を行おうとしています。それが予定される日は、今回の核実験に
対する国連の安全保障理事会による制裁決議が出た直後か、10
月10日の朝鮮労働党創立記念日のどちらかと思われます。
北朝鮮のハラは、年3回目の核実験をしても、オバマ大統領の
弱腰では米韓による報復はないと見ています。北朝鮮としては次
の新大統領と交渉し、北朝鮮を核保有国として認めさせることを
念頭に置いています。そのためにはなるべく多くの実験を重ねて
おく必要があるという判断です。
北朝鮮は、どうやら次の大統領はトランプ氏になると見ている
ようです。トランプ氏の北朝鮮に関する関心は、2016年5月
17日付のロイター通信とのインタビューから読み取ることがで
きます。これに関して副島隆彦氏次のように述べています。
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米大統領選で共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ
氏は、5月17日、ロイターとのインタビューに応じた。トラン
プ氏は北朝鮮の核開発を阻止するため、金正恩朝鮮労働委員長と
会談することに前向きな姿勢を示した。(一部略)
トランプ氏は北朝鮮政策について詳細には触れなかった。だが
金(正恩)氏と会談すれば、米国の北朝鮮政策が大きく転換する
ことになると強調。
「私は彼(金正恩氏)と話をするだろう。彼と話すことに何の
異存もない」と述べた。その上で「同時に中国に強い圧力をかけ
る。米国は経済的に中国に対して大きな影響力を持っているのだ
から」と語った。 ──副島隆彦著
『トランプ大統領とアメリカの真実』/日本文芸社
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米韓両国は、北朝鮮による核攻撃を「威嚇」「切迫」「使用」
の3段階に分けて、それぞれの段階に合わせた米韓両軍の対応を
決めています。今年の2回にわたる北朝鮮の核実験は、既に「威
嚇」の段階を超えて「切迫」に近付いていると判断し、第2段階
への対応をSCM(韓米定例安保会議)で具体化することにして
います。これに関して、2016年9月21日付の「聯合ニュー
ス」は次のように報道しています。
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韓国の政府当局者は聯合ニュースの取材に対し、「北の核能力
は実際的で現実的なものであり、現在の北は核による『威嚇』と
『使用切迫』の中間段階のレベルまで来ていると判断される」と
の考えを明らかにした。(中略)北朝鮮の核兵器使用が切迫して
いると判断される2段階では、精密攻撃が可能な誘導ミサイルな
どで北朝鮮の核戦力を先制攻撃し、米国の核戦力で北朝鮮の核戦
力を攻撃するための準備に入る。また米国は核戦力の準備態勢強
化を発表する。北朝鮮が核兵器を使用する3段階では韓米両国が
断固たる対応措置を取ることになる。 http://bit.ly/2cG6EbZ
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聯合ニュースが伝えている第2段階「切迫」への対応は、「精
密攻撃が可能な誘導ミサイルなどで北朝鮮の核戦力を先制攻撃」
になっています。実際に米韓両国は、北朝鮮を先制攻撃をすると
いっているのです。これは容易ならざることです。
そんなことを中国は許すのでしょうか。北朝鮮への経済制裁で
さえ骨抜きにする中国のことですから、先制攻撃を許すはずはな
いと考えられます。
しかし、本稿を執筆している21日のテレビ朝日の『スクラン
ブル』で、国連総会出席中の中国の李活強首相とケリー米国務長
官とが北朝鮮制裁について話し合い、いくつかの条件付きで、必
要であれば、中国は米韓両軍の北朝鮮への先制攻撃を容認する姿
勢を見せているというのです。この場合、中国は北朝鮮という国
を崩壊させることには反対であり、あくまで金正恩朝鮮労働委員
長の斬首作戦には黙認するというスタンスです。
もちろんこのような重要報道がテレビで伝えられるはずがない
ので、その真偽のほどはわかりませんが、『スクランブル』で、
そのような報道があったことは事実です。
それでは条件とは何でしょうか。番組に出演していたコリアレ
ポート編集長の辺真一氏によると、条件とは次の2つではないか
と発言しています。
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1.南シナ海での人工島に関わらないで欲しい
2.韓国へのTHAAD配備は再考して欲しい
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もし、辺真一氏の情報が本当であるとすると、両方とも米国と
しては絶対に飲めない条件です。しかし、米中の間には何らかの
合意があった可能性はあります。韓国の朴槿恵大統領は核実験後
に北朝鮮を次のように厳しく批判しています。いつものトーンと
はいささか違う強い表現です。
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金正恩の精神状態は統制不能とみなければいけない。北がわれ
われの領土に核ミサイルを一発でも発射するなら、その瞬間に北
の政権を終わりにする。 ──朴槿恵大統領
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朴大統領のこの発言で注目すべきは「その瞬間に北の政権を終
わりにする」という強い表現です。要するに「金正恩委員長の斬
首作戦を実施する」というように読むことができます。
これらの情報は、当然北朝鮮にも伝わっていると思うので、朝
鮮労働党創立記念日の10月10日に北朝鮮がどう出るのかに注
目が集まります。米韓両軍が10日から15日、北朝鮮の鼻先の
黄海などで米韓合同海上訓練を実施するからです。訓練は有事の
北朝鮮主要施設への攻撃を想定しており、米海軍の原子力空母の
ロナルド・レーガンが参加します。まさに一触即発であり、いつ
何が起きても不思議ではない状況といえます。
──[孤立主義化する米国/051]
≪画像および関連情報≫
●北朝鮮核実験 暴走する脅威に冷静対処せよ
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北朝鮮の核ミサイルの脅威が確実に増した。国際社会は結
束し、金正恩政権の暴走を食い止めねばならない。北朝鮮が
建国記念日に当たる9日、5回目の核実験を実施した。国営
メディアは、「核弾頭の威力判定のための核爆発実験を断行
した」と伝えた。
1月の核実験からわずか8か月である。同じ年に2回の実
験を行ったのは初めてだ。金政権は一段と予測不能となり、
更なる危険水域に入ったと言えよう。度重なる国連安全保障
理事会の決議は、北朝鮮の核実験を明確に禁じている。日米
中や東南アジア諸国連合が参加する東アジア首脳会議も8日
北朝鮮の核実験や弾道ミサイルに対して「深刻な懸念」を表
明したばかりだ。
実験強行は、北朝鮮に核放棄を求める国際社会への露骨な
挑戦であり、断じて容認できない。安倍首相が声明で「我が
国に対する重大な脅威であり、地域の平和と安全を損なう」
と厳しく非難したのは、当然である。
今回の実験は、観測された地震のエネルギーから、過去最
大規 模だったと推定される。看過できないのは、北朝鮮が
「戦略弾道ミサイルに装着できるように規格化された核弾頭
の性能」を実験した、と吹聴したことだ。あえて「核弾頭」
に言及することで、より実戦的な段階にあるとアピールした
いのだろう。 http://bit.ly/2cPkD03
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金正恩朝鮮労働党委員長