たかについて分析を続けます。それがトランプ氏が大統領になれ
るかどうかのカギを握ることになるからです。
トランプ氏は出馬宣言で、Make America Great Again! と宣言
したあと、次のようなことをいっています。そこでは日本への言
及もあるのです。
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我が国は深刻なトラブルに陥っている。我々にはもはや勝利は
ない。昔は勝利を収めていたが、今はない。我々が例えば貿易交
渉で中国を打ち負かすのを誰かが最後に見たのはいつか?中国は
我々を打ちのめそうとしている。だから、私は逆に中国をずっと
打ち負かす。ずっとだ。
何でもいいが、何かで日本を打ち負かしたのはいつか。彼らは
何百万台もの単位で、日本製の自動車を送ってくる。それに対し
て我々はどうするのか?東京でシボレーの車を最後に見たのはい
つか?東京には存在しない。いいか?彼らは常に我々を打ち負か
す。我々が国境でメキシコを打ち負かすのはいつか。彼らは我々
を嘲る。我々の馬鹿さを嘲る。そして今彼らは我々を経済的に叩
きのめしている。本当だぜ、彼らは我々の友好国ではない。彼ら
は我々を経済的に叩きのめしている。(中略)
私は、南側の国境(メキシコとの国境〉に万里の長城を建設す
る。私よりも立派に建設する人は誰もいないことは確かだ。あま
りお金をかけないで建設し、メキシコにその費用を払わせる。
──間高一希著
『アメリカはなぜトランプを選んだか』/文藝春秋
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トランプ氏は、出馬会見やその後の演説において、米国が直面
しているトラブルの核心に触れているのです。国の借金、国境問
題、貧困問題、医療問題、核兵器、貿易問題、コモン・コアを含
む教育問題などに厳しく言及したのです。
ところで「コモン・コア」とは何でしょうか。日本ではあまり
取り上げられないので、解説します。
米国では、合衆国憲法修正第10条によって、公教育に関する
権限は洲に委ねられているのですが、2009年頃から各州共通
のカリキュラム(全米共通学力基準)を作ろうという動きが出て
きているのです。これがコモン・コアです。
実は、このコモン・コアを積極的に推し進めているのが、ジェ
フ・ブッシュ候補なのです。彼は教育政策には一家言を持ってい
るのです。これに対して、トランプ氏は次のように全面的に批判
しています。単にジェフ・ブッシュを牽制したかっただけなので
しょうか。
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コモン・コアを終わらせよ。それは最悪である。ブッシュは、
コモン・コアを全面的に支持している。どうやってブッシュが指
名を勝ち取るのかはわからない。ブッシュは移民についても弱腰
だ。一体どういうつもりで、この男に票を入れることができるの
か。教育はローカル(洲別)であるべきだ。
──間高一希著の前掲書より
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早々に消えるとみられていたトランプ候補が強い存在感を見せ
つけたのが、2015年8月6日にFOXテレビにより開催され
た第1回共和党候補者討論会においてです。これは、17人の候
補者のうち、支持率上位10人しか参加できない決まりになって
います。
そのときの支持率第1位はトランプ氏で、ブッシュ氏が第2位
であり、ウォーカー氏は第3位だったのです。そのときのトラン
プ氏の際立った発言は、次の質問に対する回答だったのです。
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もし、候補者指名を受けられなかったら、指名された候補を
応援するか。第3党から出馬しないと誓えるか。
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これに対して9名は「イエス」と答えたのに対し、トランプ氏
だけは「答えられない」と返答しています。それだけではない。
討論会の翌日、討論会の司会をしたミーガン・ケリー氏への女性
蔑視ともとれる発言までしているのです。(巻末参照)
この討論会の少し前から、トランプ氏は独走状態に入っていた
のです。トランプ氏がいくら暴言を吐いても、支持率は一時的に
落ちるものの、すぐ復活する。この不可解な状況について、既出
の会田弘継氏は自著で次のように解説しています。
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これはまさにわけのわからない現象だった。ヒドい発言が飛び
出せば飛び出すほど、人気が高まる。TV討論会に端を発した女
性蔑視とも取れる発言のときはさすがに一時落ち込んだとはいえ
支持率はすぐに回復する。11月、パリで大規模なテロ事件が起
こつたころには、トランプはイスラム教徒入国を禁止せよとます
ます言い募ったが、それでも支持率は落ちなかった。もはや独走
状態となり、ルビオとクルーズがかろうじて追いかけるという構
図になった。一体これはなぜなのか。国際情勢がその理由ではな
い。あくまで内在的な、アメリカの国内的な要因がこの現象を招
く主たる原因とみていいだろう。外交政策として一貫して彼が主
張している、日本や中国への非難、保護主義貿易、排外的な移民
政策などが支持される理由も、アメリカ国内にあると考えるべき
だ。「我々は現実的・具体的な目的のない戦いに米国将兵を送り
込むことはできない」という著書のことばが彼の姿勢を端的に示
している。 ──会田弘継著/左右社
『トランプ現象とアメリカ保守思想/崩れ落ちる理想国家』
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そして、2016年に入り、予備選が開始されたのです。その
とき、既にトランプ氏は有力候補になっていたのです。
──[孤立主義化する米国/040]
≪画像および関連情報≫
●ドナルド・トランプ候補、ディベート司会者に逆ギレ?!
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アメリカは2016年の大統領選に向け、早くもオーバー
ヒート状態です。投票日は来年11月ですが、8月6日に共
和党候補者によるディベートの第1回戦が行われ、上を下へ
の大騒動となりました。理由は17人もいる共和党候補者の
一人、不動産王で大富豪のドナルド・トランプです。ディベ
ートの司会者であるFOXチャンネルのアンカーウーマン、
ミーガン・ケリーに過去の女性蔑視発言について容赦なく問
い詰められ、逆ギレしたのです。トランプはディベートの翌
日、ケリーの態度は“That was really unfair.” (とても
不公平だった)とコメントしたばかりか、なんと「ケリーは
生理中で機嫌が悪かった」と解釈できる発言を口にし、さら
にはケリーからの謝罪すら要求。この “blood”発言はメデ
ィアによって大きく取り上げられ、大統領選が政治ではなく
まるで“サーカス”のようだとも言われました。ケリー自身
は「私は公平に仕事を続けていきます」とコメントし、トラ
ンプへの謝罪を断りました。
この件、最終的にどうなったかと言えば、ケリーが突如と
して2週間の“休暇”を取って番組から消え、なんとも後味
の悪いエンディングとなったのでした。(復帰後のケリーに
よるトランプ報道に期待が募りますね)。
http://bit.ly/2bLQXzQ
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第1回共和党候補者討論会でのトランプ候補