ラ・テスラについてここまで書いてきましたが、不思議に思うこ
とがたくさんあります。
それは、エジソンにしてもテスラについても、数多くの業績を
上げているのに、なぜスウェーデン王立科学アカデミーは、2人
にノーベル賞を与えなかったのかということです。
エジソンやテスラが、ノーベル賞を受賞するとすれば、それは
ノーベル物理学賞になります。ノーベル物理学賞は、1901年
のヴィルヘルム・レントゲンから始まるのです。以下、1900
年代の13人の受賞者とその国籍を書き出します。
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1901年:ヴィルヘルム・レントゲン (ドイツ帝国)
1902年:ヘンドリック・ローレンツ (オランダ)
1902年:ピーター・ゼーマン (オランダ)
1903年:アンリ・ベクレル (フランス)
1903年:ピェール・キューリー (フランス)
1903年:マリ・キューリー (フランス)
1904年:ジョン・ウィリアム・ストラット(イギリス)
1905年:フィリップ・レーナルト (ドイツ帝国)
1906年:ジョセフ・ジョン・トムソン (イギリス)
1907年:アルバート・マイケルソン (アメリカ)
1908年:ガブリエル・リップマン (フランス)
1909年:グリエルモ・マルコーニ (イタリア王国)
1909年:フェルディナント・ブラウン (ドイツ帝国)
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それにしてもヨーロッパがズラリです。米国は1907年にア
ルバート・マイケルソンが精密光学機器マイケルソン干渉計で受
賞しているのみです。
エジソンとテスラの生誕は次の通りであり、受賞できるチャン
スは十分にあったはずです。
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トーマス・アルバ・エジソン/1847年生〜1931年没
ニコラ・テスラ /1856年生〜1943年没
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テスラの特許に深く関係するのは、1909年の無線技術での
マルコーニの受賞です。このマルコーニという人は、良くいえば
商才にたけており、悪くいえば自分の商売のことしか考えない小
者でしかなかったのです。
カネにものをいわせてロッジらのコヒー検波器の特許を買い取
り、強引な訴訟戦術により、無線事業の独占化を図ったのです。
そういうマルコーニに、スウェーデン王立科学アカデミーはノー
ベル物理学賞を献上してしまっています。
しかし、テスラにとっては、こんな問題でマルコーニと法廷闘
争をする時間が惜しかったのです。この間の事情について、テス
ラ研究家の新戸雅章氏は次のように述べています。
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一連の出来事は無線研究のリーダーを自任してきたテスラの自
尊心を著しく傷つけた。何より腹立たしかったのは、マルコーニ
が自分の成功は独自の創意によるものだと主張する一方、テスラ
の装置を非効率的だと酷評していることだった。
自分の特許を17も使っている「間抜けな」(テスラ)特許侵
害野郎が、栄誉を手にすることなど我慢ならなかったのである。
とはいえ、その後もテスラ側から法的手段に訴えるようなことは
しなかった。貴重な研究時間を法廷闘争に奪われるより、いつか
実績で評価されたいというのがテスラ流だった。しかし1915
年になって、ついに我慢がならなくなったか、マルコーニに対す
る提訴に踏み切った。 ──新戸雅章著『知られざる天才ニコラ
・テスラ/エジソンが恐れた発明家』/平凡社新書
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昨日のEJで述べたように、この1915年に起こした訴訟は
テスラの死後、勝訴が確定しています。しかし、ノーベル物理学
賞の受賞という金のレッテルは、そういうマルコーニのずるさと
インチキをすべて覆い隠し、世間では現在でもマルコーニを「無
線の父」などと呼んで崇めているのです。
私は、かねがね科学技術について知るには、その歴史の詳細を
調べてみる必要があると考えています。ノーベル賞といえども、
けっして公平ではないからです。
ところでエジソンとテスラのノーベル賞の話ですが、1915
年11月にその話が飛び出したのです。11月6日付の「ニュー
ヨーク・タイムズ」が、「エジソンとテスラ/ノーベル物理学賞
同時受賞か」という記事を掲載したからです。新戸雅章氏の本か
ら引用します。
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ロンドン発のその記事は、テスラとエジソンがノーベル物理学
賞を同時受賞すると伝えていた。同賞制定以来、ヨーロッパの後
塵を拝してきたアメリカ科学界にとっては待望のビッグニュース
だった。二人のもとには早速取材が殺到した。
テスラは翌日の取材に答えて、公式な通知は受け取っていない
が、事実とすれば受賞対象は無線送電システムになるだろう、と
語った。続いて世界システムの実用性を変わらぬ熱心さで説くお
なじみの独演会となり、最後に自分の発明は「次の数千年間のす
べてのノーベル賞に値する」と締めくくった。エジソンの受賞に
ついてコメントを求められると、「彼は一ダース以上のノーベル
賞に値する」と答えた。 ──新戸雅章著の前掲書より
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しかし、スウェーデン王立アカデミーは、11月14日に「今
年度のノーベル物理学賞は英国のウィリアム・ヘンリー・ブラッ
グとウィリアム・ローレンス・ブラッグ父子に授与する」と発表
したのです。そのウラには何があったのでしょうか。
──[現代は陰謀論の時代/032]
≪画像および関連情報≫
●「不平等、いまや未来の深刻な脅威に」/ディートン教授
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2015年10月12日、米ニュージャージー州プリンス
トン大学リチャードソン講堂。この学校が4番目に輩出した
ノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートン教授が同僚
教授と学生300人余りの熱烈な拍手を受け、会見の演壇に
立った。トレードマークである蝶ネクタイと濃い色のジャケ
ット姿だった。ディートン教授はノーベル賞通知の瞬間から
説明した。「午前6時直後にスウェーデン人の声の電話がか
かってきたが、いたずら電話ではないとあまりに強調し、か
えっていたずら電話ではないだろうかと心配になった」。
老教授は「(電話をかけた人に)150回はありがたいと
話したようだ」として受賞の感激を率直に表現した。彼は、
「オスカー賞を受賞する映画スターは寿命が5年伸びるとい
う研究がある。ノーベル賞にもそうした法則が適用されたら
良いだろう」と話し聴衆を笑わせた。だが、今後の計画を尋
ねる質問には「また研究しに帰るだろう」ときっぱりと話し
た。ディートン教授は「不平等が耐えられる水準を超え、い
までは深刻な脅威になっている」と明らかにした。不平等が
経済成長の動力であることを糾明したのが彼の業績だ。だが
当代最高の不平等専門家はいまや不平等が度を超えていると
警鐘を鳴らした。 http://bit.ly/1WoVMgN
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ノーベル賞のとれないテスラとエジソン


