2007年06月08日

●資産デフレでもGDPが減らなかった理由(EJ第2097号)

 この10数年間の日本経済は、現象としては1930年代の米
国経済と同じなのですが、大きく違っていることがひとつありま
す。それは米国のGNPが4年間で半減してしまったのに対して
日本の場合は一向に減っていないことです。
 これについては、添付ファイルの「グラフ1/バブル崩壊後も
拡大」を見てください。このグラフを見るとわかるように、過去
10数年間の日本のGDPは、バブル期の一番高いところからほ
とんど変わっていないばかりか、最近では徐々に上昇に転じてい
るほどなのです。グラフは明確にそれを示しているのです。これ
は一体どうしたことでしょうか。
 この謎を解くかぎは、EJ第2095号で取り上げた「部門別
資金不足」のグラフの中にあります。念のためそのグラフも添付
しておきます。グラフのタイトルは「グラフ2/家計部門と政府
部門の動き」となっています。
 なお、これまでEJは毎日同じ量の文章と図か写真をひとつ添
付するという方針で続けてきていますが、今回のテーマに限って
は図は2つになることもあるので、ご了承ください。
 「グラフ2」を見てください。あれほどひどい資産価値の下落
にもかかわらず、日本のGDPが一向に減少しなかった原因は、
次の2つのことにあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.家計部門の貯蓄切り崩し
       2.政府部門による借り入れ
―――――――――――――――――――――――――――――
 家計部門の動きを見ると、1993年以降は右肩下がりで減っ
ています。これは何を意味しているのかは明らかです。貯蓄が切
り崩されているのです。貯蓄の減少は2003年まで続き、そこ
で一応底を打っています。実に10年間下がり続けたのです。
 この間多くの人がリストラされて失業したり、給料を減らされ
たり、ボーナスがなくなるなどの目にあっており、とても貯蓄ど
ころではない状態に陥ったのです。
 さらに住宅ローンがあります。1990年以前の日本の家計の
前途はとても明るいものだったのです。雇用は安定的に維持され
給与水準も年を追うにしたがって上昇していくことが期待された
ので、ローンを組んでマイホームを建てた人が多かったのです。
 しかし、その想定は完全に外れ、多くの人がリストラの憂き目
にあったのです。しかし、たとえ職を失っても、給与を減らされ
ても、住宅ローンは払わなければならないのです。そういう状況
に置かれれば、誰でも貯蓄をとり崩して、それを補填する行動を
とることになります。
 かつては日本の家計部門は世界に類のない高貯蓄率を誇ってい
たのですが、この10数年間の不況で4つに1つの家計は貯蓄ゼ
ロに追い込まれてしまったのです。それほど大幅な貯蓄の取り崩
しが行われたことになります。
 このように、収入が減ったために貯蓄ができずに貯蓄を取り崩
したりすることは良くないことですが、これはミクロの世界の話
であり、マクロ経済的な観点に立つと、本来は銀行に滞留しかね
なかった資金が減少し、それが経済全体を支える力となって機能
したのです。つまり、深刻な不況下でもGDPを支えたひとつの
力は、この家計部門の貯蓄の取り崩しにあったのです。
 続いて、「グラフ2」の政府部門の動きを見ていただきたいの
です。政府部門のグラフの理想的なポジションはゼロの線の前後
です。政府部門は、1990年〜1991年は、バブルの影響も
あって税収が好調でまだ財政黒字だったのです。しかし、199
2年〜1930年頃から景気は急速に悪化していったのです。そ
して、2003年に底を打っています。これは、何を意味するの
でしょうか。
 昔のポンプは、長く使わないと漕いでも水がでないことが多い
のです。そういうとき、ポンプに水を少し入れると、それが呼び
水となって、水が出るようになったのです。日本ではこの原理を
景気対策に使っていたのです。
 景気が悪くなると、政府は景気対策と称して、1〜2回、巨額
の資金を投入してお金を回しはじめると、それが呼び水になって
景気は回復すると考えられていたのです。
 ここでいう景気対策とは具体的にいうと、政府が国債を発行し
て家計部門からお金を借りて使う財政政策のことです。これを昨
日のEJの例でいうと、金融機関に滞留しかねなかった100円
を政府が企業に代わって借りて使ってくれたことを意味するので
マクロ経済的にはとても意義があるのです。
 クー氏がいうには、この政府の財政政策があったからこそ、あ
れほどひどい資産デフレがあったにもかかわらず、GDPが減少
しなかったのであるといっているのです。
 しかし、この財政政策はすこぶる評判が良くないのです。景気
対策と称して注ぎ込まれた資金が公共事業の名のもとに、無駄な
ハコものの建設やほとんど使われない道路などに重点的に投資さ
れたからです。しかも、それらの資金が何ら呼び水的役割を果た
さないで景気が回復しないままにさらに巨額の資金が必要になっ
たからでもあります。
 ここで注意しなければならないことがあります。デフレとは、
いわゆるデフレギャップが存在するときに起こる経済現象なので
す。つまり、供給が多すぎるか、あるいは需要が少なすぎるとき
に起こるのです。
 デフレギャップを埋めるためには、財政支出を増やす必要があ
るのですが、そのとき重要なのは、支出の内容ではなく、増やす
財政支出の規模なのです。しかし、財政出動が嫌われているのは
支出の内容であり、増加する財政赤字の規模なのです。
 ところが最近は、財政内容の批判から財政支出の額を削れとい
う批判の大合唱になっています。高名な経済学者もテレビによく
出る経済のコメンテータもその方向の発言を平気でしています。
何かが違っています。    −― [日本経済回復の謎/06]


≪画像および関連情報≫
 ・財政政策とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  財政政策とは、主に国の財政の歳入や歳出を通じて、総需要
  を管理して経済へ影響を及ぼす政策のことである。金融政策
  と並ぶ経済政策の柱である。税制や国債などによる歳入の政
  策と社会保障や公共投資などからなる歳出の政策がある。財
  政政策は、景気変動の動きを相殺するように政府が能動的に
  財政支出を増減させたり、家計や企業の負担を増減したりす
  る積極的財政政策と、政府による能動的な対応がなくとも自
  動的に政策が変更されてしまう消極的財政政策にわけること
  ができる。             ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

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posted by 平野 浩 at 04:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本経済回復の謎 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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