ティール首相は、マレーシアを2020年までに先進国の仲間入
りをさせようとする長期開発構想プロジェクト「ワワサン202
0」を発表し、これに意欲的に取り組んでいます。
マハティール首相の基本的な政治スタンスは、多くのアジア諸
国が欧米諸国に見習おうとしていたなかにあって、日本の経済発
展、高度成長に見習おうとしていたことです。「ワワサン202
0」は日本の高度成長をお手本にして取り組んだのです。このハ
マティール首相の政治スタンスは、1997年のアジア通貨危機
のさいにも、いかんなく発揮されたのです。
マハティール首相は、これを欧米諸国の投機筋による投機的取
引の結果であると断じ、それを強く批判すると共に、素早く次の
手を打ったのです。
自国の通貨リンギットを「1USドル=3・8リンギット」に
固定することで通貨の安定をはかる一方で、財政支出を拡大し、
金利の引き下げを断行し景気刺激策を行ったのです。そして同時
に資本の海外流出を防ぐために非居住者(外国人)のリンギット
取引を中央銀行の許可制へと移行し、1998年9月から1年間
は、外国人がマレーシア株式やリンギット建資産の売却で得た外
貨の持ち出しを禁じたのです。
このマハティール首相の打った手は理にかなったものであり、
マレーシア経済はいち早くマイナス成長から脱することができた
のです。これに対し、韓国、インドネシア、タイが、経済的に浮
揚するきっかけを掴み損ね、結局、IMFの支援を求めざるを得
なかったのと対照的です。これによって、マハティール首相の評
価は大きく上がったのです。
しかし、この財政運営を巡ってマハティール首相は、一時は後
任へと考えていたアンワル財務相と意見が衝突し、解任してしま
うのです。しかし、アンワル氏はその後、マハティール首相の政
敵となり、その強権政治を批判し、反政府勢力を結集しようとし
ます。そこで、マハティール首相は、アンワル氏を権力乱用や同
性愛の罪で逮捕させ、政治的に葬ってしまったのです。
その結果、マハティール首相が後継に推薦したのは、副首相兼
内相のアブドラ・バダウィ氏だったのです。2003年10月の
ことです。そして、2009年4月に首相に就任したのは、現在
首相を務めるナジブ・ラザク氏です。いずれもマハティール氏の
推薦によるものです。
そういう経緯に加えて、20年以上にわたるマレーシア政治の
実権を握ってきた実力者として、現在でもマハティール氏は政界
に一定の影響力を維持し、マレーシア政界のフィクサー的役割を
務めているのです。
マハティール氏は、2015年8月19日、自身が名誉学長を
努めるペトロナス大学でのイベントの席で講演し、ナジブ首相を
次のように批判しています。
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私は現役時代に後継者を選ぶ際の判断を誤った。清廉潔白そう
に見えた後継者が、壇上に上がった途端、強欲な金権政治家に豹
変するなど誰が予想できただろうか。彼の人となりをもっと知っ
ていれば、後継者に推すことはなかった。心よりお詫びを申し上
げたい。 ──マハティール前首相 http://bit.ly/1LW9mkR
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このように、現在、マレーシアのナジブ政権は、マハティール
氏が反対勢力に回ったこともあり、苦境に立っています。そうい
うナジブ政権側がもっとも復権を気にしているのが、マハティー
ル氏によって政治的に葬られたアンワル・イブラヒム氏です。
アンワル氏は同性愛の罪は免除されたものの、権力乱用の罪で
6年間服役し、刑期は終えたものの、2008年4月までは政治
活動はできなかったのです。しかし、やっと政治活動ができるよ
うになった2008年7月に、再び同性愛の罪で逮捕されるので
す。これは誰が見ても、野党の指導者を潰そうとする政治的な逮
捕劇です。アンワル氏に対する明らかな政治的バッシングです。
さすがに前回と違い、警察は翌日には保釈を認め、釈放された
のです。そこで、同年8月に行われたペナンのブルマタン・パウ
選挙区での補選に立候補したアンワル氏は当選し、政界復帰を果
たしたのです。そしてアンワル氏は、現在日本の政界でも行われ
ようとしている野党連合を結成し、政権復帰を目指して活動をは
じめたのです。その次の年の2009年4月にナジブ政権が誕生
するのです。
2012年1月9日、マレーシア高等裁判所は、アンワル氏に
対する同性愛容疑について、無罪をいい渡します。しかし、検察
は控訴し、裁判は継続されたのです。そして、2014年3月7
日、マレーシアの上訴裁判所は同性愛容疑について、一審の無罪
判決を覆し、禁錮5年の有罪判決を下したのです。なお、201
5年2月にマレーシア連邦裁判所は上告を退けて、アンワル氏の
有罪判決が確定しています。
注目すべきは、この判決の日は、MH370便が失踪する前日
であることです。もっとも前日といっても、MH370便の出発
は8日の午前0時過ぎですから、当日ともいえるのです。この判
決とMH370便のは関係があるのでしょうか。
実は、MH370便の機長であるザハリエ氏は、アンワル氏の
遠い親戚に当たり、彼の熱狂的な支持者なのです。現在のナジブ
政権に反対する活動にもザハリエ氏は、積極的に参加していたと
いわれます。まさかとは思いますが、ザハリエ機長がMH370
便をハイジャックし、ナジブ政権と何らかの交渉をしたのではな
いか──そういう疑いが強く出てきています。
英国の「ミラー」紙によると、3月7日にザハリエ機長の家族
は、家を出てどこかに移動したといわれています。また、ザハリ
エ機長は出発前にコックピットから誰かに電話していたことがわ
かっています。しかし、機長が機をハイジャックするとは前代未
聞のことです。 ──[航空機事故の謎を探る/016]
≪画像および関連情報≫
●アンワル元副首相収監/マレーシア野党連合瓦解か
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マレーシアの野党指導者アンワル・イブラヒム元副首相が
2015年2月10日、同性愛行為で禁錮5年の有罪が確定
し、収監された。年齢を考えれば、表舞台でのアンワル氏の
政治活動は終わったと見るべきだろう。
アンワル氏が仕切ってきた野党連合は、同床異夢の3党が
彼を頼りに集まったに過ぎない。野党勢力が弱体化するとの
見方もあるが、私には個人に頼らない真の野党連合に脱皮す
る好機に映る。この危機を前に結束できれば、強くなる。逆
にこの先数カ月も内部の混乱が続けば、崩壊する。
アンワル氏が果たした役割は大きい。かつて国民は与党に
従うしかなかった。だが、彼は国民のために政治が何をでき
るかを問い、民衆も政治に「果実」を求めるようになった。
半世紀以上も続く与党連合を脅かす勢力も作り上げた。一方
彼の妻は野党・人民正義党(PKR)党首、娘は副党首だ。
一族による政治支配は弊害にもなる。
収監は内外に負のイメージを与えた。同性愛行為は他にも
あるだろうが、狙い撃ちされた感が否めない。警察の不透明
な動機が内外の不信感につながっている。ただ、政治のあり
方は国民自身が決めるものだ。(聞き手・クアラルンプール
=都留悦史) http://bit.ly/1MLJL3e
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アンワル・イブラヒム氏


