2016年09月09日

●「民意を反映しない特別代議員制度」(EJ第4358号)

 バーニー・サンダース氏は、なぜクリントン氏に対して善戦で
きたのでしょうか。
 サンダース氏がニューハンプシャー洲で勝利したとき、クリン
トン氏の支持者の多くは「えっ!」と驚いたそうです。「どうし
て?」というわけです。誰もがクリントン氏が圧勝すると思って
いたからです。
 既に述べたように、ニューハンプシャー州は党員でなくても投
票できるオープン方式をとっており、この州での勝敗は、本選の
結果を占う材料のひとつになるからです。しかし、クリントン氏
の支持者は、ニューハンプシャー洲がサンダース氏の出身州であ
るバーモント洲と隣り合わせであるので、それで勝利したのであ
ろうと納得したといいます。
 しかし、その後もサンダースは北部のミシガン、ウィスコンシ
ン、中西部のコロラド、アイダホ、ユタ、カンザス、ネブラスカ
インディアナという経済で苦しんでいる洲で勝ち続け、最終的に
は23の洲と地域で勝利したのです。サンダース氏は、一貫して
次のスローガンを掲げて予備選を戦っています。
─────────────────────────────
 ヒラリー・クリントンは富裕層の代表であり、格差社会の象
 徴である。          ──バーニー・サンダース
─────────────────────────────
 このキャンペーンによるサンダース氏のアッピールが若年層に
圧倒的に支持され、クリントン氏は非常に苦しめられたのです。
しかし、クリントン氏には有力な味方がついていたのです。それ
が「特別代議員制度」です。
 米国の大統領選挙は非常に複雑な制度になっています。最も基
本的なことは選挙が次の2段階になっていることです。
─────────────────────────────
    1.「代議員」の獲得数で党の候補者が決まる
                ──大統領予備選挙
    2.「選挙人」の獲得数で大統領が選出される
                 ──大統領本選挙
─────────────────────────────
 「代議員」と「選挙人」──とてもわかりにくいです。ネット
上には多くの解説がありますが、一読してすぐわかる解説はほと
んどありません。
 そこで「選挙人」については改めて述べることにし、ここでは
「代議員」について解説します。
 民主党のニューハンプシャー州の投票結果は次のような不可解
なものになっています。
─────────────────────────────
                 得票率 獲得代議員
   ヒラリー・クリントン ・・ 39%   15人
   バーニー・サンダース ・・ 60%   12人
─────────────────────────────
 この結果は奇怪です。ニューハンプシャー州の選挙の結果にお
いて60%の得票率のサンダース氏の獲得代議員が12人である
のに対して、39%の得票しかできなかったクリントン氏の獲得
代議員が15人と多いからです。これは、代議員には次の2つが
あるに関係があります。
─────────────────────────────
       1.一般代議員    delegate
       2.特別代議員 super delegate
─────────────────────────────
 代議員の人数は、人口に応じて各州ごとに決められており、民
主党は4764人、共和党は2472人です。この代議員の過半
数を獲得した者が予備選の勝利者、すなわち、党の指名候補者に
なれます。
 代議員は、州ごとの予備選、党員集会の得票に応じて各候補に
配分される一般代議員が大半ですが、予備選、党員集会の結果に
拘束されずに候補者を選べる「特別代議員」がいます。
 特別代議員は、民主党で712人(15%)、共和党は126
人(4%)に過ぎないものの、今回のように、圧倒的に強い候補
がいない場合や、接戦になった場合、多数の候補が乱立した場合
などは、この特別代議員の意向が候補者選びの結果を左右する可
能性は十分あります。
 それでは特別代議員とは何でしょうか。「はてなキーワード」
のサイトから引用します。
─────────────────────────────
 アメリカ合衆国大統領予備選挙の民主党の大統領候補者を決定
する党大会において、特別に大統領候補者を決定する党内の選挙
に投票することができる代議員のこと。民主党の場合、連邦議会
の上下両院議員や州知事、党委員会のメンバーなどから構成され
る。原則として予備選挙や党員集会の結果に縛られずに投票する
ことができる。共和党にも似たような非拘束の代議員は各州の代
表者から数人ずつ選ばれるが、数は民主党の特別代議員と比べ非
常に少ない。           ──「はてなキーワード」
─────────────────────────────
 なぜ、こんな制度が設けられているかというと、党として不本
意な候補者が指名されるのを防ぐためであるといえます。その点
共和党の場合は、特別代議員の数が少ないので、今回のトランプ
氏のような党の主流派にとって不都合な候補が選ばれることにな
る原因になります。特別代議員は党の中枢に鎮座する幹部であり
党の主流派の候補者を支持する傾向が強いからです。
 ちなみに今回は、クリントン氏が特別代議員計712人のうち
609人を獲得したのに対し、サンダース氏は47人にとどまり
勝敗を大きく左右したのです。なお、56人がなお、態度未定の
まま党大会に臨んでいることがわかっています。サンダース氏の
悔しさはわかるような気がします。
            ──[孤立主義化する米国/043]

≪画像および関連情報≫
 ●米大統領が決まるまで/毎日新聞
  ───────────────────────────
   州の独立性が強い米国では、民主、共和両党とも州ごとに
  予備選、党員集会のいずれかを実施し、候補者は、その結果
  に応じて配分される代議員の数で正式指名を争う。
   代議員数は民主党が4764人、共和党が2472人。候
  補者が正式指名を受けるには、両党とも7月の全国大会で代
  議員の過半数を獲得しなければならない。
   各党の指名争いの二つの方式のうち、予備選は、地区別に
  設置された投票所で党員が候補者を選んで投票する。通常は
  事前に党員登録が必要だが、ニューハンプシャー州などは特
  殊な方式で、党員登録していない「無党派」も投票できる。
   一方、アイオワ州などで実施される党員集会は、党員間で
  話し合った後、挙手、投票などで勝者を決める。形態は州に
  よってさまざまだ。党員集会は、投票するだけの予備選と比
  べ時間がかかるため、熱心な党員が集まる傾向があるとされ
  る。代議員は、州ごとの予備選、党員集会の得票に応じて各
  候補に配分される一般代議員が大半だが、予備選、党員集会
  の結果に拘束されずに候補者を選べる「スーパー代議員」も
  いる。スーパー代議員は連邦議会の議員などで、時には勝敗
  の鍵を握る。共和党では比例配分のほか、1位の候補がその
  州の代議員全員を獲得する総取り方式もある。
                   http://bit.ly/2cEGS9w
  ───────────────────────────

米予備選を戦うバーニー・サンダース.jpg
米予備選を戦うバーニー・サンダース
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック