勝敗についても見て行くことにします。予備選の行われる洲の順
位は共和党のそれとは若干異なりますが、2016年2月1日の
アイオワ洲から、3月26日のワシントン州までの35洲の勝敗
を次に示します。
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C/アイオア C/ルイジアナ
S/ニューハンプシャー S/ネブラスカ
C/ネバダ S/メイン
C/サウスカロライナ S/ミシガン
C/アラバマ C/ミシシッピ
C/サモア C/北マリアナ諸島
C/アーカンソー C/フロリダ
S/コロラド C/イリノイ
C/ジョージア C/ミズーリ
C/マサチューセッツ C/ノースカロライナ
S/ミネソタ C/オハイオ
S/オクラホマ C/アリゾナ
C/テネシー S/アイダホ
C/テキサス S/ユタ
S/バーモント S/アラスカ
C/バージニア S/ハワイ
S/アブロード S/ワシントン
S/カンザス 勝利者:C=クリントン/S=サンダーズ
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この35洲でクリントン候補が勝利した洲は20洲、サンダー
ズ候補は15洲であり、クリントン氏の抜群の知名度を考えると
サンダーズ氏は大善戦であったということができます。クリント
ン氏の勝率は57・1%です。もっとも獲得代議員の数では、ク
リントン氏は圧倒的な数を獲得していますが、それは選挙制度の
仕組みによるもので、各州の真の民意を必ずしも反映したもので
はないといえます。
ところで、バーニー・サンダーズ氏とは何者でしょうか。なぜ
ここまでクリントン氏が善戦できたのでしょうか。
サンダーズ氏について知るには、ブッシュ政権の第2期に起き
た「ハワード・ディーン旋風」について知る必要があります。今
回の予備選でサンダーズ氏を支えた左派の水脈がディーン旋風と
深い関わりがあるからです。
クリントン政権も2期目になると、議会で共和党が躍進し、民
主党が劣勢になります。これによって民主党のリベラルな政策が
実現困難になり、共和党の新自由主義的政策が幅をきかすように
なります。そのような情勢で迎えた2004年の大統領選挙で、
ディーン旋風は起きたのです
ハワード・ディーン氏は、奇しくもバーニー・サンダーズと同
じ、バーモント洲出身の議員です。バーモント州の下院議員から
バーモント州知事を務め、意を決して2004年の大統領選挙に
出馬します。
バーモント州の知事に過ぎないディーン氏は無名であり、はじ
めは泡沫候補扱いにされます。しかし、ブッシュ政権のイラクへ
の関わりに懐疑的な姿勢を示し、イラク戦争に反対することを宣
言すると、反戦候補としてにわかに注目を集め、2003年秋ま
でに各種世論調査でトップに立ち、民主党の最有力大統領候補と
して注目を浴びるようになったのです。
9・11以後、米国の大勢が「イラク戦争やむなし」という風
潮に傾くなかにあって、彼はインターネットを駆使して戦争反対
を強く訴えたのです。そして共和党寄りの政策に傾く当時の民主
党主流派を「本来の民主党はどこに行ったのか」と正面切って批
判し、多くの若者の支持を得ます。そのとき彼が掲げたスローガ
ンは次の通りです。
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We are the democratic wing of the democratic party.
我こそが民主党のなかの民主党である
──会田弘継著/左右社
『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
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当時選挙にインターネットを使って政策を訴えることは、あま
り行われておらず、ディーン氏の選挙戦術は新鮮なものに映り、
多くの若者の支持を獲得するにいたるのです。
しかし、予備選ではなぜか支持があまり広がらず、途中で失速
してしまったのですが、そのネットによる草の根選挙運動を支え
たグループは生き残り、次の大統領であるオバマ氏の選挙運動を
支えるにいたるのです。
バーニー・サンダーズ氏について学習院女子大学長の石澤靖治
氏は、実際に予備選が始まる前に次のような予測をしています。
そして実際に予測の通り、サンダース氏はニューハンプシャー洲
の予備選に勝利するのです。
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衆目の一致する「正統派」の候補者を現時点で脅かしているの
が、民主党ではバーニー・サンダース上院議員、共和党では実業
家のドナルド・トランプ氏である。両人が異色であるというのは
次のような点からである。サンダース氏は無所属だが、上院で民
主党の会派に所属している。無所属であることも珍しいが、それ
以上に目立つのは資本主義の大本山のアメリカにあって、同氏は
自分自身を「社会主義者だ」と明言している点である。そんな極
端さから最初は泡沫候補とみられていたが、最近行われた世論調
査の一つには、最初に予備選挙が行われるニューハンプシャー州
で本命のクリントン氏に肩を並べるものも出てきた。
http://bit.ly/2caWxgo
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──[孤立主義化する米国/042]
≪画像および関連情報≫
●ニューハンプシャー州はどうなるか/2016年予備選
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予備選の結果はどうなっても衝撃的な結果になるだろう。
ニューハンプシャー州の有権者の4割近くは、まだ投票する
候補者を決めていないという。それ以上に、彼らは州の「ブ
ランド」、つまり予備選の結果が、彼らの予想もしない行動
で大きく左右されるということを十分わかっている。有権者
の行動は、今回も予測できないだろう。
しかし2月9日夜の前に、ニューハンプシャー州の予備選
と今後のことについて、すでにわかっていることがいくつか
ある。民主党のヒラリー・クリントン陣営は、アイオワ州以
上の大量のスタッフをニューハンプシャー州に送り込んでい
る。州のほぼ全域で猛攻をかけていて、バーニー・サンダー
スの陣営も驚くほどだ。その大攻勢は、これからのクリント
ン氏の戦いを象徴するものだ。指名争いはおそらく、資金潤
沢なサンダース氏との長く苦しい戦いとなる。
クリントン氏はおそらく、大勢の「特別代議員」に頼るだ
ろう。いや、確実に頼らざるをえなくなる。特別代議員は多
くが党の要職にあり、予備選や党員集会の結果に縛られず、
7月の全国党大会で投票する権利を持つ。バラク・オバマ氏
にあと僅かのところで敗れた2008年にもクリントン氏は
そうしようとしたが、「アフリカ系初の2大政党の大統領候
補」へ大きな追い風を受けていたオバマ氏に、真っ向から挑
んでも勝算はなかった。今回、クリントン氏にためらいはな
いだろう。 http://huff.to/2ce2nfd
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2004年大統領選を戦うディーン氏