2016年09月16日

●「共和党と民主党/どちらがよいか」(EJ第4363号)

 米国の二大政党制──共和党と民主党のことですが、大統領選
挙はこれら両党の指名候補の対決ということになります。日本に
とっては、民主党の大統領よりも共和党の大統領の方がよいと漠
然と考えている日本人は多いようです。
 確かに、米国の大統領と日本の首相が非常に親密であったとき
の大統領はいずれも共和党であったという事実があります。頭に
浮かぶのはレーガン大統領のときの中曽根首相、ブッシュ(子)
大統領のときの小泉首相です。いずれも共和党の大統領です。
 これに対して民主党のビル・クリントン大統領のときは日本に
はまるで属国に対するように厳しい要求を突きつけ、日本政府を
戸惑いさせたものです。クリントン大統領は、アジアでは中国を
ことさら重視し、日本を軽視するスタンスをとったのです。
 1998年には、クリントン大統領は訪中し、9日間滞在して
います。大統領の滞在期間としては非常に長いですが、中国が好
きなんでしょう。日本の官邸は、帰りに日本へ立ち寄るよう要請
したものの、無視され、大統領はそのまま帰国しています。これ
は「ジャパン・パッシング」として、米国の日本軽視の象徴のよ
うになったものです。
 ちなみにオバマ大統領も中国の招きを受け入れ、大統領夫人や
子どもたちが中国に一週間滞在しています。これらのことによっ
て、日本にとって米民主党の大統領は、「反日/親中」のイメー
ジが強くなったといえます。
 したがって、今回の大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利す
るのは最悪であるものの、そうかといってヒラリー・クリントン
氏が大統領になっても、日本にとってよいことはないと嘆いてい
る人が多いのです。つまり、どっちが大統領になっても、日本に
はロクなことにはならないだろうと考えているわけです。
 これに対して日本政府は、「トランプよりはクリントンの方が
マシ」と考えているようです。その根拠は、オバマ政権の国務長
官のときのクリントン氏は、尖閣諸島は日米安保条約の対象にな
ると明言するなど、日本にとってかなり「好意的」な姿勢のよう
に見えたからです。
 しかし、国務長官と大統領は立場が違うのです。国務長官は大
統領の指示にしたがって、外交全般を行うからです。したがって
国務長官のときに日本に「好意的」であったからといって、大統
領になると変貌する可能性は十分あるといえます。クリントン家
が「親中」であることは確かだからです。親中の米大統領は日本
にとってやりにくい存在になります。
 日本にとってどちらの大統領がよいかなどという視点ではなく
今回の米大統領選は、もっと大きな視点に立って考える必要があ
ると思います。白鴎大学経営学部教授の高畑昭男氏は、多くの識
者が今後の世界が単調な「多極化世界」にはならないと指摘して
いることを踏まえて、これまで米国が果してきたような秩序形成
の担い手を誰も想像できないとして、今回の米大統領選の意味に
ついて次のように述べています。
─────────────────────────────
 次期アメリカ大統領選に世界が注目する理由もそこにある。ア
メリカに代わる秩序形成パワーが他に見つからなければ、アメリ
カの再生に期待するしかないからだ。誰が「ポスト・オバマ」大
統領になるにせよ、その任期は2017年1月に始まり、再選さ
れれば2015年1月まで続く。「2025年」までの大切な8
年間は、「ポスト・オバマ」の一人(再選された場合)もしくは
二人の大統領の双肩に委ねられる。「ポスト・オバマ」は、つき
ることのない課題や中国、ロシアなどの問題行動にいかに立ち向
かうかを国民と世界に説明しなければならない。
 それにふさわしい行動力、決断力があるかどうかも問われる。
リバランス戦略を継続するのか、しないのか。中国に対する「牽
制と協調」のバランスをいかに図るのか。その決断と戦略次第で
アジア太平洋の命運が左右される。日本の平和と安全にも大きな
影響を与える。中国経済がどう推移し、ロシアがどんな行動をと
るかなどの外的要素もあるが、重要な点はアメリカがいかに主体
的に行動するかにかかっている。 ──高畑昭男著/『「世界の
    警察官」をやめたアメリカ/国際秩序は誰が担うのか』
                    株式会社ウエッジ刊
─────────────────────────────
 共和党と民主党──どちらが勝つでしょうか。それを読むには
これら二大政党について研究してみる必要があります。共和党と
民主党の違いはどこにあるのでしょうか。
─────────────────────────────
 ≪共和党≫
  ・  保守の党/減税と歳出の抑制「小さな政府論」推進
   外交姿勢/基軸に孤立主義を持ち、反共、反テロ
 ≪民主党≫
  ・リベラルの党/福祉を中心とする「大きな政府論」推進
   外交姿勢/国連中心外交による「国際協調主義」
─────────────────────────────
 共和党と民主党の基本的な対立軸は、共和党の「保守」に対し
て民主党の「リベラル」です。そして共和党は党是として減税と
歳出の抑制による「小さな政府論」、民主党は福祉を中心とする
「大きな政府論」をそれぞれ展開しています。したがって、「オ
バマ・ケア」などの福祉政策を民主党は積極推進し、共和党は一
貫してそれに反対するのです。これは明確な対立軸といえます。
 外交姿勢に関しては、共和党は基軸に孤立・排外主義を持ちな
がら、20世紀には「反共」、21世紀は「反テロ」という価値
観から世界情勢への介入を行ってきています。これに関して民主
党は、国連中心外交など国際協調の外交姿勢を取っています。
 しかし、現代においては、単に「保守」と「リベラル」という
対立軸で共和党と民主党を分けることは困難になっています。来
週のEJでは、この点について検討とます。
            ──[孤立主義化する米国/048]

≪画像および関連情報≫
 ●日本人が知らない「二つのアメリカ」の世界戦略/深田 匠
  ───────────────────────────
   アメリカの国際戦略を解析していく上で、まず共和党と民
  主党はまったく対照的であることを理解してもらう必要があ
  る。共和党も民主党もひとまとめにして『アメリカ』という
  単位で考えてしまう視点は日本人が陥りがちな誤りである。
  「共和党でも民主党でもアメリカはそんなにかわらないだろ
  う」と思っている人も多いようだが、この両党は対外戦略も
  内政面も大きく異なった思想信条を基盤としており、当然な
  がら個々の議員によって個人差は当然あるものの党全体のカ
  ラーとしては正反対なのだ。
   かつてパキスタンのアユブ・カーン大統領が「アメリカと
  いう国とつきあうのはガンジス川とつきあうようなものだ」
  と述べたことがある。ガンジス川は平均して四年に一度、大
  洪水を起こして、それまで築いたものを全て押し流してしま
  う。アメリカも四年に一度の大統領選挙があり、その新政権
  が共和党か民主党かによって全く違った国際戦略に変わって
  しまうという意味である。
   未来学の始祖と言われるK・ボールディング博士は、名著
  『ザ・ダメージ』の中でこの二大政党を「共和党は象、民主
  党はロバ」として、「共和党は伝統を重んじ、落ち着きがあ
  り、高貴な気位を持つ、厳格な頑固者」「民主党は成り上が
  り的で、敏感にして小利口だが、自分のことを何も分かって
  いない陽気な間抜け」と評している。
                   http://bit.ly/1hIwTth
  ───────────────────────────

対立するクリントン/トランプ.jpg
対立するクリントン/トランプ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック