2016年01月07日

●「CIAが始めた陰謀論のレッテル」(EJ第4191号)

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏が外交評論家の孫崎享氏の本に
陰謀論のレッテルを貼った“事件”の続きです。佐々木氏は、陰
謀論は「自己憐憫」と「思考停止」を招くからよくないというの
ですが、既出の田中聡氏は、これに対して自著において、次のよ
うに反論しています。
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 佐々木は削除された冒頭で、「典型的な謀略史観でしかない」
と、孫崎の書を切って捨てた。なぜ謀略史観がいけないのかなど
は言わずもがなという感じだったが、この結論によって陰謀論は
「自己憐憫と思考停止を招く」からダメだと考えられていること
がわかる。佐々木には孫崎の本が「自己憐憫と思考停止を招く」
のではないかと案じられたのだろう。それが佐々木の端的な読後
感だったと思ってもよいかもしれない。「自分はこういうことを
思ったよ」と書かないで、「これは謀略史観だ」と書く。それが
ラベル貼りの論法である。(中略)
 それよりはむしろ、陰謀論というラベリングによって論外とす
るような態度のほうがずっと「有害」だと思うのだ。それに、そ
のラベル貼りこそが、それについての思考停止を招いているので
はないか。         ──田中聡著『陰謀論の正体!』
                     幻冬舎新書347
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 私は田中氏の主張に賛成です。佐々木氏は、陰謀論は「自己憐
憫と思考停止を招く」といいますが、陰謀論のレッテルを貼る行
為の方が多くの人にその問題に関して思考停止を強いてしまうの
ではないでしょうか。
 仮にある国の政府が実施した政策や施策について疑惑や批判や
非難が出た場合、そのことについてあれこれ詮索されたくないと
きは、その主張に陰謀論のレッテルを貼ってしまえばよいという
ことになります。なぜなら、陰謀論のレッテルが貼られると、多
くの人はその主張は論外であるとみなし、調査も追及もやり難く
なるので、それを社会的に抹殺することも可能になるからです。
きわめて効果的なプロパガンダになるといえます。
 そこで、この陰謀論のレッテル貼りをはじめたのは誰であるか
について調べてみたのです。それを解くかぎは、米国の歴史学者
のランス・デヘイヴンスミス氏が2013年に上梓した次の本に
あったのです。
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               ランス・デヘイヴンスミス著
  『アメリカの陰謀論』(Conspiracy Theory in America)
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 ランス・デヘイヴンスミス氏は、この本で陰謀論について次の
事実を明らかにしています。
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 米国人の多くは、陰謀論というレッテルが1967年に始めら
れた中央情報局(CIA)のプロパガンダ計画によって、侮辱的
な言葉として広められたと知ったら、ショックを受けるだろう。
        ──ランス・デヘイヴンスミス著の前掲書より
   野口英明著『世界金融本当の正体』/株式会社サイゾー刊
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 デヘイヴンスミス氏は、陰謀論のレッテル貼りはCIAのプロ
パガンダとして、1967年から始められたといいます。なぜ、
1967年なのかというと、当時のケネディ大統領が1963年
11月22日にダラスで暗殺され、その暗殺事件を検証するため
に設置された大統領特命調査委員会(ウォーレン委員会)による
最終報告書が、1964年9月に発表されたことと密接に関係す
るからです。
 この報告書は、本文だけで888ページに及ぶ膨大な内容であ
るのに、真相を解明するのに程遠い内容だったのです。とくに報
告書が、次の2点に絞り込み、犯人を断定している点が、大きな
疑惑を呼んだといえます。
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         1.狙撃犯は1人である
         2.発射した3発の銃弾
─────────────────────────────
 「1」については、暗殺はリー・ハーヴェイ・オズワルドの単
独犯行であることを結論づけています。しかし、オズワルドは必
ずしも射撃が上手ではなく、暗殺に使用されたライフルの命中率
も高くないのです。
 「2」については、オズワルドが発射した銃弾は3発のうち2
発は外れ、1発がケネディ大統領と同乗のテキサス州のコナリー
知事に計7か所の傷を負わせたとしている点です。1発の銃弾で
ケネディ大統領の命を奪い、コナリー知事に多くの傷を負わせて
いる点が不自然なのです。
 このように、ウォーレン報告書に対する疑いから、多くの人が
リンドン・ジョンソン大統領が暗殺事件に関与しているのではな
いかと疑いはじめたのです。なぜなら、ケネディ大統領が暗殺さ
れて、一番利益はを得るのが、当時副大統領を務めていたリンド
ン・ジョンソンであったからです。
 その頃から、ケネディ大統領暗殺の犯人は政府の上層部である
とするコンテンツが新聞や雑誌や書籍に掲載されるようになった
のです。そして、1966年の世論調査によると、米国民の過半
数がウォーレン委員会の調査結果は不十分としていることが判明
したのです。
 このような状況になり、危機感を持ったのはCIAです。事態
を放置すると、米国政府に対する不信感が高まる恐れがあると判
断したからです。そこで、CIAは、1967年1月から「10
35─960」という文書を使って、ウォーレン報告書疑惑を記
述する書籍や人物に対して、陰謀論者であるとするレッテル貼り
をはじめたのです。これが陰謀論のレッテル貼りのはじまりなの
です。         ──[現代は陰謀論の時代/004]

≪画像および関連情報≫
 ●ケネディ大統領暗殺事件
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   オズワルドによる単独の犯行であったとする政府の公式説
  明に納得せず、何らかの陰謀があったと主張する者が多い。
  2003年の世論調査では、70パーセントの人々が、ケネ
  ディ暗殺は単独犯ではなく複数犯による犯行であったと考え
  ている。
   実行犯についてもオズワルド以外に狙撃したものがいたと
  する説もある。証拠物件の公開が政府によって不自然にも制
  限されたり、大規模な証拠隠滅が行われたと主張する者もい
  る。リー・ハーヴェイ・オズワルドが、ダラス市警察本部で
  ジャック・ルビーに射殺され、さらにジャック・ルビーが服
  役中に病死したのは口封じのためであるとする意見もある。
  陸井三郎は目撃証言者12人が変死または怪死していると主
  張している。
   「マフィア主犯説」は、かつてジアンカーナらがケネディ
  本人や父のジョセフ・ケネディ・シニアによる依頼を受けて
  大統領選挙におけるケネディ陣営の資金集めや不正を手伝っ
  たにもかかわらず、その後ケネディがフーヴァーやロバート
  の忠告を受けてジアンカーナや共通の友人であるフランク・
  シナトラらとの関係を突然断った上に、ケネディ政権がロバ
  ートを中心にしてマフィアに対する壊滅作戦を進めたことを
  「裏切り」と受け取ったジアンカーナらを中心としたマフィ
  アが、「裏切り」への報復と壊滅作戦の停止を目論んで行っ
  たとするものである。       http://bit.ly/1O5ikyh
  ───────────────────────────

暗殺直前のケネディ大統領.jpg
暗殺直前のケネディ大統領
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 現代は陰謀論の時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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