2016年06月13日

●「イスラム国は本当に消滅するのか」(EJ第4296号)

 「ニューズウィーク/日本版」/2016年6月14日号が、
タイミングよく『ISISと中東』という特集を組んでいるので
その冒頭の部分を引用します。
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 シリア内戦とテロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISI
L)の台頭は、数百万人に上る難民の流入を通じ、ヨーロッパに
第二次大戦後で最大の危機をもたらした。シリアとISISの問
題は遠く離れたアメリカの大統領選挙にも大きな影を落とした。
世論はISISをはじめとするイスラム過激派を国家の存続に関
わる脅威と見なし、多くの政治家が米軍のシリア侵攻とISIS
の撲滅を主張した。
 だが、情勢は大きく変わりつつある。イラク政府軍はアメリカ
主導の反ISIS連合の支援を受け、主要都市ファルージヤの奪
回に乗り出した。この軍事攻勢には、弱体化し始めたISISに
さらなる打撃を加える狙いがある。このままいけばISISは近
いうちにシリアとイラクの支配地域を失い、いずれ壊滅するので
はないかとの期待が高まっている。
     ──グレン・カール/元米国家情報会議情報分析次官
   「ニューズウィーク/日本版」/2016年6月14日号
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 元CIA諜報員のグレン・カール氏の分析によると、イスラム
国は、米軍主導の反イスラム国連合の支援を受けるイラク政府軍
によって、今後さらに弱体化し、いずれ壊滅する運命にあると予
測しています。しかし、これとはまったく異なる分析も存在する
のです。本当のところどうなのでしょうか。
 これを明らかにするには、ISISがどのようにして誕生し、
ここまできたのかについて知る必要があります。
 イスラム国は、2003年のイラク戦争後に結成された「イラ
クのアル=カーイダ」がその前身です。この武装勢力は、イラク
国内で、反欧米ジハード(聖戦)を掲げて米軍とイラク新政府軍
に対抗して武装闘争を繰り広げていましたが、次第に勢力が衰え
て行ったのです。
 そのイラクのアル=カーイダ(以下IS)を救ったのは、20
11年の隣国シリアの内戦だったのです。彼らはシリア内戦では
シリアや周辺国から流れてきたスンニ派武装グループを巧みに吸
収し、急速に勢力を拡大します。
 その頃からISは、イラク・シリアにまたがるイスラム国家樹
立を前面に出すようになり、母体組織であるアルカーイダとも対
立し、たもとをわかっています。アルカーイダとしては、彼らの
度が過ぎた残虐さに眉をひそめ、破門したのです。
 2014年に入ると、彼らはシリア北東部をほぼ制圧し、イラ
ク北部に侵攻し、6月上旬には、イラク第2の都市モスルを陥落
させ、イスラム国家樹立の拠点としたのです。この頃から、イス
ラム国と呼称するようになったのです。
 どうして、イスラム国はそれほど短時間で勢力を拡大できたの
でしょうか。欧米諸国の若者たちが、こぞってイスラム国建設の
ための戦いに身を投じているからです。それは、発想がきわめて
ネット的であり、21世紀的な最先端の国家像を持っていたから
です。ベンジャミン・フルフォード氏は、その21世紀的国家像
について次のように述べています。
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 イスラム国は、イスラム国の「教義」を受け入れた信者を「国
民」として規定し、その国民が活動する領域を「国土」と定めて
いる。それを認めなければ武力で打倒する。一見、むちゃくちゃ
な因縁のように思えるが、この発想自体、こんにち、それほど珍
しくない。
 まず、共通のルールを作る。そしてそれを受け入れた人が「メ
ンバー」となる。そのメンバーのネットワークが活動領域となり
定められたルールで管理する。
 ネットのコミュニティでは、当たり前の考え方であろう。先進
国の若者からすれば、イスラム国は自分たちがネットで体感して
きたバーチャルなコミュニティを「リアル」で実現しょうとして
いる、そう映っている。だから、新しい時代を感じようと建国の
戦いに参加しているのだ。 ──ベンジャミン・フルフォード著
            『崩壊するアメリカ巻き込まれる日本
  /2016年、新世界体制の成立』/KKベストセラーズ刊
─────────────────────────────
 6月10日のEJ第4295号で末近浩太氏が述べているよう
に、現在のシリアの状況はきわめて複雑化しています。アサド政
権については、欧米諸国の拡大を嫌うロシア、中国、イランが、
直接的、間接的にバックアップしています。なかでもロシアは積
極的です。これに加えて、レバノンのイスラム主義組織・政党ヒ
ズボラは、アサド政権側で内戦に参加しています。
 これに対する反政府組織としては、米国、EU、トルコ、サウ
ジアラビアなどの湾岸産油国がアサド政権の退陣を求め、反体制
諸派がシリアの代表であると主張して、政治的、軍事的に支持し
ています。まるで国際間の代理戦争の様相を呈しているのです。
 問題は、反体制諸派の方です。ひとつは過激なイスラム主義者
のアルカーイダ系のヌスラ戦線です。彼らはシリア政府の弾圧を
恐れ、国外に逃れた勢力を吸収し、それにアサド政権から離脱し
た分子を糾合して大きな勢力になっています。
 もうひとつの反政府組織はイスラム国です。彼らは独自の発想
で、シリア国内をかき回し、シリアの都市部を次々と占拠し、そ
こを首都とする国家を宣言しています。
 これに対して米国は、あくまで反アサド・反イスラム国で、穏
健派のシリア反政府勢力を支援しようとしています。しかし、現
在そのような勢力は存在しないのです。アサド政権から離脱した
自由シリア軍などは、とっくの昔に雲散霧消してしまっているか
らです。このような状況なので、シリアの内戦はいつまでも終結
しないのです。     ──[現代は陰謀論の時代/109]

≪画像および関連情報≫
 ●シリア内戦を仲裁する露イラン
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   2015年7月にイランと米国など(米露中英仏独)が調
  印した、対イラン制裁を解除する協約(合意文)について、
  米議会(上院)が反対しきれないことが確定的になった。上
  院では、共和党のほぼ全議員と民主党の一部議員が、イスラ
  エルの強い圧力の言いなりになってイラン制裁の解除に反対
  している。上院は、大統領府(ホワイトハウス)がイランと
  締結した協約を拒否できる新法を作り、9月中旬に協約の可
  否を決議する。議会が協約の破棄を決議しても、オバマは拒
  否権を発動して破棄を無効にできるが、議会の上下院の両方
  で、決議が3分の2以上の圧倒的多数だった場合、オバマは
  拒否権を発動できない。議席数100人の上院では、67人
  以上の議員がイランとの協約に反対なら、オバマは拒否権を
  発動できず、米国は協約に調印しなかったのと同じになる。
   9月2日、民主党のミクルスキ上院議員がイラン協約への
  賛成を表明し、賛成派が上院の3分の1を上回る34人にな
  った。反対派が66人以下となることが確定し、米議会がイ
  ランとの協約を廃棄できないことが確実になった。これは外
  交面のオバマの勝利、イスラエルと米共和党の敗北とみなさ
  れている。イラン制裁は来年初めまでに段階的にすべて解除
  されていき、米国を含む世界の企業がイランとの間で投資や
  貿易ができるようになる。     http://bit.ly/1JYjuIL
  ───────────────────────────

イスラム国/ISIS.jpg
イスラム国/ISIS
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代は陰謀論の時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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