したB1戦略爆撃機2機が、ソウルの南約60キロメートルの位
置にある烏山(オサン)基地上空を低空飛行したのです。北朝鮮
が核実験などの挑発をすると、米国がよくやる牽制行為です。
これに関しては「威嚇飛行をするだけなんだよね」という冷め
た見方があることも確かです。オバマ大統領は何があっても絶対
に軍事行動には出ないと足元を見られているからです。
しかし、一概にそうとはいえないのです。北朝鮮による今回の
5回目の核実験は、北朝鮮の表現を使えば「核弾頭の爆発実験」
ですが、米国はまだ核弾頭は完成していないし、少なくとも実戦
配備のレベルには達していないと判断しています。
しかし、あと数年で実戦配備のレベルに達することは確実とみ
られます。北朝鮮は経済面においては、中国と一体化しつつあり
北朝鮮国内では人民元が広く使われているといいます。北朝鮮が
経済面で急に破綻することはもはやあり得ないと思われます。
そうなると、北朝鮮の核を潰すには今が一番のチャンスという
ことになります。いや、今しかチャンスはないといえます。しか
もオバマ大統領はやる勇気はないとみられており、北朝鮮はたか
を括っています。
米国の民主党は「リベラル」の政党であり、戦争などしないと
思われていますが、事実と大きく異なります。二度の世界大戦の
参戦に踏み切ったのはいずれも民主党の大統領のときであり、共
和党は反対だったのです。また、朝鮮戦争とベトナム戦争につい
ても、介入を決定したのは民主党政権なのです。
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◎第一次世界大戦(1914年〜1918年)
・ウッドロー・ウイルソン第28代大統領/民主党
◎第二次世界大戦(1939年〜1945年)
・フランクリン・ルーズベルト第32代大統領/民主党
◎朝鮮戦争(1950年〜1953年休戦)
・ハリー・トルーマン第33代大統領/民主党
◎ベトナム戦争(1964年〜1975年)
・リンドン・ジョンソン第36代大統領/民主党
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これだけではないのです。1993年の第1次北朝鮮核危機の
さい、クリントン大統領は核施設が密集している寧辺爆撃を本気
で検討しています。そのとき、米国は日本に対して、兵器および
弾薬の提供、米艦船の防御、民間の空港および港湾の利用など、
1500余項目の支援を要請したのですが、日本政府は憲法9条
を理由にこれを拒否したため、実現しなかったのです。このよう
に、民主党は好戦的なDNAを持っているのです。
米国は、北朝鮮の挑発、とくに核実験に関しては、段階を踏ん
で攻撃の手順をひとつずつ進めてきています。北朝鮮による核実
験は次の5回ですが、とくに何をするかわからない金正恩政権に
なってからの米国の対応はきわめて戦略的です。
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≪北朝鮮の核実験≫
◎金正日
第1回:2006年10月09日
第2回:2009年05月25日
◎金正恩
第3回:2013年02月12日
第4回:2016年01月06日
第5回:2016年09月09日
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金正恩政権になってからの第3回の核実験は、2013年2月
12日に行われています。米国はこのとき韓国との合同軍事訓練
の一環として、3月29日にステルス戦略爆撃機B2を韓国に飛
来させています。B2はステルス機能を持つ核搭載機であり、核
爆弾なら16個を搭載可能で、それに加えて14トンもある大型
爆弾「バンカーバスター」も運べるのです。北朝鮮の核ミサイル
基地攻撃には最適の爆撃機なのです。ステルス性の強いことから
「空の幽霊」と呼ばれています。
これに続いて米軍は、3月31日には、F22戦闘機を烏山空
軍基地に送っています。F22は、ステルス性能、推力偏向ノズ
ル、超音速巡航性能の3つを合わせ持つ戦闘機で、その空対空戦
闘能力で他を圧倒します。F22に対する敵機は、どこにいるか
わからない敵から一方的に攻撃をされるという恐ろしい状況に置
かれます。確実に敵をとらえるため「猛禽類」と呼ばれます。
第4回の核実験は、2016年1月6日に行われています。こ
のとき、米軍は、1月11日にB52を米韓両軍の戦闘機と共に
韓国の烏山空軍基地上空で低空飛行を実施した後、配備先の米領
グアムにあるアンダーセン米空軍基地に帰投しています。
B52は古い重爆撃機ですが、改良を加えて、原爆をはじめ、
大量の爆弾を搭載できるようになっています。2015年11月
に、南シナ海にある中国の人工島の周辺の空域を飛行して話題と
なりました。また、2014年には中国の一方的な防空識別圏設
定後にその防衛識別圏のなかを悠々と飛行して注目を集めたあの
重爆撃機であり、ベトナム戦争や湾岸戦争でも活躍しています。
そのため「空飛ぶ要塞」といわれています。B52については、
次のユーチューブの画像をご覧ください。
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米軍のB52戦略爆撃機/ http://bit.ly/2cgjCig
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米軍は何をやっているのかというと、同盟国である韓国に対す
る「核の傘」を具体的に北朝鮮に誇示しており、北朝鮮に対し、
いつでも攻撃できることを示しているのです。今年になって2回
目になる第5回目の核実験に対する米国の対応については明日の
EJで取り上げることにします。
──[孤立主義化する米国/049]
≪画像および関連情報≫
●平壌を米ステルス機が急襲!金正恩氏も凍り付く
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米韓合同軍事演習「フォールイーグル」(野戦機動演習)
にステルス戦闘機F22が参加する理由は、平壌への威嚇に
あるとされる。米国は軍事演習を使って、もうひとつの重要
な対北心理作戦「作戦計画5030」(北朝鮮動揺計画)を
行っているとされるからだ。その中身は、レーダーに捕捉さ
れないステルス戦闘機を平壌上空に送りこみ急降下や急上昇
で威嚇する−というものだ。
米軍が同演習にステルス機(当初はF117)を投入した
のは2005年から。同年の夏、平壌上空に侵入する「50
30」の秘密作戦があったことをスクープしたのは、日本の
軍事専門家、恵谷治氏だった。恵谷氏はいう。「この年F1
17は平壌上空から金正日総書記の住む宮殿めがけて急降下
急上昇を繰り返した。爆撃機の爆音と振動はものすごい。金
総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ」
恵谷氏のスクープはその後、予期しない形で裏付けられて
いる。米韓合同軍事演習に参加していたF117のパイロッ
トが米軍事専門誌に「私にとって最も記憶に残る任務は北朝
鮮の領空をかき回したことだ・・・の任務のことを考えると
気が遠くなるような感じだ」(エアフォース・タイムズ)と
証言したのだ。 http://bit.ly/1PbjdKQ
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B2/F22