2016年08月23日

●「なぜビル・クリントンは勝てたか」(EJ第4345号)

 バルセロナオリンピックの開かれた1992年の米国大統領選
挙は、湾岸戦争に勝利した現職の大統領ジョージ・H・W・ブッ
シュ氏と、彗星の如くあらわれた無名のビル・クリントン元アー
カンソー洲知事との一騎打ちになったのです。
 予備選では、ブッシュ候補は余裕の戦いであったのです。しか
し、本選挙になると、状況が一変します。メディアが一斉にブッ
シュ候補に対して牙を剥いたからです。それを明瞭に示すデータ
があります。
 1992年の大統領選において、マス・メディアがブッシュ候
補に対して不利な報道をしたことは、「ワシントン・ポスト紙」
のオンブズマン、ジョアン・バード女史の調査――選挙前の73
日間の調査によって明らかになっています。
─────────────────────────────
   ≪対ブッシュ候補≫
     有利な記事 ・・・・・・・・・ 175本
     不利な記事 ・・・・・・・・・ 184本
   ≪対クリントン候補≫
     有利な記事 ・・・・・・・・・ 195本
     不利な記事 ・・・・・・・・・  52本
─────────────────────────────
 これを見ると、確かにクリントン候補が有利になっています。
なぜ、このようなことが行われたというと、次の2つが理由が考
えられます。
─────────────────────────────
 1.ブッシュ大統領が反シオニストの立場を鮮明にしたこと
 2.ロッフェラー家がクリントン候補に肩入れしていること
─────────────────────────────
 「1」の理由について述べます。
 ブッシュ大統領は、なんとか中東和平交渉を成功させたいと努
力していたのですが、イスラエルが強硬に反対し、行き詰ってし
まったのです。そのため、1991年9月、ブッシュ大統領は、
イスラエルへの100億ドル信用保証を米国政府が行うことを拒
否したのです。つまり、ブッシュ大統領は反シオニストの立場を
鮮明にしたわけです。なお、「シオニスト」については、巻末の
「画像および関連情報」をご覧ください。
 本来であれば、次の年に大統領選挙を控えているブッシュ大統
領としては、あえて反シオニスト的行動を取ることはリスクが大
きいのですが、湾岸戦争に勝利しており、選挙には相当の自信を
持っていたので、反シオニストの立場をとったのです。
 しかし、危機感を抱いたシオニスト派は、何としてもブッシュ
再選は阻止しなければならないと考えたわけです。そのためには
不本意ではあるけれども、ブッシュ氏の対立候補である民主党の
無名の大統領候補、ビル・クリントン氏に乗らざるを得なかった
のです。「敵の敵は味方」の論理です。
 そこで、影響力のあるロスチャイルド系のメディアを使って、
ブッシュ大統領に対して、一大ネガティブ・キャンペーンを展開
したのです。米国のマスメディアは、ほとんど英ロスチャイルド
系で、後はロックフェラー系です。1992年の選挙のさいには
「2」で述べる理由によって、ロックフェラー系のメディアも、
ブッシュ大統領叩きに参戦したのです。
─────────────────────────────
           ≪ロックフェラー財閥系≫
             NBCテレビ T V
     ウォールストリートジャーナル 新 聞
   USニューズ&ワールド・リポート 週刊誌
           ≪ロスチャイルド財閥系≫
                CNN T V
             ABCテレビ T V
             CBSテレビ T V
        ニューヨーク・タイムズ 新 聞
              ワシントン・ポスト
           ニューズウィーク 週刊誌
─────────────────────────────
 「2」の理由について述べます。
 ロックフェラー財閥は、すべての米国政権に何らかのかたちで
関わっています。場合によっては、政権の換骨奪胎、すなわち、
政権乗っ取りまで行います。クリントン政権のときは、まさにそ
れが行われたのです。
 1992年の大統領選挙のとき、なぜ、デイヴィッド・ロック
フェラー氏(当時チェース・マンハッタン銀行の頭取で、ロック
フェラーグループの総帥)が、アーカンソー州知事のビル・クリ
ントン氏を大統領選に担ぎ出したのかについては、2つの理由が
あるといえます。
 1つは、ジョン・D・ロックフェラー4世(78歳/通称ジェ
イ)が1992年の大統領選に民主党から出馬したのですが、そ
れを潰すためです。なぜ、潰すのでしょうか。これは副島隆彦氏
によると、ロックフェラー家のお家騒動によるものです。これに
ついては、改めて述べますが、2006年のEJで書いているの
で、参照してください。
─────────────────────────────
 2006年5月15日付、EJ第1834号
 「クリントン前大統領の正体を探る」 http://bit.ly/2bBoDxY
─────────────────────────────
 2つは、この大統領選でブッシュ大統領を破ってクリントン政
権をつくり、政権の換骨奪胎を行うことです。彼らはかつてのカ
ーター政権のときと同じ戦略で、民主党のクリントン政権を事実
上乗っ取ることを考えたのです。
 そして、ロックフェラーグループは、狙い通り、クリントン政
権の換骨奪胎を実現しています。
            ──[孤立主義化する米国/030]

≪画像および関連情報≫
 ●世界を支配する二大財閥/EJ第1828号
  ───────────────────────────
   このような米国の保守本流の財界で、最も力があり、かつ
  著名な財閥がロックフェラー財閥なのです。特徴としては、
  南ドイツ系ですが、ユダヤ人ではなく、プロテスタントであ
  り、カトリックではないのです。ちなみに、大統領を出した
  ルーズベルト家は、南ドイツ出身のプロテスタントのファミ
  リーなのです。
   このロックフェラーに対抗しているのは、ユダヤ系のロス
  チャイルド財閥です。ロスチャイルドは、ドイツのフランク
  フルト出身のユダヤ財閥ですが、その中にあって一番力が強
  いのは英国のロスチャイルド家なのです。ロスチャイルド財
  閥は、シオニスト系財閥の代表というべき存在です。
   ここで知っておくべきことがあります。それは、「シオニ
  ズム」と「シオニスト」という言葉の意味です。「シオニズ
  ム」――これは、ユダヤ人の間に起きた祖国「イスラエル」
  建国運動のことなのです。1948年にイスラエルは、建国
  されていますが、その後はイスラエルを拡張し、アラブ諸国
  に対して強硬主義を取ることを支持する主義をシオニズムと
  いい、それを行う人をシオニストというのです。注意すべき
  ことは、すべてのユダヤ人イコールシオニストではないとい
  うことです。──2006年5月2日付、EJ第1828号
                   http://bit.ly/2bEs0EK
  ───────────────────────────

ジェイ・ロックフェラー氏.jpg
ジェイ・ロックフェラー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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