2016年02月19日

●「異色の科学者とノーベル賞の関係」(EJ第4220号)

 「小保方氏参考人聴取」──17日に突然飛び込んできたニュ
ースです。ES細胞盗難事件の容疑の参考人だそうです。「何を
今さら」という感じです。
 小保方氏といえば、池袋西武百貨店のリブロの後を引き継いた
三省堂書店に行って驚いたことがあります。それは、小保方晴子
氏の『あの日』(講談社刊)の平積みの山です。私は、今までこ
んな平積みは見たことはありません。もの凄い数の本です。
 もっと凄いのは、本の売れ行きです。初版5万部はあっという
間に売れ切れ、20万部を増刷していますが、さらに売れる勢い
であるといいます。なぜ、こんなに売れるのか、どういう人が、
買っているのかです。
 本が出た当初、「週刊新潮」と「週刊文春」は、小保方氏をボ
ロクソに批判していました。それは、真実をバラされては困る利
害関係者のタワゴトです。最も真実を知る肝心の若山照彦氏は、
奥さんの陰に隠れて逃げ回っており、表には出てきません。
 最大の利害関係者の理研の人はこういっているそうです。「あ
んな人の本なんかにカネを払うのはもったいない。だから、一冊
買ってみんなで回し読みしている」と。ケチくさい話です。世間
的には、みんなで寄ってたかって小保方氏の足を引っ張っている
──そういう印象です。であるとすると、利害関係者には本はま
るで売れていないと思われます。
 この本を買っている人は、ごく一般の人です。誰だって、あれ
ほどスッキリしない事件はないからです。新聞報道でも、雑誌で
も、須田桃子著『捏造の科学者/STAP細胞事件』を読んでも
真実が見えてこないからです。だから、本人の意見を聞きたいと
思うから買うのです。EJでは、STAP細胞事件を98回にわ
たって取り上げている以上、ご本人の本をよく読んだうえで、論
評することにしようと思っています。これも陰謀論です。
 さて1915年11月の「ニューヨークタイムズ」の記事──
エジソンとテスラのノーベル賞共同受賞のスクープは、新聞の完
全な空振りに終わったのです。あまりにも大騒ぎになっただけに
いろいろな憶測が広がったといいます。これには、次の4つの説
があります。
─────────────────────────────
 1.2人がノーベル賞の共同受賞者としてノミネートされた
   が、テスラが共同での受賞を拒否し、話が流れた。
 2.エジソンが単独でノミネートされたものの、テスラとの
   共同受賞と勘違いされ、エジソンは受賞を逸した。
 3.エジソン、テスラ、それぞれ一度ずつノミネートされた
   が、年代は異なり、ともに受賞を逃していること。
 4.エジソン、テスラ2人とも、過去に一度もノーベル賞の
   候補者として、ノミネートされた事実はないこと。
─────────────────────────────
 このなかで一番信じられているのが「1」です。新戸雅章氏に
よると、かねてからテスラは発明家を、発明者に原理を提供する
発見者と、単なる発明家に分けており、自分は前者であり、エジ
ソンは後者であるといっていたのです。したがって、エジソンと
の共同受賞などテスラとしては、絶対に受け入れられない、だか
ら「1」だというのです。
 ニューヨークタイムズの記事が出た1915年の共同受賞の話
は、本当はエジソン単独のノミネートであったといわれます。こ
れには根拠があります。ノーベル賞の公式サイトにそのように記
載されているからです。しかし、テスラとの共同受賞と大騒ぎに
なったので、話が流れたといわれます。
 ノーベル賞は1974年に規約を改訂して以来、授賞から50
年を経た対象については、その選考資料を公開する決まりになっ
ています。いままでは、ノーベル賞の公式サイトから、選ばれな
かった者も含め、すべての授賞候補者および推薦者のデータを閲
覧することが可能になっています。
─────────────────────────────
 「ノーベル・プライズ・オルグ」 http://bit.ly/1cyjhiw
─────────────────────────────
 エジソンについて調べてみたところ、彼が候補にあがったのは
1915年の一度だけであり、テスラも1937年にノミネート
されていますが、受賞にはいたっていないのです。したがって、
「2」と「3」は本当であり、「4」はウソになります。
 問題は、なぜテスラがノーベル賞を受賞できなかったかです。
これはテスラのことを調べれば調べるほど、強く出てくる疑問で
す。彼は大変な大科学者であり、ノーベル物理学賞受賞の資格は
十分あると思うからです。
 テスラといえば、何といっても交流電力システムの完成、無線
の基盤技術の確立が光っています。現代の基準であれば、受賞で
きて当然ですが、やはり、テスラに貼られた「異端の科学者」や
「マッドサイエンティスト」のレッテルが、スウェーデン王立ア
カデミーに忌避されたのではないかと思われます。
 テスラがノーベル賞を受賞できなかった理由について、新戸雅
章氏は次のようにコメントしています。ヨーロッパ中心の科学政
治の力関係の結果ではないかというのです。
─────────────────────────────
 考えられる理由は、交流の業績がドヴロヴォルスキーをはじめ
多くの競争者に振り分けられてしまったこと、無線の業績では、
マルコーニが代表して受賞してしまったこと(これこそテスラと
のダブル受賞でよかったはずだが)などだが、当時の科学者はイ
ギリスを盟主とするヨーロッパが中心で、新興アメリカ科学界の
力がまだ弱かったことも関係しているかもしれない。ノーベル賞
も科学政治の力関係と無縁ではないのである。
           ──新戸雅章著『知られざる天才ニコラ
      ・テスラ/エジソンが恐れた発明家』/平凡社新書
─────────────────────────────
            ──[現代は陰謀論の時代/033]

≪画像および関連情報≫
 ●ニコラ・テスラの交流電源
  ───────────────────────────
   ニコラ・テスラという人物を知っているなら貴方も立派な
  オカルト好きか、あるいは科学史にくわしい人間かのいずれ
  かであろう。一般にはマッドサイエンティストという評価の
  人物で時にとんでもないところで名を聞くことになる。今で
  もM資金と同じレベルで詐欺や都市伝説の話題になる男なの
  である。
   1887年にニコラは交流電源方式の特許を取得、エジソ
  ンは新商品である直流電源システムをひとつでも交流電源で
  動かすことが出来たなら5万ドルを支払うと豪語したが、実
  際にニコラがこれを動かすことに成功すると、「あれは冗談
  だった」とごまかした。一説にはこれに激怒したテスラは退
  社を決めたとも言われる。
   結果からいえばエジソンの直流システムはたちまちすたれ
  たのに対しニコラの交流電源システムは現在でも広く使われ
  ている。現代でも当たり前に使われている交流モーターの基
  礎を築いたのはニコラなのだが、白熱灯を発明したエジソン
  に対しその評価は不当に低いと言わざるを得ない。二人の対
  立はどうやら数学者であるニコラと違い、数学の素養のなか
  ったエジソンには高度な微分積分の計算が必要な交流システ
  ムが理解できなかったことにあるようだ。さまざまなエピソ
  ードで有名なエジソンであるがその基礎学力は決して高いも
  のではなかったのは彼の伝記を読めばわかるだろう。
                   http://bit.ly/1QJW79u
  ───────────────────────────
 ●ニューヨークタイムズの記事/新戸雅章著の前掲書より

ニューヨークタイムズの記事.jpg
ニューヨークタイムズの記事
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代は陰謀論の時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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