2016年06月02日

●「オバマの軍事行動は失敗している」(EJ第4289号)

 核なき世界を目指すオバマ大統領は、前任者のブッシュ大統領
と違って、平和を目指す大統領のイメージがあります。ノーベル
平和賞を授与されていることも、そういうイメージができる要因
になっています。
 オバマ大統領は、アフガニスタン、イラク、シリアへの軍事介
入に当たって、多くの失敗を重ねています。これら3つの軍事介
入のうち、アフガニスタンとイラクについては、オバマ大統領の
前任者であるブッシュ大統領が起こしたものを引き継いでいます
が、シリア内戦への軍事介入に関しては、純粋にその成否は、オ
バマ大統領に責任があります。
 2008年11月4日、米大統領選に勝利したオバマ氏はその
祝勝会において次のように述べています。
─────────────────────────────
 今夜祝っている間にも、イラクの砂漠やアフガニスタンの山中
で起床し、我々のため己の命を危険に晒している米国人がいるこ
とを忘れてはならない。我々はこれらの戦争を終わらせなければ
ならない。われわれはできる。「イエス・ウイ・キャン!」
                   ──バラク・オバマ氏
─────────────────────────────
 オバマ氏は、イラクからの撤兵、アフガニスタン戦争の早期終
結を訴えて大統領選に圧勝したのです。しかし、オバマ氏のこれ
らの公約は達成されたのでしょうか。
 2011年12月18日、オバマ大統領は「我々は安定し、民
衆に選ばれた政府を持つイラクから去る」と宣言し、米軍はイラ
クからの撤退を完了しています。このように、イラクからの米軍
の撤退という公約は一応果されたことになります。
 しかし、米国が仕掛けた戦争によって、シーア派のフセイン大
統領が支配していたイラク政権を崩壊させてしまったことにより
それまでイラクでは沈静化していたシーア派とスンニ派の抗争に
火をつけてしまったのです。
 フセイン政権を崩壊させることにより、そういう騒乱が起きる
ことは十分予想できたにもかかわらず、オバマ政権はそれをうま
く収拾できず、圧迫されたスンニ派から武装勢力「イスラム国」
を生み出す事態になったのです。
 そこで2014年6月に再び軍事顧問団300人をイラクに送
る羽目になり、8月8日から、英国、フランス、カナダなど11
ヶ国の空軍と一体になって、航空攻撃、巡航ミサイル攻撃に踏み
切ったのです。そして、2015年の2月には、攻撃目標の選定
や特殊作戦のため、3000人の地上部隊を再びイラクの地に駐
留させることになったのです。これは、ブッシュ政権からの引き
継ぎであるとはいえ、オバマ政権の失敗であるといえます。
 ブッシュ政権が起こしたアフガニスタン戦争についても、オバ
マ大統領は、自分の任期中の2016年末までに撤退を行う予定
でしたが、2015年10月にその延期を発表しています。当初
の予定では、アフガニスタンに駐留する米軍1万800人のうち
大使館警備要員約1000人を残して撤退する方針であったもの
の、2017年以降も5500人規模の米軍を駐留させることに
なっているのです。
 アフガニスタン占領にしても、イラクの占領にしても、オバマ
政権は、前任者のブッシュ政権の負の遺産を引き継いだかたちで
すが、いずれにしても中途半端な結果に終わっています。
 とくにアフガニスタンの駐留に関しては、オバマ政権以前であ
る2008年時点では2・5万人弱だったのに、2010年には
10万人近くまで拡大しているのです。それにもかかわらず、タ
リバン勢力を制圧できず、何回も試みたタリバンとの和解も成功
していないのですから、前政権からの負の遺産とはいえ、オバマ
政権にも重大な責任があるといえます。
 これら2つの軍事介入の事後処理の失敗に加えて、オバマ政権
は、シリアへも軍事介入しています。これについても現在のとこ
ろ、失敗といわざるを得ないのです。シリアで米国は何をやった
のでしょうか。簡単に振り返ります。
 2010年12月にチュニジアで始まった民主化運動「アラブ
の春」がシリアに波及し、騒乱状態に陥ったのです。オバマ政権
は、これをイラン、ロシアと友好関係にあるシリアのアサド政権
を倒す絶好のチャンスと考えたのです。
 2011年7月、リチャード・アル=アスアド大佐が率いる政
府軍の一部が離反し「自由シリア軍」を結成します。このバック
にいたのが、米国のCIAです。アサド家はシーア派の分派であ
るアラウィ派で、シリア全人口の12%に過ぎないことと、シリ
アの74%はスンニ派であるので、アサド政権は簡単に倒せると
考えたのです。
 翌8月に自由シリア軍は、フセイン・ハルムーシュ大佐率いる
自由将校旅団と合流して規模を拡大します。さらにアサド政権に
反目するスンニ派の勢力を取り込んで、戦闘員は2万人規模に拡
大し、シリア各地で武装闘争を仕掛けたのです。
 しかし、これは米国の大誤算だったのです。スンニ派の将兵の
多くはアサド政権に忠誠を尽くし、精強の中核部隊は政府側につ
いたからです。しかも政府軍の規模は約30万人と圧倒的であり
自由シリア軍はとても歯が立たなかったのです。米国は彼らにリ
ビアのベンガジから持ち込んだ最新の兵器を与え、軍事顧問団が
訓練して政府軍と戦わせたのですが、自由シリア軍全体の士気は
低く、シリアの民衆の支持も乏しかったので、とても政府軍に対
抗できなかったのです。
 そこで、米国は新たに「新シリア軍」を作る計画を立て、兵隊
を募ったのですが、100人程度しか集まらず、彼らをヨルダン
やトルコで訓練してシリアに送り込もうとすると、逃亡したり、
アルカイダ系の武装組織「ヌスラ戦線」に兵器の車両を引き渡し
てしまうなどの体たらくで、米国はこれにも失敗するのです。深
刻なのは、米国の最新鋭の兵器の多くが、敵方にわたってしまっ
ていることです。    ──[現代は陰謀論の時代/102]

≪画像および関連情報≫
 ●アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をすべきではないか
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   2015年10月30日、金曜日、アメリカのバラク・オ
  バマ大統領は、シリアはアメリカの国家安全保障に対するい
  かなる脅威でもなく、いかなる国も侵略していないのに、ア
  メリカ特殊部隊兵士50人を、シリア領土に派兵するつもり
  だと発表した。実際、シリアは、アメリカ合州国やヨーロッ
  パにも脅威となっているイスラム聖戦士に対して戦っている
  のだ。
   アメリカは、シリアの選挙で選ばれた、欧米同盟国の世論
  調査でさえ、いまでも大多数のシリア国民に支持されている
  ことを示している大統領を打倒するためシリア(最初は爆撃
  で、そして現在は、最初の軍隊によって)を侵略している。
   2012年、アル・ヌスラ(シリアのアルカイダ)に資金
  提供しているアメリカ同盟国のカタール政権が、シリアを調
  査すべく、世論調査会社を雇った際に判明したのは、55%
  55%のシリア国民が、アサドにそのまま大統領でいて欲し
  いと考えていることだった。更に、2015年9月18日に
  私が報じた通り、“世論調査では、シリア人は圧倒的にIS
  ISはアメリカのせいだと考えていることを示しており”こ
  うした最近の世論調査はギャラップとつながっているイギリ
  ス企業によるものだ。ロシアは、アメリカと対照的に、シリ
  アを全く侵略してはおらず、選挙で選ばれた政権から、侵略
  をしているイスラム聖戦士や、アメリカ爆撃機に対する防衛
  戦争を、支援するよう要請されたのだ。そして、ロシアは現
  在要求された支援を行っている。  http://bit.ly/1ZcJ7ze
  ───────────────────────────

3つの軍事介入に失敗したオバマ政権.jpg
3つの軍事介入に失敗したオバマ政権
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代は陰謀論の時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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