国のEUからの離脱が決定しました。まさに青天の霹靂です。国
民投票という言葉は、いかにも民主主義的な響きがしますが、要
するに、多数決で決めたというに過ぎないのです。しかも僅差で
す。これで民意が反映されたとは思えません。大阪都構想の市民
投票の結果と同じです。
ところで、キャメロン首相は、なぜ国民投票というリスクの多
い方法を選んだのでしょうか。
ごく簡単にいうと、キャメロン首相は自身の政権(保守党)を
守るため、国民投票を約束せざるを得なかったのです。そうでな
いと、政権を維持できなかったからです。
背景としては、ギリシャに端を発した信用不安が広がったEU
では、各国が緊縮財政を余儀なくされ、それによる国民の不満は
増大していたのです。これが伏線にあります。
それに加えて、2004年にEUに加盟したポーランドなど東
ヨーロッパから、英国への移民が急増し、「職を奪われないか」
「EUに加盟して得られる利益よりも、負担ばかりが多くなるの
ではないか」などの不安が高まってきたのです。
こうした不満を背景に、英国独立党は「反EU」を掲げて支持
を伸ばし、保守党の支持層を切り崩す勢いを見せたのです。保守
党の中に少なからずいた反EUの議員は「EUからの離脱」を公
然と主張し、「国民投票を実施しなければ党首のクビをすげ替え
る」とキャメロン首相に迫ったのです。
キャメロン首相は、2013年1月、議会選挙で勝利して政権
の続投が決まれば、国民投票を実施すると公約して選挙に勝った
のです。キャメロン首相としては、国民投票をすれば残留派が勝
利し、独立党の勢いに歯止めをかけ、EU離脱派の議員を押さえ
込むことができると考えていたものと思われます。
しかし、EU離脱派の勢いは強く、キャメロン首相の思い通り
にはならなかったのです。英国国民の非常に多くの人がEUに対
して強い不満を抱いていたからです。
ところで、フランス国内でもEUからの離脱を望むナショナリ
ズム的な声が上がっており、EU崩壊の危機が高まりつつあるこ
とは確かです。それは、EUのシステム自体に多くの問題がある
ことを示しています。
2016年6月現在、EUの経済は多くのリスクをはらんでい
るといえます。とくに英国とフランスは、中国に接近し、経済的
な果実を得ようとしています。英国は、2015年10月には中
国の周近平国家主席を国賓として招き、経済的関係の強化を図ろ
うとしています。
一方、フランスでは、IMFに中国の人民元をSDR(特別引
出権)の構成通貨に入れるよう積極的に働きかけ、一部に異論は
あったものの、2015年12月9日にIMFはそれを正式に了
承しています。中国の経済に多くの不安が広がるなかで、IMF
のラガルド専務理事は積極的にそれを実現させたのです。
経済力に余裕のあるドイツでも中国傾斜は顕著であり、メルケ
ル首相などは何回も訪中している始末です。それにEU諸国は、
中国が主導するAIIBにも率先して加盟しています。とくにド
イツの加盟は、米国に対する裏切りそのものです。
これについて、ベンジャミン・フルフォード氏は、自著で次の
ように述べています。
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人民元のSDR入りを推進したのは、IMF専務理事のクリス
ティーヌ・ラガルドという元フランス財務大臣。彼女が2011
年、IMFの専務理事入りしたのは、やはり、同じ元フランス財
務省でIMF専務理事だったドミニク・ストロス=カーンが「失
脚」したためだが、このストロス=カーンもまた、基軸通貨をド
ルではなくSDRに切り替えようと提案した矢先に、「レイプ事
件」で逮捕、失脚した。その意味で言えば5年越しの悲願の達成
であったのだ。 ──ベンジャミン・フルフォード著
『99%の人類を奴隷にした「闇の支配者」最後の日々/
アメリカ内戦から世界大改変へ』/KKベストセラーズ
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フランスはEUを構成する主要国のひとつです。ギリシャ危機
をきっかけとして、スペイン、ポルトガル、イタリアなどの加盟
国の経済危機が相次いで表面化すると、フランスはドイツと共に
これらの国の国債を大量に抱え込むことになったのです。それら
はいずれも不良債権になる可能性が大なのです。実際に、この負
の財産が、世界第5位のフランスの財政にいま重くのしかかって
いるのです。
フランスの経済の現況について、「お金の学校」というサイト
では、次のように書いています。
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GDPというものがあります。日本語で言えば国内総生産で、
単純に説明するとある国の中で1年の間に作られた生産物やサー
ビスの金額を合計したものです。日本は現在、世界第3位の国内
総生産を誇っています。これは1位のアメリカ、2位の中国に次
ぐものです。第4位にはドイツが入り、そして第5位にはフラン
スが入ります。しかしフランスの経済がいよいよ危ない事になっ
ていると言われています。GDPでは世界5位に位置するフラン
スですが、ユーロを導入して以降その経済状態は常に不安定な状
態にあると言われ続けており、経済アナリスト会社などはもうフ
ランスの経済状態に使うネガティブな修飾詞がない状態だとまで
語っています。2014年5月には、フランスの鉱業・製造業が
ここ1年で3・7%も落ち込んだと発表され、さらにダメ押しを
するようにアナリスト達の調査によれば、「上向きになる兆しは
まったく見られない」と断言までされてしまいました。
http://bit.ly/28SKkap
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──[現代は陰謀論の時代/119]
≪画像および関連情報≫
●フランス最悪大統領の迷走が止まらない/支持率17%
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欧州連合(EU)の時限爆弾は、フランス」と2012年
11月にいみじくも指摘したのは英誌エコノミストだ。その
予想通り、「欧州の病人」とまで言われるようになったフラ
ンスが再び混乱している。
元凶は、1958年に第5共和政になってから史上最悪の
支持率17%を記録した社会党のオランド仏大統領。元パー
トナーのロワイヤル前社会党大統領候補とジャーナリストの
トリルベレールさんの三角関係に身を焦がしたと思ったら、
女優ジュリー・ガイエさんにあっさり乗り換えたオランド大
統領。その経済財政政策も女性関係同様、優柔不断が原因で
迷走を極めている。
就任直後は100万ユーロ超の高額所得者層に対する75
%の所得税など「左派」受けする政策を打ち出したものの、
その後はビジネス促進のための400億ユーロ減税、500
億ユーロの歳出削減と市場重視に転換した。しかし、失業率
は改善せず、2014年3月の地方選で大敗すると、エロー
首相を交代させ、後任に党内穏健派で改革推進派のバルス内
相を充てたのは良かった。しかし、党内左派を閣内に取り込
んだのがまずかった。オランド大統領はすべてが中途半端な
のだ。 http://bit.ly/28XBf3z
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クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事


