なぜ日本ではまったく報道されなかったのでしょうか。今日はこ
れについて書くことにします。
このことを理解するには、米国のメディアの現況について知る
必要があります。米国のメディアには、次の2つがあります。
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1. リベラル ・・・・ 民主党系
2.コンサバティブ ・・・・ 共和党系
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日本で読める米国のニュースは、「主流メディア」と呼ばれて
いるソースに基づいたものです。具体的には、CNNやニューヨ
ーク・タイムズ、ワシントンポストなどの、いわゆる「リベラル
のメディア」です。そのシェアは圧倒的です。
リベラルに対してコンサバティブのメディアがあります。コン
サバティブというのは「保守的な」という意味です。テレビのほ
とんどはリベラルであり、コンサバティブなのはFOXテレビぐ
らいのものです。そのシェアたるやほんの一握りです。同じルパ
ート・マードック氏が率いるニューズ・コーポレーション傘下の
ウォール・ストリート・ジャーナルもコンサバティブです。
リベラルとコンサバティブでは、選ぶニュースも異なるし、同
じニュースであっても報道の仕方がぜんぜん違うのです。「ファ
ースト&フュリアス」のスキャンダルについては、現民主党政権
にとってマイナスの情報であり、リベラルのメディアは一貫して
報道を控えてきたのです。したがって、主流メディア、すなわち
リベラルメディアの記事しか伝えられない日本では「ファースト
&フュリアス」事件のニュースは報道されなかったのです。
つまり、日本に届く米国のニュースには、2つのフィルターが
かかっているのです。米国メディアの政治的見解によって、ニュ
ースの選別が行われます。これが第1のフィルターです。それに
加えて、ニュースの扱いや表現においてはメディアの政治的見解
によるフィルターがかかります。これが第2のフィルターです。
したがって、日本のメディアの伝える米国発のニュースを見てい
るだけでは、米国の本当の姿を把握することは困難です。
一般的な日本人は、その政治信条──どこの党の支持者である
か、どの政治家を支持しているかというものをあまり表面に出し
ませんが、米国人は違うのです。自分が民主党に代表されるリベ
ラルか、共和党に代表されるコンサバティブなのかについて、米
国人は「私はこちらです」と明言するそうです。また、そう明言
しなくてもその人の話を聞いていると、リベラルかコンサバティ
ブかがわかるといいます。それに米国人は政治の話になると、感
情むき出しに議論することが多く、けんかになることも多いそう
です。そういう意味で米国人は政治意識が高いといえます。
「ファースト&フュリアス」事件と米国人の政治意識について
は、米国人と結婚し、現在米国に住んでいる上田尊江氏の日経ビ
ジネス/オンラインに掲載されたコラム「米政府の大スキャンダ
ルを知らないの?日本で報道されていないのね」を参考にして書
いていますが、次の記述は大変に興味深いので、少し長いですが
引用します。
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兄弟なのに政治絡みの口論がきっかけになって数年も音信不通
になったことがある。結婚して渡米し、ささいなことをきっかけ
に主人が兄弟とののしりあう姿を初めて見たときは衝撃を受けた
というか、呆れてしまった。
それほどまでに米国人にとって個人の政治的信条は身近で大切
なのである。そして考え方は両極に分かれ、先鋭化している。な
ぜここまで二極化したのか、色々な意見があるところだろう。驚
くほど真ん中というものがない。イエスかノー、リベラルかコン
サバ、なのだ。(中略)
結婚して米国に来てすぐ気づいたことは、主人がFOXニュー
スを一日中つけっぱなしにしていることだった。主人が熱心にF
OXを見ている様子から「この人、本当は極右でやばいのかも」
と偏見を持ったくらいである。結婚前、日本で付き合っていたと
きは、政治の話などしなかった。
もっと驚いたのは、私自身がコンサバティブだったと気付かさ
れたことだ。日本にいるとき、自分はリベラルだと思っていたが
米国ではどう見てもコンサバティブに入る。米国のリベラルの意
見は日本の常識の範囲をはるかに超えており、自分をリベラルだ
と思っている日本人の多くはこちらに来るとコンサバティブにな
るのではないかとにらんでいる。 http://nkbp.jp/1TQ63k8
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米国のメディアは、リベラルかコンサバティブかに分かれてい
ますが、それぞれの信条に基づいて報道しているので、その違い
さえ知っていれば国民は正しい情報をつかめると思います。しか
し、日本のメディアは次の2つの権力に屈服し、真実を伝えるこ
とができないでいます。
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1.官邸からの圧力
2.財務省筋の圧力
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安倍官邸は、かねてからメディアに対して強い圧力をかけてお
り、メディア側もそれに屈して日曜日の政治番組をNHKと安倍
首相のお友達メディアに絞り、政権の政策を批判するコメンテー
ターなどの番組関係者を外すなど干渉をしています。
これに加えて、財務省も莫大な宣伝費予算を盾に、番組を細か
くチェックし、増税を支持する学者やコメンテーターを番組に数
多く主演させると共に、その一方で増税反対などの意見を展開す
る学者や政治評論家を外しているのです。これらの2つの圧力に
よって今や日本のメディアは完全に死んでいる状態です。メディ
アは政権チェックの機能を果たしていない状況です。
──[現代は陰謀論の時代/106]
≪画像および関連情報≫
●米国にとって「リベラル」と「保守」とは何か
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米国研究者にとって「リベラリズム」と「リベラル」は似
て非なる概念である。「リベラリズム」とは「自由主義」を
指し、大英帝国の専制君主に反旗を翻して独立を勝ち取った
米国にとって、まさに国の根幹となる思想である。それは欧
州の政治的伝統を織りなしてきた三つの思想のうち、「貴族
主義」と「社会主義」の二つを否定することを意味する。す
なわち、特権階級や巨大政府による支配のいずれをも拒み、
政治的・経済的に独立した自由な市民(デモス)による統治を
重んじるということである。
そして、その自由主義の枠のなかで、より強固な自由を求
めるのが米国流の「保守」であり、政府による一定の介入を
求めるのが米国流の「リベラル」ということになる。
具体的には、「保守」とは、
@ 自由な市場競争を重んじること(=規制緩和、減税、民営
化、自由貿易の促進など)
A 地域や教会を中心とした自治の伝統を重んじること(=政
府主導による制度や規範の形成を拒むこと)
B国際社会における自国の行動の自由を重んじること(=国
際機関や他国によって米国の利益を左右されないこと)の三
つを意味する。順に、@経済保守、A社会保守、B安保保守
とも称され、ティーパーティー(茶会)、エヴァンジェリカル
(福音派)、ネオコンなどは、@〜Bの中の強硬派として日本
でもよく知られている。 http://bit.ly/1TWdAmO
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サンダーズ氏は「リベラル左派」


