といえます。ある国にとってどの国が味方で、どの国が敵かとい
う「敵/味方関係」に偽装の部分があるので、全体構造が非常に
わかりにくくなっているのです。しかし、どの時代でも中東の混
乱の中心につねにいる国があります。どこの国でしょうか。それ
はイスラエルです。
これらの関係をわかりやすく説明してくれているのは、国際政
治学者の田中宇氏です。そこで、以下、田中氏の「ISISと米
イスラエルのつながり」というレポートを基にして、一体イラク
とシリアで何が起きているのかについて説明します。これは、陰
謀論に深く関係してくるのです。
添付ファイルの地図を見ていただきたいのです。シリアは南部
のゴラン高原を介してイスラエルに接しています。ゴラン高原は
もともとシリアの領土だったのですが、1967年の中東戦争の
さいイスラエルに侵攻され、その90%を占領されてしまったの
です。その状態が現在まで続いています。
停戦ラインとして非武装地帯が設けられており、1974年か
ら停戦維持のために国連の監視軍(UNDOF)が駐留していま
す。添付ファイルの右側の地図を参照してください。現在ここに
変化が起きているのです。
2011年のことです。アサド政権に対して叛旗を翻したイス
ラム過激派を中心とする反政府勢力の台頭によって、シリアは内
戦に突入したのです。これによって、ゴラン高原にも変化が起き
つつあります。
反政府勢力の中心には「ヌスラ戦線」(以下、アルヌスラ)が
います。このアルヌスラが2014年の夏以来、ゴラン高原西部
のイラク政府軍を攻撃し、そこを占領したのです。そして、国連
の監視軍をゴラン高原のイスラエル側に追い払い、イスラエルと
対峙するようになります。アルヌスラにとってはイスラエルも敵
のひとつであり、イスラエルとアルヌスラの戦争がいつはじまっ
ても不思議ではない情勢になったのです。
しかし、ここで奇怪なことが起こります。イスラエルとアルヌ
スラは戦争どころか、イスラエルはゴラン高原の非武装地帯を通
じてアルヌスラの負傷兵を受け入れ、野戦病院で治療をしたり、
イスラエル側は何やら木箱に入った支援物資をアルヌスラに渡し
たりしているのです。このようなことは、メディアは絶対に報道
しないのですが、そういうやり取りを見ている国連監視軍は、報
告書に次のように報告しています。田中宇氏のレポートです。
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イスラエルが、停戦ライン越しにアルヌスラを支援するように
なったのは13年5月からで、それ以後の1年半の間に千人以上
の負傷者をイスラエル側の病院で治療してやっている。イスラエ
ル側は、シリアの民間人に対する人道支援と位置づけているが、
負傷者はアルヌスラの護衛つきで送られてくるので、民間人でな
く兵士やアルヌスラの関係者ばかりと考えられる。イスラエルの
ネタニヤフ首相は14年2月にゴラン高原の野戦病院を視察して
おり、これは政府ぐるみの戦略的な事業だ。国連監視軍は14年
6月にも、イスラエルがアルヌスラを支援していると指摘する報
告書を出している。 http://bit.ly/1PuZ1zk
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米国も怪しい動きをしています。添付ファイルの地図を見てい
ただきたいのですが、シリアとイスラエルに接しているヨルダン
には米軍基地があります。ここで米軍は、アサド反政府勢力に軍
事訓練を施しているのです。
米軍がこのような支援をするのは、あくまで「自由シリア軍」
ということになっています。米国CIAが主導してアサド政権か
ら離脱させた勢力(穏健派と称されている)ですが、既に述べた
ように、この勢力は今やその実態はなくなっています。
しかし、あくまで米国は自由シリア軍は存続していると主張し
ていますが、それはあくまで本国向けのスタンスです。実際は、
米欧からさまざまな支援──兵器や食料などを受けるための「窓
口」と化しているのです。そのため、実際に支援物資を受けたり
軍事訓練を施されているのは、実質的にはアルヌスラかイスラム
国なのです。米軍はそのことに気が付いているのに、気づかない
ふりをしています。そして、シリアからヨルダンの米軍基地への
行き帰りはゴラン高原のイスラエル領を通っているのです。した
がって、アルヌスラがゴラン高原をシリア政府軍から奪ったのは
そのルートを確保するためだったのです。
もうひとつ知っておくべきことがあります。シリアとイスラエ
ルに国境に接しているレバノンという国があります。レバノンに
は、シーア派イスラム主義の政治組織「ヒズボラ」があります。
このヒズボラとイランの軍事顧問団がシリアのアサド政権を支援
しているのです。このシリア政府軍、イラン軍事顧問団、そして
ヒズボラの3つは「シリア・イラン連合軍」と呼ばれているので
す。この連合軍は、アルヌスラが占拠しているゴラン高原の停戦
ラインを奪還しようと攻勢をかけてきています。
その動きが2015年1月にあったのです。イスラエル軍は無
人戦闘機をシリア領空に飛ばし、ゴラン高原近くのシリア政府軍
の拠点を空爆しているのです。これによって、ヒズボラ兵士やイ
ランの軍事顧問団の何人かが殺されています。
ややこしいのは、表面的には、イスラエルとアルヌスラとは基
本的には敵同士なのです。しかし、その実情は現在のところ、上
記のようにかなり違うのです。はっきりしていることは、イスラ
エルにとってヒズボラは明確に敵であるということです。
2015年1月のイスラエルによるシリア・イラン連合軍への
攻撃についてイスラエルは、「ヒズボラから攻撃を受ける恐れが
あったので、先制攻撃をした」と発表しています。このイスラエ
ルという国はどういう国なのでしょうか。彼らがいまやっている
ことはどういう意図に基づいているのでしょうか。
──[現代は陰謀論の時代/113]
≪画像および関連情報≫
●シリア反体制派、ゴラン高原の検問所を占拠
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CNN/イスラエルとシリアの境界にあるゴラン高原のクネ
イトラ検問所がシリア反体制派の支配下に入ったことが20
14年8月28日までに分かった。イスラエル軍と英国に拠
点を置くシリア反体制派組織「シリア人権監視機構」が明ら
かにした。イスラエル軍によれば、検問所を襲撃したグルー
プには国際テロ組織アルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」
も含まれるという。
ゴラン高原の活動家シャミル・ジョラニ氏によれば、攻撃
にはヌスラ戦線とは別のイスラム主義組織を含む複数のシリ
アの反体制派組織も参加したという。シリア軍は反体制派を
戦闘機で攻撃したが、イスラエルとの協定で検問所への攻撃
はできないため、占領を止めることはできなかったという。
この攻撃でイスラエル軍兵士1人が軽傷を負った。また、イ
スラエル軍は報復としてシリア軍の陣地2カ所を攻撃した。
重武装したイスラエル軍にとって、シリアの反体制派は大き
な脅威ではない。だが国連平和維持活動(PKO)の国連兵
力引き離し監視軍(UNDOF)をはさんで、両者が目と鼻
の先で対峙しているという事態は、地域不安定化の新たな火
種とも言える。昨年6月にもクネイトラ検問所はシリア軍と
反体制派の戦闘の舞台となった。これをきっかけにオースト
ラリア軍がUNDOFから撤退。イスラエル軍は新たな部隊
と戦車を国境地帯に送り込んでいた。
http://bit.ly/1YsTEYr
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イスラエル/シリア/レバノン


