2016年09月12日

●「『選挙人』を選ぶ米国大統領選挙」(EJ第4359号)

 米大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補とドナルド・
トランプ候補の支持率がここにきて拮抗してきています。一時は
10ポイント近くクリントン候補がリードしていましたが、9月
に入ると、クリントン氏の支持率がダウンして、トランプ氏と拮
抗するようになったのです。
 9月26日から10月中旬にかけて、両候補者によるテレビ討
論が行われ、大統領選は終盤に入って行きます。そして11月8
日に一般選挙が行われます。どちらが大統領になるのか、世界中
が注目しています。
 ここで最終的に民主・共和両党の指名候補がどのように大統領
はなるのかについて考えます。そのためには「選挙人」について
理解する必要があります。大統領は「選挙人」の獲得数によって
決まるからです。
─────────────────────────────
    2.「選挙人」の獲得数で大統領が選出される
                 ──大統領本選挙
─────────────────────────────
 11月の第1月曜日の次の火曜日、すなわち11月8日に本選
挙が行われます。この選挙を「一般選挙」というのです。選挙は
州単位に行われ、民主党の指名候補を選ぶのか、共和党の指名候
補を選ぶのかの投票を行います。なお、そのさい、大統領候補と
セットになっている副大統領候補も選ぶことになります。
 ここで重要なことは、米国では選挙を行うときは、事前の登録
が必要であることです。米国では、18歳になると選挙権が与え
られますが、日本と違って登録所に行って登録しないと選挙に参
加できないのです。つまり、登録しないと、実質的に選挙権がな
いことになります。
 選挙をするための登録率と登録者の投票率は、おおよそ次のよ
うになっています。
─────────────────────────────
       ◎登録率(1996年)
            白人 ・・ 56%
            黒人 ・・ 51%
        ヒスパニック ・・ 27%
       ◎投票率(2012年)
         65歳以上 ・・ 72%
        45〜64歳 ・・ 68%
        25〜44歳 ・・ 60%
        18〜24歳 ・・ 45%
─────────────────────────────
 人種別の有権者登録率は、1996年時点では上記の通りでし
たが、その後登録率は上昇し、白人は70%、黒人60%、ヒス
パニックは50%になっているそうです。
 さて、「選挙人」は人数が決まっています。538人です。こ
の数は人口に比例して各州に割り当てられています。ただし、ど
の州にも属さないコロンビア特別区(DC)には、選挙人は3人
割り当てられています。そして、この538人は、米国の上院議
員と下院議員の数の合計と同じです。これについては添付ファイ
ルをご覧ください。
 誰を選挙人に認定するかは各州によって異なりますが、多くの
場合、各州の政党中央委員会の投票で選出されます。または州の
選出公職者、党指導者、あるいは大統領候補と個人的または政治
的につながりのある者などが選ばれます。
 それでは、11月8日にはどのように選挙が行われるのでしょ
うか。また、なぜ、選挙を行うのは11月の第1月曜日の翌日な
のでしょうか。
 米国がこの選挙方式を決めたのは1845年のことです。11
月を選んだのは「農閑期であるから高い投票率が得られる」とい
う理由であり、日曜日は教会に行く日、月曜日は週空けの日であ
り、忙しいということで、火曜日にしたといわれています。
 今年の場合、11月8日(火)が投票日ですが、選挙は洲ごと
に登録を済ませた有権者が、どちらの大統領候補を選ぶかの投票
を行います。これは普通の選挙と同じです。
 そして、一票でも多く得票した候補者が、その洲に割り当てら
れている選挙人をすべて獲得するのです。この方式を次の言葉で
呼んでいます。
─────────────────────────────
       勝者総取り方式/winner takes all
─────────────────────────────
 ひとつの洲を例にとります。カルフォルニア州には55人の選
挙人が割り当てられています。選挙人が一番多い洲です。この洲
の一般選挙の結果、A候補者がB候補者よりも多くの票を獲得し
たとすると、A候補者がカリフォルニア州の55人の選挙人すべ
てを獲得するのです。これが「勝者総取り方式」です。得票率は
関係ないのです。洲の代表である大統領選挙人は、選挙結果にし
たがって、洲として選挙人は一本化しようということになってい
るのです。
 11月のこの選挙が終わると、12月の第2水曜日の次の月曜
日、今年の場合は12月19日になりますが、11月8日の一般
選挙で選ばれた選挙人が各洲都に集まり、改めて大統領を選挙す
るのです。このことはあまり知られていません。
 11月の一般選挙で2人の候補者の獲得選挙人は決まります。
したがって、過半数の270人の選挙人を獲得した大統領候補者
が大統領になることは決まっており、あくまで12月の選挙は形
式的なものになります。
 伝統にしたがって、米国の大統領選挙ではこのようなかたちで
行われます。1年前の前哨戦からはじまり、選挙の年の予備選で
民主・共和両党の指名候補が決定され、11月8日の一般投票で
決まるという2年に及ぶ長丁場の選挙戦を経て大統領が決まるの
です。         ──[孤立主義化する米国/044]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領選挙がいよいよ本格化
  ───────────────────────────
   アメリカ大統領選挙は投票日まで残り2か月となり、世論
  調査では民主党のクリントン候補が共和党のトランプ候補を
  リードしているものの差は縮まっていて、激しい争いが繰り
  広げられています。
   2期務めたオバマ大統領の後任を決める大統領選挙は11
  月8日の投票日まで、残り2か月となり、終盤戦に入りまし
  た。先月上旬の時点では、共和党のトランプ候補がアメリカ
  兵の息子を亡くしたイスラム教徒の夫婦を侮辱したとされる
  発言が波紋を広げ、各種の世論調査の平均値で、民主党のク
  リントン候補の支持率はトランプ氏を8ポイント程度上回っ
  ていました。しかしその後、クリントン氏が関連する財団の
  献金者に便宜を図っていた疑惑が浮上し、2人の差は縮まり
  ました。
   最近の支持率は、クリントン氏が45.9%、トランプ氏
  が42.9%と、クリントン氏がリードしているものの、差
  は3ポイントにとどまっています。また、南部のフロリダ州
  やノースカロライナ州、中西部オハイオ州などでは接戦が予
  想され、激しい争いが繰り広げられています。今月26日か
  ら来月にかけて2人が直接対決する討論会が3回予定されて
  いて、クリントン氏が引き離すのか、それともトランプ氏が
  巻き返すのか注目されます。    http://bit.ly/2caRD0H
  ───────────────────────────

米国各州の選挙人数.jpg
米国各州の選挙人数
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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