3人の創設者、米国のルーズベルト、英国のチャーチル、ソ連の
スターリンのうち、ルーズベルトがスターリンに親近感をおぼえ
たせいか拒否権などでスターリンに大幅な譲歩を重ね、1945
年4月12日に病死してしまうのです。
1945年10月24日、加盟国の半数以上の国連憲章の批准
が終わり、国連は正式に発足したのです。既に8月には日本が無
条件降伏し、長く苦しい世界大戦が終わり、これからは国連の安
全保障システムによる平和な時代が訪れると世界中が期待したの
です。しかし、国連発足1年も経たないうちに、その期待は裏切
られることになります。
それは、米国とソ連という超大国とその陣営の対立による東西
冷戦が激化したためです。そのために西側陣営はNATO、東側
陣営はWTOという東西両陣営の軍事同盟が対峙するという平和
どころか、一触即発の最悪の事態になってしまったのです。
その国連に対して、フランスの国際政治学者のモーリス・ベル
トラン氏は、次のように国連を皮肉ったのです。
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国連は紛争を解決する平和の守護者ではなく、「芝居の舞台」
として機能するようになった。 ──モーリス・ベルトラン
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「芝居の舞台」とはどういう意味でしょうか。これについて英
国の国連代表団の高官で、国連の歴史研究家のエバン・ルアード
氏は、次のように述べています。
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1945年から55年までの国連は失敗に終わった。大多数の
加盟国は国連を大国やその他の国が紛争を解決するための場所と
みなしていなかった。国連はむしろ公然と議論し、反対側と公的
に非難し、決議案を示し、世論を一定方向へ扇動する場とみてい
た。国連は平和を模索する場というよりは戦場であり、互いを理
解しあう場というよりは、互いをだますための場であり、和解よ
りは対立のための道具として認識されるようになった。1945
年からの10年間、国連は冷戦の一手段にすぎなくなった。国連
は東側諸国にとって、自分の意見を世界に宣伝するための場だっ
た。西側諸国にとって国連は多数票を獲得し、世界が自分たちの
側についていることを示せる、という場となった」。
──古森義久著/『国連幻想』/産経新聞社刊
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つまり、国連の紛争解決の機能は、拒否権などによって最初か
ら有名無実化し、政治プロパガンダを演ずる場所となり、その意
味において、「芝居の舞台」といわれるのです。
ここまで述べてきたように、国連の構想は第二次世界大戦中に
企画されています。したがって、第二次世界大戦の勝者が戦後の
国際秩序を統治するためのメカニズムとして意図されていたので
す。そのため、その勝者は、安全保障理事会の常任理事国として
拒否権という特権を与えられることになったのです。
それでは「勝者の条件」とは何なのでしょうか。
「枢軸国」という言葉があります。これは、第二次世界大戦で
のドイツ・イタリア・日本の日独伊三国同盟を中心とした諸国の
ことをいうのです。したがって、その枢軸国と戦った連合国が勝
者ということになります。
しかし、連合国といっても、第二次世界大戦における戦闘で莫
大な犠牲を払い、枢軸国を破った国こそ真の勝者です。そういう
意味では、米英ソの3ヶ国ということになります。フランスと中
国(中華民国)は勝者ではないのです。ソ連と英国は、ドイツと
戦って勝利しており、米国は日本に勝利しているのに対し、フラ
ンスはドイツに、中国は日本に破れているからです。
その証拠として、終戦後枢軸国側への要求や戦後への構想を決
める重要会議では、フランスと中国は外されています。テヘラン
会議やヤルタ会談は、米英ソの3大国主導で決められています。
ということは、米英ソこそ枢軸国に対する勝者であり、3人の警
察官だったということになります。
それではフランスはどうだったのでしょうか。
フランスは戦争ではドイツに破れて降伏し、全土を制圧され、
親ナチスのビシー政権を誕生させています。ドイツへの抵抗勢力
としては、ドゴール将軍が英国において「国民解放戦線」を立ち
上げていますが、これに関して米国もソ連もこの亡命政権風の組
織を政府としては認めておらず、フランスに対してきわめて冷淡
だったといえます。
それらの勝者というより敗者である中国を米国が、フランスに
関しては英国が自国の思惑で、枢軸国への勝者として安全保障理
事会の常任理事国の特権を与えているのです。これを認めたとこ
ろに国連の深刻なひずみが存在するといってもよいのです。
それから70年以上を経た現在でも、これらの5大国は常任理
事国に名を連ねています。しかも、このうちソ連はロシアとなり
中国は中華民国から中華人民共和国に変わったにもかかわらず、
依然として常任理事国の地位を保っているのです。これは、きわ
めて奇異なことです。これら5ヶ国は真に世界の平和を維持する
大国としての務めを本当に果たしているとはいえないからです。
国連予算の分担率を見ると、2016年は次のようになってい
ます。常任理事国でない日本とドイツが5位内に入っています。
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分担率 分担金額(百万ドル)
アメリカ 22% 594
日本 10% 237
中国 8% 194
ドイツ 6% 156
フランス 5% 119
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──[孤立主義化する米国/008]
≪画像および関連情報≫
●「戦勝5ヶ国の絶対権利」は永久不滅なのか
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フランスは2001年、国連安全保障理事会の常任理事国
(米英仏ロ中)は、大量虐殺のような犯罪行為に歯止めを掛
ける事案に関しては拒否権の行使を控えるべきだという提案
を持ち出した。国連創設70周年記念を目前にした現在、オ
ランド大統領はこの案を再び積極的に追求し始めている。は
たして、実現は可能だろうか。
当然、ロシアと中国が難色を示すのは想像にかたくない。
ロシアは旧ソ連時代を合わせて1946年以降、実に100
回以上の拒否権行使を行っている。2011年以降は4回の
拒否権行使を行い、シリアにおける虐殺行為に歯止めをかけ
るための決議を妨害している。
拒否権行使が約80回に上る米国も、この件に関しては熱
心さを欠いている。フランス案を支持しているのは英国のみ
である。拒否権を廃止もしくは制限するような、正式な定款
変更が実現することはありえないと、誰もが考えている。
しかしここ15年間でP5に対する国際的な圧力は高まっ
ている。2005年総会における「保護する責任」原則の全
会一致の採択以降、それはより一層顕著になっている。シリ
ア情勢に対する決議の妨害は激しい嫌悪を生み出しており、
最新の総計では、68ヶ国がさまざまな国連フォーラムでフ
ランス案に対する支持を表明していた。
http://bit.ly/1C5ilAT
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国連安全保障理事会