2016年02月16日

●「テスラがマルコーニに負けた理由」(EJ第4217号)

 ニコラ・テスラについて調べていくと、この稀有の科学者が大
変な天才であったことがわかってきます。当時の他の科学者、た
とえばエジソンなどと比べても、そのスケールがケタ外れであり
その実現可能なアイデアのなかには、後世「兵器」として使える
ものが数多くあったのは確かです。
 だからこそ、テスラの死の直後、FBIがテスラの部屋に踏み
込み、一切の書類を押収したのです。つまり、テスラは米国とい
う国家にとって、危険な科学者の一面もあったのです。
 もうひとつ当時の米国の軍部が施したのは、テスラに「マッド
・サイエンティスト」のレッテルを貼ったことです。これによっ
て、テスラの研究を後追いしようとする者を減らしたいという思
いがあったからです。
 当時テスラがひたすら目指していたのは、次のような驚くべき
ものだったのです。
─────────────────────────────
    送電線を使わず、無線で電力を伝送するシステム
─────────────────────────────
 当時の電線を使う有線通信は効率が悪く、電線を使う有線電信
も効率が悪く、辺境や僻地、海底などでの建設も容易ではなかっ
たのです。したがって、もし無線で電力を送れれば、瞬時のうち
に世界中に情報や電力を送れるようになる──テスラはこのよう
に考えて、無線通信の実用化に取り組んだのです。
 ある講演会でテスラは、電力の無線通信について次のように述
べています。
─────────────────────────────
 ・・お話ししたいのは、無線による理解可能な情報、または電
力を遠隔送信する可能性についてです。この方式の実用性につい
てはますます確信を深めつつあります。
 ・・強力な装置で地球の電気的条件に干渉することで、理解可
能な信号や電力を送信できると確信しています。実際、こうした
図式を妨げるものはあるでしょうか?
       ──新戸雅章著『知られざる天才ニコラ・テスラ
          /エジソンが恐れた発明家』/平凡社新書
─────────────────────────────
 テスラが無線による情報通信・電力伝送の研究に力を入れはじ
めた1890年代半ばでは、競合相手というかライバルは、4人
いたのです。英国の物理学者サー・オリヴァー・ロッジ、ロシア
の技術者アレクサンドル・ポポフ、インドの科学者ジャガディッ
シュ・チャンドラ・ボース、そして、イタリアのアマチュア技術
者グリエルモ・マルコーニの4人です。
 無線技術の先陣争いで当初リードしていたのはテスラで、ロッ
ジ、ポポフ、ボースが後を追っていたのです。ボースの功績は、
他の研究者が長波を使ったのに対し、もっとも波長の短い電波で
あるマイクロ波を用いて実験したことです。
 これは後になって、発電した電力をレーザーやマイクロ波に変
換して離れた場所に伝送し、そこでまた電力に戻せることが判明
したことによって、改めてボースの実験には意義があったという
ことができます。
 ところで、後に無線技術でノーベル物理学賞(1909年)を
獲得することになるマルコーニが登場するのは、1894年のこ
とであり、無線技術の争いでは一番遅いのです。まして彼はアマ
チュアの技術者であり、これらの錚々たる先駆者の後を追える存
在ではないと当初考えられていたのです。
 無線技術の競争では、学級肌のロッジやポーズは実用化には関
心が薄く、ポポフは研究環境に恵まれなかったことにより、脱落
し、テスラとマルニーニの一騎打ちになっていったのです。結果
としてこの争いは、マルコーニの勝利に終わるのですが、マルコ
ーニは、どうしてテスラに勝つことができたのでしょうか。それ
は、次の2つの理由によるのです。
─────────────────────────────
 1.無線技術には、情報通信と電力伝送の2つがあるが、テ
   スラは電力伝送に力を入れ、マルコーニは情報通信を重
   視する現実的システムを構築したこと。
 2.テスラはあくまで独自理論にこだわったのに対し、マル
   コーニはテスラをはじめ、先人の特許や発明を巧みに組
   み合わせ、情報通信を実現させたこと。
─────────────────────────────
 マルコーニは、高い木に結んだアンテナに火花発信機を接続し
もう一方を地面に接続する「接地アース方式」を採用し、送信側
のエネルギーを高めることに成功しているが、もともとこの方式
はポポフが開発したものであり、接地アースの必要性を最初に指
摘したのはテスラなのです。さらにマルコーニは、受信機もロッ
ジの「コヒーラ検波器」を改良し、感度をさらに高め、着実に距
離を延ばしていったのです。
 「無線で電力を伝送する」──この実現自体は全人類にとって
は福音ですが、当時テスラに巨額の資金提供をしていたJ・Pモ
ルガンは、有線事業も手掛けており、もし、テスラの考える無線
電力伝送が実現すると、有線事業は大ダメージを受けてしまうこ
とになります。
 当時テスラはJ・Pモルガンらから資金提供を受けて、ニュー
ヨーク近郊ロングアイランドのショアム海岸のワーデンクリフに
用地を確保し、高さ60メートルの巨大なアンテナ塔──ワーデ
ンクリフタワーを建設中だったのですが、マルコーニ成功の報を
受けたモルガンは、考え込んでしまったといいます。
 マルコーニの装置は、アンテナもそれほど大きくなく、それ以
外の装置は小型であり、あまりカネはかかっていないのに、テス
ラの作るワーデンクリフタワーの巨大さは馬鹿げている──計画
の先行きに不安感を感じたモルガンは、テスラに投資することに
消極的になっていったのです。かくて、テスラの世界システムは
破綻してしまうのです。 ──[現代は陰謀論の時代/030]

≪画像および関連情報≫
 ●夢の「無線電力伝送システム」は実現可能か
  ───────────────────────────
   送電線を使わずに無線で電力を送る構想は古くは20世紀
  初頭にさかのぼるが、最近になって再び注目を集めている。
  カナダや日本では既に、地上から無線伝送したエネルギーを
  使って航空機を飛ばす実験に成功している。自動車への無線
  のエネルギー伝送など、代替エネルギー利用への応用も示唆
  されている。
   電線を使わずに電気を送る無線電力伝送――そのアイディ
  ア自体は古く、少なくとも20世紀初頭の異色の発明家、ニ
  コラ・テスラにまでさかのぼる。テスラはかつて、交流か直
  流かをめぐるトーマス・エジソンとの確執のなかで自分の身
  体に高電圧の高周波電流を通してみせ、観衆を驚かせたこと
  もあった。
   電気と高周波の魅力にとりつかれたテスラは、1900年
  代はじめにロングアイランドの海峡側の海岸に、『ウォーデ
  ンクリフ・タワー』という塔を建設した。この目的の1つは
  送電線を使わずに、ある地点から別の地点へエネルギーを伝
  送できると証明することだった。しかし残念ながら、テスラ
  の計画は頓挫してしまう。その理由は、いまでも時代に先駆
  けた技術を導入しようとする人の多くを悩ませるものだ――
  テスラに協力していた投資家たちが、計画が完成する前に手
  を引いてしまったのだ。      http://bit.ly/1SppuDX
  ───────────────────────────

グリエルモ・マルコーニ.jpg
グリエルモ・マルコーニ
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代は陰謀論の時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。