挙は、湾岸戦争に勝利した現職の大統領ジョージ・H・W・ブッ
シュ氏と、彗星の如くあらわれた無名のビル・クリントン元アー
カンソー洲知事との一騎打ちになったのです。
予備選では、ブッシュ候補は余裕の戦いであったのです。しか
し、本選挙になると、状況が一変します。メディアが一斉にブッ
シュ候補に対して牙を剥いたからです。それを明瞭に示すデータ
があります。
1992年の大統領選において、マス・メディアがブッシュ候
補に対して不利な報道をしたことは、「ワシントン・ポスト紙」
のオンブズマン、ジョアン・バード女史の調査――選挙前の73
日間の調査によって明らかになっています。
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≪対ブッシュ候補≫
有利な記事 ・・・・・・・・・ 175本
不利な記事 ・・・・・・・・・ 184本
≪対クリントン候補≫
有利な記事 ・・・・・・・・・ 195本
不利な記事 ・・・・・・・・・ 52本
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これを見ると、確かにクリントン候補が有利になっています。
なぜ、このようなことが行われたというと、次の2つが理由が考
えられます。
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1.ブッシュ大統領が反シオニストの立場を鮮明にしたこと
2.ロッフェラー家がクリントン候補に肩入れしていること
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「1」の理由について述べます。
ブッシュ大統領は、なんとか中東和平交渉を成功させたいと努
力していたのですが、イスラエルが強硬に反対し、行き詰ってし
まったのです。そのため、1991年9月、ブッシュ大統領は、
イスラエルへの100億ドル信用保証を米国政府が行うことを拒
否したのです。つまり、ブッシュ大統領は反シオニストの立場を
鮮明にしたわけです。なお、「シオニスト」については、巻末の
「画像および関連情報」をご覧ください。
本来であれば、次の年に大統領選挙を控えているブッシュ大統
領としては、あえて反シオニスト的行動を取ることはリスクが大
きいのですが、湾岸戦争に勝利しており、選挙には相当の自信を
持っていたので、反シオニストの立場をとったのです。
しかし、危機感を抱いたシオニスト派は、何としてもブッシュ
再選は阻止しなければならないと考えたわけです。そのためには
不本意ではあるけれども、ブッシュ氏の対立候補である民主党の
無名の大統領候補、ビル・クリントン氏に乗らざるを得なかった
のです。「敵の敵は味方」の論理です。
そこで、影響力のあるロスチャイルド系のメディアを使って、
ブッシュ大統領に対して、一大ネガティブ・キャンペーンを展開
したのです。米国のマスメディアは、ほとんど英ロスチャイルド
系で、後はロックフェラー系です。1992年の選挙のさいには
「2」で述べる理由によって、ロックフェラー系のメディアも、
ブッシュ大統領叩きに参戦したのです。
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≪ロックフェラー財閥系≫
NBCテレビ T V
ウォールストリートジャーナル 新 聞
USニューズ&ワールド・リポート 週刊誌
≪ロスチャイルド財閥系≫
CNN T V
ABCテレビ T V
CBSテレビ T V
ニューヨーク・タイムズ 新 聞
ワシントン・ポスト
ニューズウィーク 週刊誌
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「2」の理由について述べます。
ロックフェラー財閥は、すべての米国政権に何らかのかたちで
関わっています。場合によっては、政権の換骨奪胎、すなわち、
政権乗っ取りまで行います。クリントン政権のときは、まさにそ
れが行われたのです。
1992年の大統領選挙のとき、なぜ、デイヴィッド・ロック
フェラー氏(当時チェース・マンハッタン銀行の頭取で、ロック
フェラーグループの総帥)が、アーカンソー州知事のビル・クリ
ントン氏を大統領選に担ぎ出したのかについては、2つの理由が
あるといえます。
1つは、ジョン・D・ロックフェラー4世(78歳/通称ジェ
イ)が1992年の大統領選に民主党から出馬したのですが、そ
れを潰すためです。なぜ、潰すのでしょうか。これは副島隆彦氏
によると、ロックフェラー家のお家騒動によるものです。これに
ついては、改めて述べますが、2006年のEJで書いているの
で、参照してください。
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2006年5月15日付、EJ第1834号
「クリントン前大統領の正体を探る」 http://bit.ly/2bBoDxY
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2つは、この大統領選でブッシュ大統領を破ってクリントン政
権をつくり、政権の換骨奪胎を行うことです。彼らはかつてのカ
ーター政権のときと同じ戦略で、民主党のクリントン政権を事実
上乗っ取ることを考えたのです。
そして、ロックフェラーグループは、狙い通り、クリントン政
権の換骨奪胎を実現しています。
──[孤立主義化する米国/030]
≪画像および関連情報≫
●世界を支配する二大財閥/EJ第1828号
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このような米国の保守本流の財界で、最も力があり、かつ
著名な財閥がロックフェラー財閥なのです。特徴としては、
南ドイツ系ですが、ユダヤ人ではなく、プロテスタントであ
り、カトリックではないのです。ちなみに、大統領を出した
ルーズベルト家は、南ドイツ出身のプロテスタントのファミ
リーなのです。
このロックフェラーに対抗しているのは、ユダヤ系のロス
チャイルド財閥です。ロスチャイルドは、ドイツのフランク
フルト出身のユダヤ財閥ですが、その中にあって一番力が強
いのは英国のロスチャイルド家なのです。ロスチャイルド財
閥は、シオニスト系財閥の代表というべき存在です。
ここで知っておくべきことがあります。それは、「シオニ
ズム」と「シオニスト」という言葉の意味です。「シオニズ
ム」――これは、ユダヤ人の間に起きた祖国「イスラエル」
建国運動のことなのです。1948年にイスラエルは、建国
されていますが、その後はイスラエルを拡張し、アラブ諸国
に対して強硬主義を取ることを支持する主義をシオニズムと
いい、それを行う人をシオニストというのです。注意すべき
ことは、すべてのユダヤ人イコールシオニストではないとい
うことです。──2006年5月2日付、EJ第1828号
http://bit.ly/2bEs0EK
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ジェイ・ロックフェラー氏