ンプ候補が直接対決するテレビ討論会があります。第1回のテー
マは次の3つ。30分ずつ論争が行われます。
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1.米国の先行き
2. 繁栄の達成
3. 米国の安全
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各種世論調査をまとめた政治サイトである「リアル・クリア・
ポリティクス」(RCP)によると、現時点でクリントン氏とト
ランプ氏の支持率は、クリントン氏が2ポイント、トランプ氏を
上回っている状況です。8月時点でのクリントン氏の8ポイント
差が2ポイント差に縮まっています。
ロイター通信によると、現在のクリントン氏の勝つ確率は60
%、1週間前の83%から大幅に後退しています。したがって、
26日のテレビ討論でどちらが勝つか注目されるのです。
今回の北朝鮮による5回目の核実験の成功は、明らかにクリン
トン氏にとって逆風です。オバマ政権の口先だけの牽制が結果的
に北朝鮮に時間の猶予と核・ミサイル開発を許し、現実の危機を
広げているからです。トランプ氏は北朝鮮の核実験について講演
で次のように述べています。
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北朝鮮の核実験はクリントン氏が国務長官になって以降、4回
目だ。核実験を阻止できないのは、国務長官として失敗した一例
である。 ──ドナルド・トランプ氏
2016年9月23日付、日本経済新聞
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ところで、北朝鮮の核戦略能力はどの程度のレベルなのかにつ
いては、さまざまな意見があります。レベルは着実に上がってき
ていますが、「核弾頭の小型化」については懐疑的であるという
意見も少なくないのは事実です。また、潜水艦からのミサイル発
射についても合成動画ではないかという意見もあるのです。しか
し、北朝鮮は何回も成功させており、合成動画とは思えません。
ここで北朝鮮による核脅威を考えるとき、ミサイルに搭載され
る燃料について、基本的な知識を持つ必要があります。ミサイル
の燃料には次の2つがあります。
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1.液体燃料
2.個体燃料
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長距離の射程を有する弾道ミサイルには、液体燃料が使われま
す。液体燃料は燃焼効率が良いので、ミサイルを遠くまで飛ばす
ことができるからです。それに加えて、液体燃料は車のエンジン
のように推進制御装置と合わせて軌道の微調整を行うことが可能
なので、正確にターゲットに命中させることができます。
しかし、デメリットもあります。それは、液体燃料をミサイル
のタンク内に長期間保管することができないことです。タンクが
腐食して燃料漏れを起こしやすくなるからです。そのため、ミサ
イルには発射直前に燃料を注入する必要があります。このような
発射準備の兆候は、衛星などの情報網に察知され易く、相手から
発射前に攻撃を受ける恐れがあります。
これに対して、潜水艦や車両などから発射されるミサイルは、
小型であり、取扱いが簡単であることから、固体燃料が使われま
す。固体燃料は、液体燃料と比べて、化学的に安定した状態でミ
サイルに搭載することができるので、事前に積み込んでおくこと
ができます。
固体燃料を使うミサイルは、発射する側からは、衛星に探知さ
れることなく、必要なときにいつでも発射することができます。
それは発射される側にとっては、大きな脅威なります。とくに潜
水艦に搭載されてしまうと、発見するのは困難です。
重要なことは、北朝鮮は車両からも、潜水艦からもミサイルを
発射し、映像を公開しています。素直に考えると、北朝鮮はその
ための技術を有し、使いこなしていることは確かです。それに加
えて今回の5回目の核実験です。しかも北朝鮮は「核弾頭の実験
である」といっているのです。これによって北朝鮮の脅威は、一
段と高まったことは確かです。
朝鮮労働党創立記念日の10月10日に北朝鮮が何をするかが
注目されています。推測ですが、実施するのは第6回目の核実験
ではなく、テポドン2を人工衛星と称して打ち上げるのではない
かと考えられます。もしこれをやるとすると、北朝鮮は2016
年2月に続く今年2回目の打ち上げになります。これは「地球観
測衛星光明星4号」と称していますが、射程1万キロメートルを
超える弾道ミサイルであり、テポドン2と呼ばれています。この
光明星と称する飛翔体は沖縄県上空を通過して、飛翔体の一部が
宇宙空間で軌道に乗ったとされています。
北朝鮮は、既に旧式のミサイルでも、グアムや沖縄の米軍基地
の射程内にあります。それに加えて、射程1万キロメートルのテ
ポドン2が成功すると、ハワイにある米軍基地も核攻撃の対象に
なります。それだけに、北朝鮮は10月10日にテポドン2の打
ち上げを成功させて、大統領の代わる米国に核保有国として認め
させることを考えていると思われます。
振り返ってみると、2016年1月に4回目の核実験を実施し
それをオバマ大統領が一般教書で何も言及しなかったことを見て
とると、2月には「光明星4号」(テポドン2)を打ち上げ、さ
らに続いて9月9日に第5回目で、今年2回目になる核弾頭の核
実験を実施し、成功させています。
それに加えてもっと深刻な情報があります。それは、北朝鮮の
核技術が一般に認識されているのとは違い、相当進んでいるとい
うという情報です。明日のEJで詳しくお伝えします。
──[孤立主義化する米国/052]
≪画像および関連情報≫
●北朝鮮の核ミサイルは本当に恐れるに足りるか?
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北朝鮮がミサイルや核技術の分野で大きな進歩を遂げたの
は事実だが、すべての問題が克服されたわけではない。ロシ
アの軍事専門家ウラジーミル・エフセーエフ氏はそう語る。
「ある情報によると、北朝鮮の第三の核実験では、核弾頭
に使用可能な、相当小型の核爆弾が用いられた。今年2月の
初めに重量200キログラムの衛星が打ち上げられたことも
北朝鮮の技術が進歩していることの証だ。『北朝鮮は熱核兵
器の開発に取り組んでいる』との情報もある。しかし、こう
した開発には、非常に多額の資金が必要だ。ゆえに、おそら
く、今後数年間でこうした兵器が完成されることはない。し
かし、北朝鮮は、核爆弾をブースト、つまり、強化すること
は出来るだろう。核爆弾の威力が20キロトン程度にまで高
められる可能性はある。ただ、目下、北朝鮮は、緻密な大気
の層を通る際に弾頭を保護するための耐熱コーティング技術
に集中している。このようなコーティングがなければ、ミサ
イル本体の燃焼と損失は不可避である。この問題が解決され
たら、次のステップは弾頭の飛行試験を行い、遠隔測定デー
タを集めることである。それなくして、弾道ミサイルを用い
て核弾頭を正確にターゲットに届けることは出来ない。こう
したテストがすべて完了してはじめて、『北朝鮮は戦略的抑
止力を手にした』と言える。韓国や日本は強力なミサイル防
衛システムを持っている。自由落下型核兵器を持っていても
それで有効な攻撃ができるとは限らないのだ」。
http://bit.ly/2cLxnDQ
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地球観測衛星光明星4号