2016年08月26日

●「クリントン氏支持率で大差を保つ」(EJ第4348号)

 米国大統領選が行われる11月8日まで約2ヶ月間になってい
ますが、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・ク
リントン氏の選挙運動の状況はどうなっているでしょうか。
 2016年8月24日の時点では、クリントン氏は支持率にお
いてトランプ氏に大きな差をつけており、クリントン陣営として
は、ほぼ勝利は間違いないとして、8月16日には政権移行チー
ムを立ち上げ、メンバーを発表しています。
 政権移行チームは、来年1月の大統領就任までに前政権から業
務を引き継ぎ、次期政権の骨格を固める仕事をします。多くの場
合、この政権移行チームがそのままホワイトハウス高官などに就
任するケースが多いのです。
 これに対してトランプ陣営では、政権移行チームの責任者とし
てニュージャージー州のクリス・クリスティー知事を充てると発
表しているだけです。トランプ陣営は政権移行チームどころか、
この時期になって、陣営の最高責任者を保守系サイト「ブライト
バート・ニュース」の会長、スティーブン・バノン氏を任命する
テコ入れを行っています。
 このスティーブン・バノン会長は、「米国の最も危険な政治職
人」といわれる人物であり、トランプ氏が息子が戦死したイスラ
ム教徒を批判して共和党内からも非難を受けたときでもバノン氏
のサイトでは「トランプ氏の主張は正しい」とする記事を載せて
いたのです。バノン氏が運営する「ブライトバート・ニュース」
について朝日新聞は次のように紹介しています。
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 「ブライトバート・ニュース」とは、保守的な姿勢やエスタブ
リッシュメント(既成勢力)への反発を打ち出し、リベラル系の
政治団体や政治家のスキャンダルを積極的に扱ってきたが、掲載
した動画が「相手が都合悪いように、悪意ある編集をしている」
と指摘されるなどの問題も起きた。(中略)
 ヘイトクライム(憎悪犯罪)などに詳しい「南部貧困法律セン
ター」は、今年4月、「イスラム教徒や移民に対する、明らかに
差別的な記事が掲載されるようになった」という報告書を公表。
「白人が被害に遭う、黒人による犯罪が米国内で急増している」
といった、陰謀説を助長する記事も多い、と述べた。
           ──2016年8月19日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 クリントン氏はトランプ氏に、どのくらいの差を付けているの
でしょうか。接戦州とみられているバージニア洲を例にとって分
析してみることにします。
 8月7日〜17日に行われたロアノーク大学の世論調査による
と、クリントン氏は、トランプ氏に対して16ポイントの大幅な
差をつけています。
─────────────────────────────
     ドナルド・トランプ ・・・・・ 32%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 48%
─────────────────────────────
 支持率で2ケタの差は非常に大きなリードであり、8月の下旬
時点でこの差がついていることは、通常であれば2ヶ月で挽回す
ることは困難です。
 ロアノーク大学の調査だけではなく、キニピアック大学やワシ
ントンポスト紙の調査でも、クリントン氏はトランプ氏に10%
以上の差をつけています。それに加えて、無党派層においては、
20%近い大差をつけているのです。
─────────────────────────────
               A    B    C
   ドナルド・トランプ 38%  36%  25%
  ヒラリー・クリントン 50%  51%  43%
             A:キニピアック大学の調査
             B:米紙ワシントン・ポスト
             C:       無党派層
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 もうひとつ重要な要素として「党員の支持」があります。これ
に関しては、次の調査結果があります。
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     ドナルド・トランプ ・・・・・ 78%
    ヒラリー・クリントン ・・・・・ 91%
─────────────────────────────
 トランプ氏の78%の支持率はきわめて低い支持率です。なぜ
なら、クリントン支持を打ち出す共和党有力者がここにきて相次
いでいるからです。これに乗じてクリントン陣営は、共和党員や
無党派の有権者に「造反」を呼びかける専門チームを立ち上げて
造反者を増やそうとしています。
─────────────────────────────
 クリントン陣営は8月10日、新たにネグロポンテ元国家情報
長官やグティエレス元商務長官などから支持を取りつけたとして
過去の共和党政権時の閣僚3人や共和党の現職連邦議会議員6人
を含む50人の「支持者」リストを発表した。
 陣営のボデスタ選挙対策本部長は「クリントン氏への超党派の
支持は、彼女が党派を超えて大きな課題に取り組める証拠だ」と
述べ、共和党員や無党派の有権者に支持を呼びかけた。現職の連
邦議会議員らが敵対する党の候補へ支持を表明するのは異例だ。
           ──2016年8月12日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 しかし、これでクリントン氏の勝利が確定したわけではないの
です。トランプ陣営としては、ここまでくると、正攻法では勝ち
目はないので、クリントン氏の最大のウィークポイントを衝く戦
術をとる可能性が濃厚です。トランプ陣営が「ブライトバート・
ニュース」のスティーブン・バノン会長を陣営の最高責任者に決
めたのはそのためであろうと考えられます。
            ──[孤立主義化する米国/033]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ氏の異常性格に不安/撤退も話題
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   11月の米大統領選を前に、共和党候補トランプ氏は「性
  格異常」でないかとの不安が持ち上がっている。こうなると
  大統領として「核ボタン」を押すかも知れない最高権力者に
  不適格である。事態はここまで深刻に受け止められている。
  この見方は、特定のメディアだけに登場しているのでなく、
  複数のメディアで危惧されるに至った。
   トランプ氏が予備選で見せた他候補への批判や政策を巡る
  主張において、異常な攻撃や主張を展開している。そのたび
  に、米共和党の良識派は一斉に眉をひそめ、トランプ氏から
  遠ざかる姿勢を見せた。だが、共和党候補に決定して以来、
  「眉をひそめる」どころか、米国の運命を誤らせる。そうい
  う疑念が深まってきた。最近では共和党員の2割が「撤退」
  を希望する、という世論調査まで現れている(『ロイター』
  8月10日付)。
   問題は、彼の性格がわずかなことにも過剰な反応を見せ、
  常軌を逸した反応が見られることだ。このままでは、支持率
  は悪化したままで、トランプ氏自身がやる気をなくして「候
  補辞退」の挙に出なくもない。共和党内では、「代替候補者
  問題」まで秘かに話し合われる始末だ。もはや、「トランプ
  後」が共和党の話題になるっている。
                  http://amba.to/2bhWyuL
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クリントンVSトランプ.jpg
クリントンVSトランプ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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