2016年07月12日

●「国防長官が3回代わるオバマ政権」(EJ第4317号)

 2013年11月23日のことです。中国国防省は突如として
東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定したことを発表し
たのです。FNNニュースを再現します。
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 中国国防省は23日、東シナ海上空に国籍不明機などが侵入し
た場合、戦闘機による緊急発進の対象となる「防空識別圏」を設
定したと発表した。
 これは、中国国防省が23日午前から施行するとして発表した
もので、沖縄の尖閣諸島が含まれ、日本が設定している防空識別
圏と広い範囲で重なっている。
 中国はまた、防空識別圏内を飛ぶ航空機に対し、飛行計画の提
出や国防省の指示に従うことなどを義務づけ、従わない場合は、
中国軍が防衛的緊急措置をとるとしている。
 中国メディアが22日、日本にも到達可能な国産のステルス無
人攻撃機の試験飛行に成功したと報じるなど、尖閣諸島をめぐる
緊張がさらに高まるのは必至となっている。
                   http://bit.ly/29EwxqF
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 周辺国への事前説明や協議は一切ないのです。それにこの空域
は、日本固有の領土である尖閣諸島上空を覆っているのです。日
本の主権に対する重大な挑戦です。しかも中国はこの空域を飛行
するすべての民間航空会社に対し、飛行計画の事前の提出を要請
したのです。これは国際法を完全に無視している無茶苦茶で、一
方的な要求です。
 日本政府は、この中国の一方的で、非常識な要求をはねつけて
います。当然のことです。しかし、オバマ政権は、米民間航空機
各社に飛行計画の提出を認めるような態度をとったのです。これ
に日本政府は仰天したのです。
 実はオバマ大統領は、同じ年の9月にシリア問題に絡んで次の
有名な発言をしていたのです。
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     アメリカはもはや世界の警察官ではない
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 中国は、このオバマ大統領の発言を受けて、防空識別圏(AD
IZ)を設定しても米国からクレームはこないと判断して、この
暴挙に及んだものと思われます。
 このオバマ大統領の対応を見て、チャック・ヘーゲル米国防長
官は直ちに軍に指示して“ある行動”をとらせたのです。“ある
行動”とは、中国の設定した東シナ海・防空識別圏に事前通告せ
ず、B52爆撃機を飛行させたことです。
 そのB52爆撃機の飛行は、2013年11月25日に行われ
ましたが、中国からの反応はゼロ。中国は自ら設定した防衛識別
圏を管理する能力を持っていなかったのです。ウォール・ストリ
ート・ジャーナルはこのニュースを次のように報道しています。
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【ワシントン】米政府当局者は26日、米戦略爆撃機「B52」
2機が中国当局に事前通報しないまま、東シナ海の尖閣諸島周辺
上空を飛行したと発表した。中国は最近同上空に防空識別圏(A
DIZ)を設定したと発表しており、米軍機による飛行は中国に
対する直接的な挑戦ないし異議申し立てを意味する。
 米当局者によれば、2機のB52はグアムの空軍基地から飛び
立ち、ワシントン時間の25日午後7時(日本時間26日午前9
時)ごろ中国が新たに設定した防空識別圏内に入った。
 米国防当局者はこれより先、米国は中国の新たな防空識別圏に
挑戦すると約束するとともに、中国が要求している飛行計画や無
線周波数、無線中継機情報の提出に従わない方針を明らかにして
いた。              http://on.wsj.com/29pLVFg
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 ヘーゲル国防長官は、この飛行についてオバマ大統領の了解を
とっていないのです。米軍としては、いつも行っている警戒飛行
活動の一環として行っており、軍の自主的判断に基づくものです
が、これによって中国に明確に「NO」を突き付けたのです。
 オバマ大統領と国防長官は、国防に関してまったく意見が合わ
ず次々と辞任し、現在の国防長官は4人目です。
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   ロバート・ゲイツ ・・ 2006年12月18日辞任
   レオン・パネッタ ・・ 2011年 7月 1日辞任
  チャック・ヘーゲル ・・ 2013年 2月27日辞任
 アシュトン・カーター ・・ 現職
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 辞任した各国防長官たちは、回顧録でオバマ大統領を批判して
います。ロバート・ゲイツ氏は「オバマ氏は自らに仕える司令官
を信頼せず、自らの戦略を信じていない」と痛烈に批判していま
す。ゲイツ氏はブッシュ政権から引き続き国防長官を務めており
大統領の考え方の違いに我慢がならなかったのでしょう。
 レオン・パネッタ氏は、クリントン政権時代のホワイトハウス
首席補佐官を務め、オバマ政権ではCIA長官も務めているので
ゲーツ氏よりも政権に好意的ですが、それでも「米国の力は大統
領の発言にかかっており、レッドラインを超えたと判断したら、
行動しないといけない」と戒めています。
 チャック・ヘーゲル氏は共和党出身ですが、ブッシュ政権での
イラク戦争に反対していたことを買われて国防長官に抜擢された
のですが、オバマ大統領のイスラム国政策を批判し、「オバマ政
権のシリア政策でトクするのはアサド政権だ」と批判し、国防長
官を辞任しています。
 このように、オバマ政権は歴代の国防長官にすべて批判されて
おり、それによって世界の国々のパワーバランスが大きく変わろ
うとしています。オバマ大統領率いる現在の米国政権は、明らか
に内向きになっているといわざるを得ないのです。
            ──[孤立主義化する米国/002]

≪画像および関連情報≫
 ●ゲーツ元国防長官が回顧録でオバマ大統領を批判
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  【ワシントン】ロバート・ゲーツ元米国防長官は近く発売さ
  れる回顧録の中で、アフガニスタン紛争をめぐるオバマ大統
  領の対応を鋭く批判した。回顧録は米軍の戦略にとって重要
  な時期に政権内部に生じていた軋轢についても明らかにして
  いる。(2014年当時)
   ブッシュ前大統領とオバマ大統領の両政権で国防長官を務
  めたゲーツ氏はこう記述している。オバマ大統領は自らが承
  認した戦略に不信感を抱き、戦闘から抜け出す方法を最も見
  つけたがり、自身が選んだ司令官に幻滅し、国防総省の政策
  を細かく管理しようと試み、ホワイトハウスの補佐官と大将
  が対立することになった、と。
   ゲーツ氏は2011年3月のホワイトハウスでの会議で、
  オバマ大統領がアフガニスタンのカルザイ大統領に対する不
  信感と同様に、現地で戦術を指揮する人物として自らが選ん
  だペトレイアス陸軍大将に対する不信感も強調したと述懐し
  ている。ゲーツ氏は「座りながらこう考えた。大統領は自分
  の指揮官を信頼していない。カルザイ大統領を嫌っている。
  自分の戦略を信じていないし、この戦争を他人事のようにと
  らえている」とし、「彼にとって(戦争から)抜け出すこと
  がすべてだ」と記している。だが、ゲーツ氏をいらつかせる
  原因となったのはオバマ大統領だけではない。同僚はゲーツ
  氏を冷静で礼儀正しい男性だと表現する。文官で無党派の同
  氏の立場を考えると、オバマ大統領に対するこうした厳しい
  評価はいっそう驚きだと指摘する。 http://bit.ly/29uKl5w
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中国が勝手に設定した防空識別圏を飛行するB52.jpg
中国が勝手に設定した防空識別圏を飛行するB52
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 孤立主義化する米国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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