2015年10月16日

●「マレーシア当局が情報を隠す理由」(EJ第4139号)

 ところで、なぜ、マレーシア当局は、MH370便の情報を隠
蔽するのでしょうか。
 その隠蔽ぶりは徹底していて、公表したのは、便名と乗客乗員
数だけです。とくに飛行計画は絶対に公表しなかったのです。飛
行計画は、日本においては、航空法施行規則第203条に項目が
記載されており、これにより、巡航高度および航路、代替飛行場
燃料搭載量、機体の出発時の重量などがわかり、どこへ飛行した
のか、どこまで飛行できるかなどを判断する重要な情報です。こ
れらの項目は、諸外国もほとんど共通しているはずです。
 杉江弘氏は、このマレーシア当局の対応について、若干怒りを
まじえて次のように述べています。
─────────────────────────────
 マレーシア政府の対応を見ていると、やはり軍や警察が前面に
出ていて、事故調査委員会なるものはいったいどこにあるのかと
思わせるような手法で物事を進めている感がある。(中略)
 とりわけ、マレーシア当局のメディア対応を見ていると、単に
情報を小出しにしているだけでなく、意図的に情報を操作したり
隠したり、あるいはなんの根拠もなく断定したりすることが目に
つく。その一端は、2回目のナジブ首相と運輸相代行の会見も、
およそどこの国でも見られない特異なものであった。それは、未
だ物的証拠(浮遊物やブラックボックスの回収など)がなにひと
つないのに「インド洋南部に墜落し、生存者はいない」「燃料切
れで失速」などと発表したことである。     ──杉江弘著
      『マレーシア航空機はなぜ消えた』より/講談社刊
─────────────────────────────
 純粋に論理的に考えて、マレーシア当局がMH370便につい
ての情報を頑なに明かさない理由としては、ありえないことでは
ありますが、次の2つが考えられます。
─────────────────────────────
 1.MH370便の事故はマレーシア当局に取っては突発的
   なものであったが、その経緯を明らかにすることは国家
   としてできないこと。
 2.MH370便がこのような事故を起こすことをマレーシ
   ア当局は何らかの事情によって事前に知っていたが、そ
   れを明かせないこと。
─────────────────────────────
 「1」に該当するケースとして考えられるのは、前代未聞のこ
とですが、機長か副操縦士がハイジャック犯である場合です。こ
のケースにおいて、可能性の高いものから並べると、次のように
なります。
─────────────────────────────
        1.機長と副操縦士の共謀
        2.   機長の単独犯行
        3. 副操縦士の単独犯行
─────────────────────────────
 飛行機の操縦者が機をハイジャックする場合、その可能性があ
るのは「機長と副操縦士の共謀」のケースのみです。機長が犯人
である場合は、事前に副操縦士を仲間にする必要があります。し
かし、ことは犯罪であり、生命がかかっているので、その説得は
きわめて困難であると思われます。だが、何らかの政治目的の遂
行のために行う場合は、機長と副操縦士が共謀すればハイジャッ
クは十分可能であるといえます。
 機長が単独で犯行を行う場合は、副操縦士を何らかの方法で拘
束する必要があります。副操縦士の単独犯行はさらに困難になり
ます。しかも、この場合は、副操縦士はほとんど機長と同等に飛
行機を操縦できる操縦技能が不可欠です。
 杉江弘氏は、機長と副操縦士の共謀説の可能性についても言及
しています。
─────────────────────────────
 パイロットの機長と副操縦士のいずれか、あるいは共謀の可能
性について考えてみたい。
 まず共謀説については、今回の2人のパイロットが意図的に当
日のMH370便に乗務したという情報がなく、毎月のスケジュ
ール(乗務割り)はコンピュータによって無作為に作られ、偶然
に同じ便の乗務に就いたと明らかにされている。
 では、副操縦士が犯人とする説はどうだろうか。確かに、相当
のフライト経験を持った副操縦士であれば、機長がいなくても今
回機が飛んだように、レーダー網をかいくぐって、インド洋の南
まで飛行することば可能であろう。FMS(フライト・マネジメ
ント・システム)に飛行コースを入力し、燃料を無駄にしない効
率的な速度や高度なども選択して飛んでいくこともできる。
                 ──杉江弘著の前掲書より
─────────────────────────────
 MH370便の場合、機長と副操縦士の共謀や副操縦士の単独
犯行は考えられないと思います。それは、杉江氏の指摘するよう
に意図的に副操縦士を選べないシステムであることに加えて、副
操縦士の飛行時間が2763時間と経験が少なく、とても副操縦
士単独では、ボーイング777を操縦できる技能レベルに達して
いるとはいえないからです。
 それに加えて、副操縦士のファリク・アブドル・ハミド氏は、
ジェット旅客機の副操縦士としての生活に満足しており、とて
もハイジャックなどという大それたことをする人物とは思えな
いからです。
 このように考えると、飛行機の操縦者が犯人でありうる可能性
があるのは、機長のザハリエ・アハマド・シャー氏ということに
なります。そうであるとすると、ザハリエ機長がMH370便を
ハイジャックする動機は何でしょうか。これは謎ですが、これを
解明するには、マレーシアの歴史や昨今の政治事情についてその
背景を知る必要があります。
           ──[航空機事故の謎を探る/014]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシア機「機長ハイジャック」説を検証
  ───────────────────────────
   ミステリアスな空の失踪劇はやはり、「機長によるハイジ
  ャックか」か?2014年3月8日から消息不明が続くマレ
  ーシア航空MH370便について、同国のナジブ・ラザク首
  相(60)は、24日、オーストラーリア西部パース沖イン
  ド洋で墜落したとの見方を示した。本来の飛行ルートを外れ
  た理由はあきらかにしなかったが、かねてささやかれたパイ
  ロットによるハイジャックの可能性を専門家らが指摘した。
   ナジブ首相は、英国の衛星のデータを詳しく解析した結果
  同機が飛行を終了した場所は「(陸地から)遠い地点で、着
  陸できる可能性のあるいずれの場所からも離れている」こと
  を墜落と判断した理由に挙げた。
   インド洋南部では、24日に中国の輸送機が白い四角い形
  のものなど複数の浮遊物を発見。オーストラリアのアボット
  首相(当時)も同日、これらとは別の物体2つを哨戒機が目
  視したと明らかにした。中国機が発見した場所はパース南西
  沖2500キロ付近の海域といい、オーストラリア機が発見
  した場所も同じ海域という。
   この海域に墜落した可能性について、軍事ジャーナリスト
  の神浦元彰氏は「今回のボーイング777が積める燃料なら
  クアラルンプールから出発してギリギリで飛べる距離」とみ
  る。誰が、なぜ針路を変えたのか。テロ説や中国による自演
  説が流れ、マレーシア政府はハイジャックの可能性も含めて
  調査にあたってきた。15日にはザハリエ・シャー機長の自
  宅が家宅捜査され、疑惑の目を向けられた。
                   http://bit.ly/1RDWC7F
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杉江 弘氏.jpg
杉江 弘氏
posted by 平野 浩 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 航空機事故の謎を探る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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