2016年09月20日

●「北核実験に米国はどう対応するか」(EJ第4364号)

 9月13日午前、米領グアムのアンダーセン米空軍基地を発進
したB1戦略爆撃機2機が、ソウルの南約60キロメートルの位
置にある烏山(オサン)基地上空を低空飛行したのです。北朝鮮
が核実験などの挑発をすると、米国がよくやる牽制行為です。
 これに関しては「威嚇飛行をするだけなんだよね」という冷め
た見方があることも確かです。オバマ大統領は何があっても絶対
に軍事行動には出ないと足元を見られているからです。
 しかし、一概にそうとはいえないのです。北朝鮮による今回の
5回目の核実験は、北朝鮮の表現を使えば「核弾頭の爆発実験」
ですが、米国はまだ核弾頭は完成していないし、少なくとも実戦
配備のレベルには達していないと判断しています。
 しかし、あと数年で実戦配備のレベルに達することは確実とみ
られます。北朝鮮は経済面においては、中国と一体化しつつあり
北朝鮮国内では人民元が広く使われているといいます。北朝鮮が
経済面で急に破綻することはもはやあり得ないと思われます。
 そうなると、北朝鮮の核を潰すには今が一番のチャンスという
ことになります。いや、今しかチャンスはないといえます。しか
もオバマ大統領はやる勇気はないとみられており、北朝鮮はたか
を括っています。
 米国の民主党は「リベラル」の政党であり、戦争などしないと
思われていますが、事実と大きく異なります。二度の世界大戦の
参戦に踏み切ったのはいずれも民主党の大統領のときであり、共
和党は反対だったのです。また、朝鮮戦争とベトナム戦争につい
ても、介入を決定したのは民主党政権なのです。
─────────────────────────────
 ◎第一次世界大戦(1914年〜1918年)
  ・ウッドロー・ウイルソン第28代大統領/民主党
 ◎第二次世界大戦(1939年〜1945年)
  ・フランクリン・ルーズベルト第32代大統領/民主党
 ◎朝鮮戦争(1950年〜1953年休戦)
  ・ハリー・トルーマン第33代大統領/民主党
 ◎ベトナム戦争(1964年〜1975年)
  ・リンドン・ジョンソン第36代大統領/民主党
─────────────────────────────
 これだけではないのです。1993年の第1次北朝鮮核危機の
さい、クリントン大統領は核施設が密集している寧辺爆撃を本気
で検討しています。そのとき、米国は日本に対して、兵器および
弾薬の提供、米艦船の防御、民間の空港および港湾の利用など、
1500余項目の支援を要請したのですが、日本政府は憲法9条
を理由にこれを拒否したため、実現しなかったのです。このよう
に、民主党は好戦的なDNAを持っているのです。
 米国は、北朝鮮の挑発、とくに核実験に関しては、段階を踏ん
で攻撃の手順をひとつずつ進めてきています。北朝鮮による核実
験は次の5回ですが、とくに何をするかわからない金正恩政権に
なってからの米国の対応はきわめて戦略的です。
─────────────────────────────
      ≪北朝鮮の核実験≫
      ◎金正日
       第1回:2006年10月09日
       第2回:2009年05月25日
      ◎金正恩
       第3回:2013年02月12日
       第4回:2016年01月06日
       第5回:2016年09月09日
─────────────────────────────
 金正恩政権になってからの第3回の核実験は、2013年2月
12日に行われています。米国はこのとき韓国との合同軍事訓練
の一環として、3月29日にステルス戦略爆撃機B2を韓国に飛
来させています。B2はステルス機能を持つ核搭載機であり、核
爆弾なら16個を搭載可能で、それに加えて14トンもある大型
爆弾「バンカーバスター」も運べるのです。北朝鮮の核ミサイル
基地攻撃には最適の爆撃機なのです。ステルス性の強いことから
「空の幽霊」と呼ばれています。
 これに続いて米軍は、3月31日には、F22戦闘機を烏山空
軍基地に送っています。F22は、ステルス性能、推力偏向ノズ
ル、超音速巡航性能の3つを合わせ持つ戦闘機で、その空対空戦
闘能力で他を圧倒します。F22に対する敵機は、どこにいるか
わからない敵から一方的に攻撃をされるという恐ろしい状況に置
かれます。確実に敵をとらえるため「猛禽類」と呼ばれます。
 第4回の核実験は、2016年1月6日に行われています。こ
のとき、米軍は、1月11日にB52を米韓両軍の戦闘機と共に
韓国の烏山空軍基地上空で低空飛行を実施した後、配備先の米領
グアムにあるアンダーセン米空軍基地に帰投しています。
 B52は古い重爆撃機ですが、改良を加えて、原爆をはじめ、
大量の爆弾を搭載できるようになっています。2015年11月
に、南シナ海にある中国の人工島の周辺の空域を飛行して話題と
なりました。また、2014年には中国の一方的な防空識別圏設
定後にその防衛識別圏のなかを悠々と飛行して注目を集めたあの
重爆撃機であり、ベトナム戦争や湾岸戦争でも活躍しています。
そのため「空飛ぶ要塞」といわれています。B52については、
次のユーチューブの画像をご覧ください。
─────────────────────────────
   米軍のB52戦略爆撃機/ http://bit.ly/2cgjCig
─────────────────────────────
 米軍は何をやっているのかというと、同盟国である韓国に対す
る「核の傘」を具体的に北朝鮮に誇示しており、北朝鮮に対し、
いつでも攻撃できることを示しているのです。今年になって2回
目になる第5回目の核実験に対する米国の対応については明日の
EJで取り上げることにします。
            ──[孤立主義化する米国/049]

≪画像および関連情報≫
 ●平壌を米ステルス機が急襲!金正恩氏も凍り付く
  ───────────────────────────
   米韓合同軍事演習「フォールイーグル」(野戦機動演習)
  にステルス戦闘機F22が参加する理由は、平壌への威嚇に
  あるとされる。米国は軍事演習を使って、もうひとつの重要
  な対北心理作戦「作戦計画5030」(北朝鮮動揺計画)を
  行っているとされるからだ。その中身は、レーダーに捕捉さ
  れないステルス戦闘機を平壌上空に送りこみ急降下や急上昇
  で威嚇する−というものだ。
   米軍が同演習にステルス機(当初はF117)を投入した
  のは2005年から。同年の夏、平壌上空に侵入する「50
  30」の秘密作戦があったことをスクープしたのは、日本の
  軍事専門家、恵谷治氏だった。恵谷氏はいう。「この年F1
  17は平壌上空から金正日総書記の住む宮殿めがけて急降下
  急上昇を繰り返した。爆撃機の爆音と振動はものすごい。金
  総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ」
   恵谷氏のスクープはその後、予期しない形で裏付けられて
  いる。米韓合同軍事演習に参加していたF117のパイロッ
  トが米軍事専門誌に「私にとって最も記憶に残る任務は北朝
  鮮の領空をかき回したことだ・・・の任務のことを考えると
  気が遠くなるような感じだ」(エアフォース・タイムズ)と
  証言したのだ。          http://bit.ly/1PbjdKQ
  ───────────────────────────

B2/F22.jpg
B2/F22
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。