すが、現在はアルヌスラからイスラム国が分派し、両者は敵対関
係にあるということになっています。
しかし、田中宇氏によると、両者は敵対するライバルのふりを
しているものの、実は味方で、対立する別々の組織を演ずる策略
をしている可能性があるというのです。
ジョージ・タウン大学のダニエル・バイマン教授は、「ISI
Sとアルカイダが1つになる日」という論文で、両者の合体はあ
り得るといっています。
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アルカイダはISISに脅威を感じている。しかも拠点とする
パキスタン国境地帯は、米軍の執拗なドローン攻撃にさらされて
いる。危険なので拠点をシリアに移し、ISIS並みの独自「国
家」を樹立する計画だとの報道もある。
その場合、アルカイダとISISは今以上に凄惨な主導権争い
を繰り広げるのか、それとも小異を捨てて合体し「国力」の強化
を図るだろうか。
アルカイダは対米テロ攻撃を最優先し、ISIS独自国家の樹
立・拡大を最大目標に掲げる。ただし、もとをただせばISIS
はイラクにおけるアルカイダの下部組織だった。それに、両者の
幹部クラスは、スンニ派のジハード(イスラム聖戦)派として、
かつてアフガニスタンやイラクで共に戦った仲間。資金源も似通
っているし、戦闘員の調達先も重なっている。
──ダニエル・バイマン(ジョージタウン大学教授)
「ニューズウィーク/日本版」/2016年6月14日号
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アルヌスラとイスラム国が一体であるとすると、少なくともこ
れらの勢力は、イスラエルにとっては敵のはずです。それなのに
イスラエルはゴラン高原の非武装地帯を通じて、これらの勢力を
支援しています。これはどうしたことでしょうか。
前号で述べたように、アルヌスラについては、イスラエルは間
違いなく、負傷兵を受け入れたり、支援物資を与えたりしている
ことは確かですが、イスラム国まで支援していたのでしょうか。
イスラム国の指導者はバクダディという人物です。この人物は
米国をはじめとする有志連合軍の空爆で負傷していますが、イス
ラエルの野戦病院で治療を受けています。ネット・ジャーナリス
トのリチャード・コシミズ氏の著書に次の情報があります。田中
宇氏のいう「イスラエルは、アルヌスラとイスラム国を助けてい
る」という情報と一致しています。
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テロ組織ISISの首領アルバグダディ師が、イラクとシリア
の国境付近の町カイムへの空爆で負傷し、治療のためイスラエル
に渡航しました。イラクの通信社アルヤウム・アルサーメンによ
ると、ISISの一団が占領地ゴラン高原へ行き、そこからイス
ラエルに入ったところが目撃されているということです。ドイツ
の諜報機関に属するある関係者は、「アルバグダディは、国境付
近におけるISISのリーダーの一行への空爆で重傷を負った」
と語りました。アルバグダディ師は、ゴラン高原地帯に入るとと
もにイラク軍と対ISIS有志連合軍の戦闘機の標的から外れた
地域で治療を受けています。フランスの新聞ル・モンドも、「カ
イムへの戦闘機の攻撃で、ISISのリーダーの一団が標的にさ
れたが、その中にはアルバクダディも含まれていた」と報じてい
ます。 ──リチャード・コジミズ著
『これが真相だ!パリ八百長テロと米国1%の対日謀略』
成甲書房刊
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ところで、なぜイスラエルは、イスラム国のバクダディ氏を助
けるのでしょうか。
それは、アルヌスラとイスラム国が、シリア・イラン連合軍と
戦ってくれているからです。シリア・イラン連合軍とは、シリア
のアサド政権軍、イラン軍事顧問団、そしてレバノンのヒズボラ
のことであり、いずれもイスラエルの難敵なのです。つまり、敵
の敵は味方というわけです。
イスラエルとしては、この内戦は勝負がつかないように、いつ
までも続いていて欲しいのです。したがって、もしアルヌスラや
イスラム国が劣勢になれば、武器を供与して、シリアの内戦が終
わらないように、絶妙なバランスをとっているのです。
さらにイスラエルは、イランが核兵器を開発しているという情
報を米国に流し、米国とイランが手を結ぶことのないように画策
してきたのです。そのため、米国はイランに対してこれまで経済
制裁をかけてきたのです。これはイスラエルにとって、きわめて
都合のよい事態です。
しかし、最近になってオバマ大統領は、今年の2月にイランの
核兵器疑惑の“濡れ衣”を解き、イランの経済制裁の解除を決め
ましたが、これはイスラエルにとって最悪なのです。なぜなら、
これによってイランが強くなり、シリア・イラン連合軍によって
アルヌスラやイスラム国が追いつめられるからです。
これに危機感を抱いたイスラエルのネタニアフ首相は、米政界
に圧力をかけるため、2016年3月に訪米し、オバマ大統領に
は会わずに米議会でイランを非難する演説を行っています。これ
は、明らかにオバマ大統領に対する圧力です。
これに対してオバマ政権はイスラエルに報復しています。イス
ラエルは表面上は核保有国にはなっていませんが、核兵器を持っ
ていることは確実です。これに対してオバマ政権は、米国がイス
ラエルの核兵器開発を技術供与したことを示す1980年代の国
防総省の報告書を機密解除しています。これによってイスラエル
が秘密裏に核兵器を保有していることが明らかになったのです。
このようにイスラエルは、アルヌスラやイスラム国をけしかけて
イラクやシリアの内戦状態を維持させようと、さまざまな仕掛け
をしているのです。 ──[現代は陰謀論の時代/114]
≪画像および関連情報≫
●イラン 制裁解除巡り米にさらなる対応求める/6月16日
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イランは、経済制裁が解除されたあとも外国の銀行との取
引が正常化していないなどとして、制裁を主導してきたアメ
リカにさらなる対応を求めました。イランのザリーフ外相は
15日、訪問先のノルウェーで、アメリカのケリー国務長官
と1時間余りにわたって会談しました。
イランでは、欧米などとの合意に基づいて、ことし1月に
核開発に関連する経済制裁が解除されましたが、外国との銀
行取引の正常化や凍結された資産の返還が思うように進んで
いません。銀行などにとっては、アメリカがイランに科して
いるほかの無数の制裁に、図らずも違反してしまうという懸
念が強く、イランのメディアによりますと、ザリーフ外相は
懸念を払拭(ふっしょく)するためには、アメリカ側の踏み
込んだ対応が必要だとの認識を示したということです。
会談のあと、ケリー長官は「誠意を見せることは重要だ」
などと述べ、どのような取引が許されるのかについて、より
明確にしていく意向を示しました。
イランは、最高指導者のハメネイ師が「相手が合意を破る
のであれば、それを燃やしてやる」と述べるなど、欧米側へ
の不満を強めていて、今回の会談が、イランが強く望んでい
る銀行取引の正常化などにつながるのか注目されます。
──NHKニュース・ウェブ http://bit.ly/28Mjsn7
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イスラム国指導者/アル・バクダディ氏


