キロトン程度(米、韓国の推定)の威力で行ってき
た。だが今回は10キロトンないし20キロトンの威力であった
ことは、核兵器開発の実験用に威力を抑えた核爆発ではなく、威
力制御をしない実戦用の核弾頭を試験したと考えられる。
                   http://bit.ly/2cMUM62
─────────────────────────────
 驚くべきことですが、北朝鮮は第1回の核実験のときから、核
物質の連鎖反応をセーブする「威力制御」という高等技術を使い
爆発規模をコントロールしていたのです。
 北朝鮮は、今年1月の核実験は「水素爆弾」であるといい、世
界を驚かせています。しかし、6キロトンという爆発レベルから
推察すると、「ブースト型原爆」であるといわれています。これ
は核融合反応を一部利用した核爆弾で、原爆と水爆の中間レベル
の爆弾であるといわれています。
 問題は、これが何を意味するかということです。専門家による
と、ブースト型原爆の技術は、水爆開発に必要な技術でもあるこ
とであり、「北朝鮮の核開発は一段階先に進んだということがで
きる」ということです。
 さらに、ブースト型原爆は、核弾頭の小型化にもつながり、ミ
サイル技術の向上と合わせて、威力の高い長距離弾道ミサイルの
開発を可能とし、北東アジアだけでなく、米国にとっても大きな
脅威になることを意味しています。
 実は核実験が行われたとき、それを発表する主体が2016年
と、それ以前は異なるのです。
─────────────────────────────
     第1回〜第3回 ・・・・ 朝鮮中央通信
         第4回 ・・・・   政府声明
         第5回 ・・・・ 核兵器研究所
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 第1回〜第3回は朝鮮中央通信の発表です。第4回の「水爆」
は政府声明となっています。9月9日の第5回は核兵器研究所の
声明として出されており、「核弾頭の威力判定」と宣言し、次の
ようなコメントが付いています。
─────────────────────────────
 核弾頭の小型化・規格化によってわれわれは、いろいろな分裂
物質に対する生産とその利用技術を確固ととらえて小型化、軽量
化、多様化されたより打撃力の高い核弾頭を決心した通りに必要
なだけ生産できるようになり、われわれの核兵器はより高い水準
に確固と上がるようになった。        ──平井久志氏
           「北朝鮮・核搭載ミサイルの衝撃(上)
      米国も認めた現実の脅威」 http://bit.ly/2d0ZvSV
─────────────────────────────
 共同通信客員論説委員の平井久志氏は、以上の声明には次の2
つの重要ポイントがあるといいます。
─────────────────────────────
  1.核弾頭の小型化・軽量化・多様化に成功したこと
  2.弾道ロケットを装着できるように標準化・規格化
─────────────────────────────
 「1」は、核弾頭の小型化成功の声明です。射程1300キロ
のノドン・ミサイルが搭載可能な核弾頭の重量は約700キロ〜
1000キロといわれますが、それに成功したということです。
 「2」は、戦略弾道ロケットに装着できるよう核弾頭を標準化
・規格化したという声明です。規格化したということは、それを
量産化できるということを意味しています。
            ──[孤立主義化する米国/054]

≪画像および関連情報≫
 ●「核弾頭小型化は事実」 米、北朝鮮の主張認める
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   【ワシントン=石川智規】米国防総省のデービス報道部長
  は九日、北朝鮮が核弾頭の小型化成功を主張していることに
  ついて「北朝鮮の訴えは事実だとみなす必要がある」と指摘
  した。米政府はこれまで、北朝鮮が核弾頭の小型化には成功
  していないとの見解を示していた。
   デービス氏は「われわれは実際に北朝鮮の小型化運用を確
  認したわけではない」としつつ「小型化は特に難しい技術で
  はない」と述べた。また、在韓米軍に配備する最新鋭地上配
  備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サー
  ド)」について「二〇一七年中の配備を予定している。緊急
  事態になれば速やかに配備できる」と強調。韓国や日本など
  同盟国への防衛体制を引き続き強化する考えを示した。
   一方米国務省のトルドー報道部長は同日の記者会見で「北
  朝鮮の核兵器保有は受け入れられない」と指摘。「不可解な
  体制が行う挑発行動に、国際社会が協調して圧力をかけ続け
  る努力が必要だ」と述べた。
  <核の小型化> 核兵器をミサイルに搭載する弾頭とするた
  めに必要な技術。爆撃機などで攻撃するよりもミサイルで撃
  ち込めば相手が防御態勢を取る時間が極めて短くなり迎撃も
  難しくなる。このため、現在は核弾頭をミサイルに搭載する
  のが一般的。初歩的な核弾頭の重量は500〜600キロが
  目安とされ、小型化、軽量化には高度な技術が求められる。
  米国や中国などは1960年代までに一定の小型化を実現し
  たとみられる。 (共同)     http://bit.ly/2dhmGLU
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核実験を決断した金正恩委員長.jpg
核実験を決断した金正恩委員長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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