2016年09月21日

●「オバマ大統領は対北空爆を行うか」(EJ第4365号)

 北朝鮮にとっては5回目、金生恩政権になって3回目、今年に
なって2回目の北朝鮮による核実験が行われたのは、2016年
9月9日のことです。
 これに対して米国は、B1戦略爆撃機2機を韓国に派遣したの
です。B1爆撃機は、日本の領空に来ると、航空自衛隊のF─2
戦闘機と編隊飛行を組み、日韓ADIZ(防衛識別圏)境界から
は、航空自衛隊機に代わり、韓国空軍のF─16、F─15戦闘
機によってエスコートされながら、韓国上空まで飛行するという
息の合ったデモンストレーションを見せつけたのです。
 ここで知っておくべきことがあります。「B1爆撃機」と書い
ていますが、正しくは「B─1B爆撃機」というべきなのです。
この爆撃機は次の2種類があり、それには2人の大統領の意向が
密接に絡んでいます。
─────────────────────────────
      1.B─1A ・・ カーター大統領
      2.B─1B ・・ レーガン大統領
─────────────────────────────
 1970年のことです。米空軍は、高高度高速侵略能力と低空
侵攻能力を併せ持つ爆撃機の試験用の機体をロックウェル・イン
ターナショナル社に発注しています。
 しかし、1977年に就任したカーター第39代大統領によっ
て配備計画が中止されます。ただ、試験機での研究を続けること
は認められたのです。ちなみにカーター大統領は民主党です。
 ところが、1981年に就任した共和党のレーガン第40代大
統領は、米空軍が次期多目的爆撃機としてB─1を推奨すると、
その改良型の100機生産を承認するのです。これによって生ま
れたのがB─1Bです。B─1Bは、B─1Aに比べて低空侵攻
能力に比重が置かれ、高高度の巡航速度がマッハ1・25に切り
下げられたほか、自重、最大離陸重量が増加しています。
 B─1Bは、1985年から核兵器を搭載してのスクランブル
に備えての任務(アラート任務)につきます。しかし、ソ連崩壊
後の1991年に、B─1Bは戦略核攻撃任務から外れ、その後
は通常兵器を使用する爆撃機として改修されたのです。
 北朝鮮が金正恩政権になってから、核実験が行われるたびに米
国は、米空軍の持つすべての爆撃機を朝鮮半島に派遣して北朝鮮
を威嚇しています、
 第3回目の核実験では、B2とF22を派遣しています。核兵
器を搭載する「空の幽霊」といわれるB2戦略爆撃機が北朝鮮の
指導部を猛爆し、「猛禽類」といわれるF22が北朝鮮空軍を殲
滅するというデモンストレーションです。
 今年の第4回の核実験では、「空飛ぶ要塞」といわれるB52
が出動し、いつでも核攻撃ができることを示しています。米国が
いつも威嚇に使うのがこのB52です。
 しかし、それに比べると、9月の第5回目の核実験では、核攻
撃ができないB─1Bが2機飛来しています。その能力からすれ
ば、やや格落ち感は否めないところですが、今回は日本の航空自
衛隊と韓国空軍との連携を見せつけたのです。
 それにB─1Bは、核兵器こそ搭載することはできませんが、
非常に多くの通常爆弾を機内のウェポンベイ(爆弾庫)に格納す
ることができ、そのペイロードは2000ポンド(907キログ
ラム)誘導爆弾ならば最大24発搭載できるのです。そして、地
中貫通爆弾、いわゆる「バンカーバスター」によって、地下施設
に対する攻撃も可能であることを誇示しているのです。
 今回の北朝鮮による第5回核実験でのB─1Bの飛来について
米太平洋軍司令官、ハリー・B・ハリス・ジュニア海軍大将は次
のように述べています。
─────────────────────────────
 これらの飛行は、北朝鮮による挑発的で地域を不安定化させ
 る行動に対して、韓国、米国、日本の防衛連帯を示威するも
 のである」。 ──ハリー・B・ハリス・ジュニア海軍大将
─────────────────────────────
 北朝鮮が激しく嫌がる米韓合同軍事訓練では、もし北朝鮮が訓
練中に何かを起こせば、直ちに戦争に突入する体制を敷いて行っ
ているのです。具体的には、米軍1万5000人以上、韓国軍約
30万人。米軍の戦闘航空旅団と海兵遠征旅団に加え、米原子力
空母「ジョン・C・ステニス」を中心とする空母打撃群、北朝鮮
に上陸可能な強襲揚陸艦も参加しています。
 日本の防衛省関係者は、「今回の演習は、北朝鮮の核・ミサイ
ル基地への先制攻撃も念頭に置く米軍の作戦計画「5015」に
基づいた訓練だ」といい、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 最大の特徴は「斬首作戦」だ。特殊部隊が奇襲し、正恩氏ら北
朝鮮首脳を確保、排除する「正恩独裁体制殲滅作戦」になる。隊
員らは、精密に再現された平壌市街、正恩宅の模型で徹底的に訓
練している。もし、作戦が決行されれば、正恩氏は100%助か
らない。               http://bit.ly/2d7yjle
─────────────────────────────
 オバマ大統領は、大統領として最後になる今年の一般教書で、
北朝鮮に関して一切言及しなかったのです。北朝鮮が1月6日に
核実験を行ったにもかかわらずです。これを見越したのか、北朝
鮮は、9月にもう一度核実験を強行しています。完全にオバマ大
統領の足元を見ての強行と思われます。
 現在、北朝鮮は6度目になる核実験を強行する構えを見せてい
ます。オバマ大統領の弱腰を見て、新大統領になる前にもう一回
核実験を仕掛けてくる可能性はゼロではないと思われます。1年
に3回の核実験であり、もし本当に行われると、米国のメンツは
それこそ丸潰れになります。
 しかし、北朝鮮の試みは極めて危険です。そうなると、米国は
ピンポイントで北朝鮮の核施設などを破壊する可能性は極めて高
いからです。      ──[孤立主義化する米国/050]

≪画像および関連情報≫
 ●オバマ大統領の最後の大仕事は対北空爆か
  ───────────────────────────
   北朝鮮の度重なる核実験に対して、アメリカは、グアムの
  アンダーセン空軍基地に配備している爆撃機を朝鮮半島に出
  動させたと報じられております。北朝鮮に対する強い牽制の
  意味が込められておりますが、朝鮮半島において有事となる
  可能性も否定はできません。それでは、仮に、北朝鮮に対し
  ては軍事的手段しか道がないと判断された場合、どのような
  シナリオが想定されるのでしょうか。
   第1のシナリオは、朝鮮戦争の休戦協定が、南北どちらか
  一方の破棄により破られ、両軍の戦闘が再開されるというも
  のです。いわば第二次朝鮮戦争であり、このケースでは、事
  実上、当時の米韓対中朝の対立構図が再燃するものと予測さ
  れます。米韓間において1954年に米韓相互防衛条約が結
  ばれる一方で、中朝間でも、1961年に参戦条項を含む軍
  事同盟である中朝友好協力相互援助条約が締結され、200
  1年に更新されているからです(20年ごとに更新)。
   第2の想定は、北朝鮮の核・ミサイル開発を国連憲章上の
  平和への脅威とみなし、NPT等の国際法違反を根拠として
  軍事制裁を課すというシナリオです。この場合には、中国の
  出方によってもその後の展開は変化します。仮に、中国が、
  北朝鮮を見捨てる形で北朝鮮への軍事制裁を認める安保理決
  議に賛成するとしますと、国連の枠内の下で多国籍軍が結成
  されます。            http://bit.ly/2cTdQAY
  ───────────────────────────

米B─1Bと空自F2戦闘機.jpg
米B─1Bと空自F2戦闘機
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
火中の栗を
そもそも北からのミサイルは半島内戦に介入するなよと言うメッセージですよねえ
もう一度言いますが内戦朝鮮戦争に自衛隊参加?
国連軍は何をしている
このままでしたら日本だけが焦土になってからの介入になるのは明らかです
韓国は日本に火中の栗を拾わせようとしています
軍国主義、戦争をする国、侵略国家
そう叫んでいたのは ・・・・・・嘘で本心は
韓国に代って半島に来て北と戦って!
このままでしたら本当に無理やり引きずり込まれ
日本対北朝鮮の戦争にすりかえられてしまいます
人道上で手を差し伸べたのに・・・・・・・・
良い事がありましたか?
歴史に学べ このままでしたら将来
日本が戦争を引き起こした事にされてしまいます
何があっても関わり無いのが大事
38度線の内戦に自衛隊?徴兵?
平和を叫んでいた団体は何処に行ってしまったの
今こそ祖国韓国に向かって戦争反対でしょう
Posted by 中務 慶一郎 at 2016年09月21日 15:15
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。