うです。8月5日時点での支持率は次のようになっています。
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民主党/ヒラリー・クリントン支持 ・・・・ 47%
共和党/ ドナルド・トランプ支持 ・・・・ 38%
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この時点での支持率の差は9ポイントですが、2012年、バ
ラク・オバマ氏と争って敗れたミット・ロムニー氏でさえ、支持
率で、9%の差はついたことはないのです。
地域別にみると、支持率はどうなっているでしょうか。クリン
トン氏の支持率からトランプ氏の支持率を引くと、次のようにな
っています。つまり、「+」であれば、クリントン氏が上回って
いるということになります。
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北西部 ・・・・ +14%
中西部 ・・・・ +15%
⇒ 南 部 ・・・・ +3%
西 部 ・・・・ +12%
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ここで注目すべきは南部の「+3%」です。これまで南部では
民主党候補の支持率が共和党候補のそれを上回ったのは20年ぶ
りのことです。居住地域でみると、クリントン氏が都市部で36
%リードしていますが、都市部近郊ではトランプ氏はクリントン
氏を1%、農村部では23%リードしています。
年齢別の支持率はどうなっているでしょうか。若者に弱いとい
われていたはずのクリントン氏は次のようになっています。
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18歳〜34歳 ・・・・ +12%
35歳〜49歳 ・・・・ +4%
50歳〜64歳 ・・・・ +16%
65歳以上 ・・・・ −3%
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米国の大統領選挙のさいには、共和党と民主党の間で勝利政党
が変動する洲があります。これらの洲を「揺れる洲」という意味
の「スィング・ステート」といわれます。日本語では「激戦州」
ということになります。
スィング・ステートは、12洲ほどありますが、そのうちの4
州での支持率が出ています。
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1. フロリダ洲 ・・・・ +6%
2. ペンシルベニア洲 ・・・・ +11%
3. ミシガン州 ・・・・ +9%
4.ニューハンプシャー州 ・・・・ +15%
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工業地帯を抱えるペンシルベニア洲とミシガン州での勝敗を分
けるには、そこに住むブルーカラー層の票の取り合いになるので
すが、上記の通り、いずれも支持率では、クリントン氏が大きく
リードしているのが現状です。
以上の分析は、2016年8月10日付の『日経ビジネスオン
ライン』に掲載の高濱賛氏の記事に基づいていますが、同年8月
3日付の『ウォール・ストリート・ジャーナル』でも、同様の分
析結果を載せています。
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米CNNテレビが1日発表した調査から、自分を保守派だとす
る有権者の25%近くがトランプ氏でなくクリントン氏を支持す
るだろうと述べたことが分かった。この調査全体ではクリントン
氏が7ポイントのリードを示している。共和党の牙城であるユタ
州とジョージア州でも、最近の調査では支持率が拮抗している。
ユタ州での民主党の強気姿勢を示す例として、来週にはビル・ク
リントン元大統領が妻に代わって同州で選挙活動をする予定だ。
両党の全国大会が終了した後の世論調査を分析したところ、ト
ランプ氏が白人労働者階級を中心に新たな支持層を共和党に呼び
込む一方、大卒の白人有権者からの支持を失っていることが示唆
された。大卒の白人有権者は、これまでの共和党の勝利に重要な
役割を果たしてきた層だ。 http://on.wsj.com/2atZrb6
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8月8日にトランプ氏は、ノースカロライナ州での演説におい
てダメ押しとも言うべき、深刻な失言をしています。
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8月8日、ノースカロライナ州ウィルミントンで行った演説で
トランプは、最高裁をはじめとする判事をヒラリー・クリントン
が指名することに対する憂慮の意を表明した。「もしヒラリー・
クリントン氏が判事を指名する立場になったら、我々には為す術
がなくなる。(武器携帯の権利を定めた)憲法修正第2条を擁護
する人々には、それを止める手段があるかもしれない。私にはよ
くわからないが・・・」。 http://bit.ly/2aTDQwe
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トランプ氏は言葉を濁しているが、この発言はこともあろうに
共和党の大統領候補者が、憲法修正第2条擁護派、すなわち銃規
制反対派の人たちに対し、政敵(クリントン氏および彼女が指名
するであろう判事)への行動(暴力ないし暗殺?)を促している
ととられても、仕方のないものであるといえます。
ここまでくると、トランプ氏への大統領候補としての資質には
大きな疑問符がつきます。この発言が出る前の8月5日時点での
統計に基づいて選挙情勢を予測する「ファイブ・サーティ・エイ
ト」は、クリントン氏は選挙人346・7人を確保しているのに
対し、トランプ氏は191・0人にとどまっていると予測してい
ます。そして、クリントン氏がこの大統領選挙で勝利する確率は
81・5%であるとしています。果たして本当にその通りになる
のでしょうか。 ──[孤立主義化する米国/025]
≪画像および関連情報≫
●トランプ、ヒラリー暗殺を示唆する問題発言でテロを扇動
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今回の騒動(ノースカロライナ州でのトランプ氏の発言)
では、クリントン側の肩を持たざるをえない。トランプの発
言は、銃の所持を支持する特定のグループが、クリントンや
彼女の指名する判事たちに対して何か事を起こすように仕向
けている。そのグループができることとは?銃の使用に他な
らない。
「クリントンや判事たちに対して武器を取れ」というトラ
ンプの発言を、多くの人々は無意味な発言として受け止める
だろう。ほとんどの人々はジョークとして受け流すだろうが
中にはトランプ氏の発言を真剣に受け止め、行動を起こす可
能性を探る人も必ずいるはずである。つまりトランプは、テ
ロ行為を扇動したのである。法にも引っかからない暗示的な
“stochastic terrorism/暗示的なテロの扇動”については
この10年以上に渡り学会でたびたび論議されてきた。その
言葉が今回はぴったり当てはまる。暗示的なテロの扇動につ
いては、数年前にとあるブロガーが取り上げ、「言葉やその
他の方法で不特定の人々を扇動し、暴力やテロ行為を起こす
ように仕向けること。統計学的に予測することはできるが、
個別には予測不可能」と定義している。
http://bit.ly/2aTvUh3
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トランプ候補のノースカロライナ州での演説